2018年10月08日 10:12 弁護士ドットコム
「霞ヶ関勤務の夫が同僚の女性と浮気をして2ヶ月同棲をしていました」という相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
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相談者は2児の母。下の子はまだ産まれたばかりです。夫は霞が関では同僚の女性と浮気をし、家では相談者の顔に全治3週間の怪我を負わせ、肋骨を2本折るほどの壮絶なDVをおこなっていました。
我慢の限界をこえた相談者は、夫と浮気相手に慰謝料を請求しました。夫には500万円を請求し、300万円支払ってもらったそうです。浮気相手には「100万円が精一杯です」と言われたそうですが、相談者は「少ない。もっと取りたい」と考えています。
相談者は浮気相手からもっと慰謝料をもらうことはできるのでしょうか。また、請求する相手が高収入エリートの場合、相場よりも多めに慰謝料を支払ってもらうことはできるのでしょうか。木村康紀弁護士に聞きました。
ーー相談者は夫に対し、500万円の慰謝料を請求していますが、この額は相場よりも高額なのでしょうか。
「離婚の慰謝料としていえば、500万円の慰謝料請求は高額といえます。離婚の慰謝料の相場は文献によっても異なるのですが、上限を高めに見るものでも、100万円から500万円とされています」
ーー相談者の夫は不倫とDVをしていたようです。この場合の慰謝料の相場はいくらぐらいになるのでしょうか。
「やや古いものではありますが、離婚時の給付額(財産分与、慰謝料の合計)について、裁判官や調停委員に対しておこなったアンケート調査があります(小田八重子『離婚給付額の裁判基準』判タ1029号31頁)。
その中で、『夫35歳会社員年収600万円。妻33歳無職。長男3歳。二男2歳。婚姻期間10年。夫婦の資産は預金等1000万円』(※養育費は別途合意済み)という事例があり、
・『夫は海外に単身赴任し、妻は育児の疲労からノイローゼ状態』となったことを離婚理由とする場合(双方に有責性がない場合)
・『夫の暴力と女性関係』を離婚理由とする場合(一方に有責性がある場合)
でいくらの差が生じるかを調査しています。
調査結果によると、裁判官も調停委員も、300万円以下の差、つまり夫の有責性について『300万円以下』程度の評価とした方が多いようです。ただし、裁判官の24%、調停委員の14%は『301万円以上』の差を認めています。また、500万円を超える差を認めた裁判官や調停委員もいたようです。
この調査では財産分与も一緒に検討しているので一概にはいえませんが、離婚時の慰謝料の算定がいかに裁判官や調停委員によって判断が異なるかはご理解いただけるかと思います」
ーー相談者は浮気相手の慰謝料100万円を「少ない」と考えています。増額することはできるのでしょうか。
「離婚の慰謝料はどちらが支払っても良いのですが、夫と不倫相手、双方に対し請求できる金額の合計額は一定です。
上記で示した相場は、その合計額の相場になります。一方から多く取りたい等の事情がある場合は、どちらかに請求する前に交渉方法を検討しておく必要があります」
ーー相談者の夫は高収入で安定した職業のようです。慰謝料の算定に、相手の職業や収入は考慮されますか。
「一般論としては、当事者の社会的地位や収入も考慮要素であるとされます。もっとも、ご説明したとおり、慰謝料の算定は裁判官や調停委員によっても差があります。そのような事情を考慮してもらいたい場合は、しっかりとアピールする必要はあると思います」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
木村 康紀(きむら・やすのり)弁護士
企業法務を中心にしつつも、自身の能力が求められる案件であれば分野にとらわれず取り扱う。通常の業務の傍らベンチャー企業からの相談を無償で受けるなどの活動をしている。内閣府への3年間の出向経験もある。
事務所名:メリットパートナーズ法律事務所
事務所URL:http://www.meritopartners.jp/