2018年10月07日 09:52 弁護士ドットコム
東日本大震災で行方不明となっていた宮城県石巻市の48歳男性が滋賀県で発見された、というニュースが9月13日に流れました。
【関連記事:「相席居酒屋」で女性に「完全無視」されガッカリ・・・店に返金を求めることは可能?】
喜ばしいニュースですが、一般的には行方不明者になった家族が見つからない場合、悩ましい問題が生じることもあるようです。
弁護士ドットコムには、「父が最近行方不明になってしまいました」と話す方から相談が寄せられています。
相談者は、「私は一人暮らしで、実家には父と母が住んでいます。父は会社を退職していて、年金で生活していて、母は専業主婦で、同じく年金で生活していて、金銭的余裕は、私も両親もあまりありません」「父が払っている税金(住民税など)や年金はどうなりますか」「年金がストップして、母が生活に困窮してしまいそうで心配」と、悩んでいました。
行方不明者の税金は、誰が払うことになるのでしょうか。また、行方不明者に対する年金の支給はどうなるのでしょうか。蝦名和広税理士に聞きました。
税金などの支払い義務についてはどう考えればいいのでしょうか。
「納税者が行方不明になったときは原則、親族であっても納税義務者以外に納税義務は発生しません。納税義務はあくまで当時者本人が負うため、行方不明になったとしてもその親族が代わりに払う必要はないのです。
なお、納税者が行方不明になった場合、納付が不能となるため滞納状態となります。滞納になると延滞金が発生しますが、これもあくまで納税者本人に課されるもののため、親族が払う義務はありません。ただし、国民健康保険料は世帯主に、国民年金保険料は世帯主と配偶者に連帯納付義務があるため、払わなければいけない可能性があります」
では逆に、行方不明者が受け取っていた年金がどうなるのでしょうか。
「基本的には行方不明になったとしても死亡しているわけではないため、そのまま支払われ続けます。しかし、行方不明になってから1カ月経過以降に、年金事務所に所在不明届を提出すると支給が保留となります。
年金はあくまで本人に受給権があるため保留となりますが、支給が止まってしまい、収入が減ってしまいます。
この場合、親族等が家庭裁判所に申し立てを行い、不在者財産管理人として選任を受け、年金事務所に届出を行うことで、不在者財産管理人が年金を受給することができます。(管轄の年金事務所により取り扱いが異なる場合もありますのでご注意ください)
なお、失踪宣告(生死が7年間不在等)を受けた場合は、その時点で法律上死亡したとみなされるため相続の問題となります。
親族が行方不明なってしまったら、何をすればいいかわからずに不安になるかもしれませんが、制度をよく理解して柔軟な対応を心がけましょう」
【取材協力税理士】
蝦名 和広(えびな・かずひろ)税理士
特定社会保険労務士・海事代理士・行政書士。北海学園大学経済学部卒業。札幌市西区で開業、税務、労務、新設法人支援まで、幅広くクライアントをサポート。趣味はクレー射撃、一児のパパ。
事務所名 : 税理士・社会保険労務士・海事代理士・行政書士 蝦名事務所
事務所URL:http://office-ebina.com
(弁護士ドットコムニュース)