会社の規模にもよりますが、世の中的に課長に昇進できる方は全体の30%程度と言われており、残りの方は役職への昇進を経験することなく定年を迎えます。本来であれば"管理職"になれることは喜ばしいこととも言えるのですが、若い人の中には、管理職になることを敬遠する人が少なくありません。
私が実施しているセミナーにも「うちの上司を見ていると管理職になる意味が解らない……」「管理職になると、給料減って責任だけ増すから」と言っている人がいました。今回はそんな思いを持ちながらも"管理職"になってしまった方へ、仕事の楽しさを感じるためのポイントを解説していきます。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)
「自分が人生で大切にしたいことは何なのか?」を再確認してみる
キャリアの節目には新しい役割に対し、不安がともなうものです。なぜなら新しい役割について知らないからです。人間の脳は空白を嫌います。そして、その空白を埋めることが出来ないと不安を感じるのです。
皆さんは、次のような言葉を聞いたことがありますか?
「思考に気を付けなさい、それは言葉になるから
言葉に気を付けなさい、それは行動になるから
行動に気を付けなさい、それは習慣になるから
習慣に気を付けなさい、それは性格になるから
性格に気を付けなさい、それは運命になるから」
日本ではマザーテレサの言葉として言われていますが、実際の作者は不明のようです。作者はともかく、書かれている内容は非常に納得のいくものです。
つまり、思考が我々の人生を作っていくというわけです。その思考は「セルフイメージ」から生まれます。セルフイメージは、自分は何者なのかというアイデンティティをどれだけ自身で受容できているかといったことから形成されています。
そして、アイデンティティは
(1)自分は何に興味を持っているのか?
(2)自分にはどんな能力があるのか?
(3)自分が人生で大切にしたいことは何なのか?
といったものから出来上がっています。キャリアの節目には上記の3つのことを見つめなおすことが大切になってきます。特に(3)で見つけた"大切にしたいこと"を日々の行動の中心に持っていくことで楽しさが生まれていきます。
管理職の役割とは「企業理念をもとに市場価値を創造していくため、ビジョンに向かってチームで成果を上げる組織を創ることである」と言うことが出来るでしょう。会社側の人間になったのですから成果・結果にコミットしていく必要が求められるわけです。そのために認識しておかなければならないのは大きく以下の4点です。
(1)業務を遂行し結果を出す。そして改善のPDCAをまわす。
(2)組織の成長につながる部下を育成する。
(3)働く人の軸となる経営理念やビジョンを浸透させる。
(4)働く環境が激変する中、コンプライアンスを遵守させる。
各々の詳細に関しては、今後の記事の中でお伝えしてまいりますので、ご自身としての考えをまとめておいてください。
「部下とのチーム作りから、人との繋がりの大切さを学ぶことができた」という人も
さて、以上の役割を担う中で管理職として働く楽しみとはどんなものなのでしょうか? 人それぞれではありますが、現場の管理職の方向けの研修を通して上がってくる声をいくつかご紹介します。
「一人の時では想像もつかなかった大きな仕事ができるようになった」
「育成した部下が一人前になり、次のステップに歩んでいく姿に感動しました」
「これまでは耳にすることが出来なかった情報に触れる機会が増え、仕事のやりがいを感じられるようになった」
「仕事の自由度があがり、自分の思ったことを試すことができるようになった」
「部下とのチーム作りから、人との繋がりの大切さを学ぶことができた」
等々、多くの管理職の方が"管理職になって良かった!"と答えています。
思いがけず管理職になられた皆様、"管理職の4つの役割"と"管理職の楽しさや醍醐味"の事例をもとにぜひ、自己内省をしてみてください。人生100年時代、長い人生を楽しく歩んでいくためには人生のピットインが必要です。走り続けるだけでは性能が低下し、壊れてしまいます。立ち止まり現在の位置を振り返り、次の目標に向かって進んでいきましょう!それこそが人生を楽しむ秘訣です。
【著者プロフィール】田岡 英明
働きがい創造研究所 取締役社長/Feel Works エグゼクティブコンサルタント
1968年、東京都出身。1992年に山之内製薬(現在のアステラス製薬)入社。全社最年少のリーダーとして年上から女性まで多様な部下のマネジメントに携わる。傾聴面談を主体としたマネジメント手法により、組織の成果拡大を達成する。2014年に株式会社FeelWorks入社し、企業の管理職向けのマネジメント研修や、若手・中堅向けのマインドアップ研修などに携わる。2017年に株式会社働きがい創造研究所を設立し、取締役社長に就任。