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VTuberの音楽を追う新連載 第一回:響木アオ、周防パトラ、Kogarashi、YACA IN DA HOUSEの良曲たち

2018年10月09日 07:02  リアルサウンド

リアルサウンド

 バーチャルキャラクターたちのオリジナル楽曲が増えてきた。透過ディスプレイを用いたリアルイベントや、ヘッドマウントディスプレイで参加できるVRライブ。キャラクターコンテンツでありながらも、アイドル的な売り出し方が一般的なバーチャルYouTuberの世界において「歌」は必要不可欠な武器と言ってもいい。事実、昨今では多くのバーチャルYouTuberが「歌ってみた」を投稿し、「歌」でファンを惹きつけている。


 キズナアイの「Hello, Morning」や輝夜月の「Byond the Moon」などのはバーチャルYouTuberというコンテンツの中でアンセム的な楽曲になりつつあり、またファンソングがそのまま公式楽曲に採用されるという珍しい事例も散見される。さらに「作曲系バーチャルYouTuber」として活動する個人トラックメイカーによる作品が動画として投稿されることも増えているようだ。この連載では「バの音楽事情」と題し、企業・個人関わらず、バーチャルキャラクターとして活動する彼らの楽曲を筆者のチョイスで紹介していく。この連載を通して、まだまだ注目度の低い個人の音楽作品などにもスポットライトが当たることを願う。


(参考:バーチャルYouTuberは音楽を“見せられるか” 「ときのそら」の新たな挑戦と可能性


響木アオ – ひらりフワリ
 作曲家兼歌手としてavexからダブルデビューを果たした「響木アオ」による楽曲。「ChuChuChu♡だーりん」や「電子のシンフォニー」など、彼女を代表する楽曲は明るくキャッチーなものが多いが、「ひらりフワリ」は感動的で伸びやかな編曲になっている。イントロで咲きクラできる曲は最高。「響きあう」というフレーズもサビの歌詞にバッチリ組み込まれており、聴くときに聴いたら多分泣く。渋谷で行われた「ダブルデビュー記念ライブ」に筆者も参加したが、セトリにこの曲が組み込まれておらず、泣いた。また行くつもりである。Apple musicでも配信されているので、是非ともフルで聴いて頂きたい。


周防パトラ – ぶいちゅっばのうた
 いちからが制作協力するバーチャルYouTuberグループ「HoneyStrap -ハニーストラップ-」所属の「周防パトラ」による楽曲。企業所属にも関わらず作詞作曲編曲を全て自分で務めるというツワモノっぷり。ジャンルとしては日本のオタク・クラブシーンで爆発的に流行した「Kawaii Futurebass」。フィルターで波打たせたコードシンセと8bitな音使いが「まさにKawaii Futurebass」といった感じで気持ちいい。スラップベースがゴリゴリに動きまくるのにも注目。また彼女の可愛らしい歌い方もサウンドにマッチしており、聴けば聴くほどにクオリティの高さを感じる。楽曲の販売や配信などはしていないらしく、音源が手に入らないのが辛い。


Kogarashi – 生きるのに向いてないみたいです
 「五十嵐影狼」というバーチャルYouTuberのアーティスト名義。歌詞がつらい。「人間に向いてないみたいです」「じゃあ何なら向いてるんですか」と繋げられた時の絶望感が凄い。ギターの録音環境はあまり良くないようだが、BUMP OF CHICKEN藤原基央を思い出させる声質とメロディーセンスが一度聴いたものを離さない。コアなファンも多いようで、筆者もよくTwitterのリプライ等でオススメされる。動画のキャプションに「どうしようもないことを歌いました」と書いてある通り、社会に適合できない人間のやるせない叫びのような歌詞だが、その感情を音楽にぶつけることの大切さを再確認させてくれる名曲。終盤のリリックと演出は必見なので最後まで視聴してみて欲しい。最近投稿された「Serialkiller」も要チェックだ。


YACA IN DA HOUSE – SAMPLE YA SUMMER
 サンプリングミュージック・バーチャルYouTuber「ワニのヤカ」によるフリーアルバム。自身のYouTubeチャンネルに投稿した公開音源5曲+未公開音源3曲の全8曲で、Bandcampからダウンロード可能。曲名に含まれる「luv.」は「feat.」の意であったりと、ヒップホップ的なオシャレ感が散りばめられてる。1曲目に関しては癖が強すぎるので解説は省くが、同じトラックメイカーである「VideoBoi」や、最近VRライブの開催が決定した「KMNZ」に加え、3Dモデラーの「zen(ワニ子)」などをゲストに呼んだ意欲的な一枚。特にKMNZとのフューチャリング楽曲である「IFIF」はリタとリズの特徴的な声を存分に生かしたしたエレクトロ・ヒップホップなトラックに仕上がっており、ワニのヤカのトラック制作に対する高い能力を見せつけられる。リリースされたのは10月1日だが、タイトルの通り楽曲もアートワークも「夏」を感じられる雰囲気にまとまっているので、夏が終わって悲しい人はこれを聴いてボーナスタイムに入ろう。


 今回は3曲+1枚を紹介した。「バの音楽事情」は週一回を目標に更新していく。もしバーチャルYouTuber関連の楽曲でおすすめのものがあれば、是非とも筆者のマシュマロ(https://marshmallow-qa.com/grapefruit_uhr?utm_medium=url_text&utm_source=promotion)まで情報を寄せて頂きたい。


(じーえふ)