■メトロポリタン美術館にセレブが集うファッションの祭典『METガラ』
2019年の『METガラ』のテーマが明らかになった。
ニューヨーク・メトロポリタン美術館で毎年行なわれる『METガラ』は、ゴージャスな衣装に身を包んだセレブが一堂に会す世界最大級のファッションの祭典だ。同美術館のコスチューム・インスティチュートがその年に手掛ける展覧会が、セレブたちの装いのテーマとなる。最近では映画『オーシャンズ8』で主人公たちが盗みを働く計画の舞台となったことでも記憶に新しい。
今年5月に行なわれた『METガラ』のテーマは、10月8日で幕を閉じた展覧会『Heavenly Bodies: Fashion and the Catholic Imagination』だった。ファッションと宗教の関わりを探る展覧会の内容にあわせて、メゾンマルジェラのドレスとヘッドピースで教皇のような出で立ちを披露したリアーナは人々の視線と話題をさらった。展覧会自体も大きな注目を集め、コスチューム・インスティチュートによる展覧会史上、最多の観客数を記録した。
■2019年のテーマは「ファッションの中のキャンプ」。スーザン・ソンタグの論文に依拠
大きな人気を博した「ファッションと宗教」に続く、2019年のテーマは「ファッションの中のキャンプ」だ。
この「キャンプ」の概念は、スーザン・ソンタグが1964年に発表した論文『「キャンプ」についてのノート』に依拠している。ソンタグはこの中でキャンプについて「不自然なもの、人工的で誇張されたもの」を愛好する感性、美学であるとした。
『METガラ』の2017年のテーマは「川久保玲とコム デ ギャルソン」だったが、今回の『Camp: Notes on Fashion』展にも出品が予定されている川久保玲は、コム デ ギャルソンの2018/19年秋冬コレクションのショーが『「キャンプ」についてのノート』からインスピレーションを受けたことを明かしている。
■「キャンプ」の美学の起源と、ファッションへの影響を探る
展覧会『Camp: Notes on Fashion』では、この「キャンプ」の美学の起源を探求し、いかにしてメインストリームのカルチャーにも大きな影響を与える存在になったのかを考察する。
メトロポリタン美術館コスチューム・インスティチュートのキュレーターであるアンドリュー・ボルトンは「ソンタグの『「キャンプ」についてのノート』を効果的に例示しながら、現在進行形で変わり続ける『キャンプ』のファッションへの影響に関するクリエイティブで批評的な対話を進める」と展覧会の内容を説明する。
また「ハイアートとポップカルチャー双方へのキャンプの大きな影響を紐解く展覧会になる」と語るメトロポリタン美術館ディレクターのマックス・ホラインは、「本展はキャンプの変化を辿り、重要な要素に光を当てることで、この大胆なスタイルが持つアイロニックな感覚を体現し、美や審美眼に関する従来の考え方に挑むと共に、美術史・ファッション史上でこの重要なジャンルが果たしてきた決定的な役割を確証する」と明かしている。
■衣装や彫刻、絵画など約175点が出展
展示作品は、女性服、男性服に加えて彫刻、絵画、ドローイングなど約175点を予定。作品の年代は17世紀から現在まで幅広い。
取り上げられるデザイナーには、クリストバル・バレンシアガ、トム・ブラウン、ジョン・ガリアーノ、ジャン=ポール・ゴルチエ、マーク・ジェイコブス、クリスチャン・ラクロワ、カール・ラガーフェルド、ミウッチャ・プラダ、イヴ・サンローラン、ジェレミー・スコット、アナ・スイ、フィリップ・トレーシー、ジャンニ・ヴェルサーチ、ドナテラ・ヴェルサーチ、ヴィヴィアン・ウエストウッドらが名を連ねる。展覧会はグッチのサポートによって行なわれる。
■『METガラ』の共同主催にはレディー・ガガ、ハリー・スタイルズ、テニス選手のセリーナ・ウィリアムズら
展覧会『Camp: Notes on Fashion』は2019年5月9日から9月9日まで開催。オープニングを記念する『METガラ』は5月6日に行なわれる。アメリカ版『VOGUE』編集長のアナ・ウィンターと共にホストを務めるのは、レディー・ガガ、ハリー・スタイルズ、グッチのクリエイティブディレクターであるアレッサンドロ・ミケーレ、そしてテニスプレイヤーのセリーナ・ウィリアムズである。
レディー・ガガの過激で驚きを伴うファッションは、「不自然なもの、人工的で誇張されたもの」を愛好する感性、というキャンプの定義と相性が良さそうだ。グッチのキャンペーンモデルも務めるハリー・スタイルズ、そして「女王」セリーナ・ウィリアムズがこのテーマをどのように解釈するのかも注目が集まる。