幸福の科学施設「初転法輪記念館」(東京都荒川区)に立ち入ったとして建造物侵入罪に問われた藤倉善郎被告(44)の公判前整理手続きが10月5日、東京地方裁判所で開かれた。
藤倉被告は宗教団体等を取材してきたフリーのジャーナリスト。この裁判では、取材目的で宗教法人の施設等に立ち入ることの是非が問われることになる。
「今回の裁判では取材の自由が問題になっている」
「幸福の科学取材で刑事被告人にされた藤倉善郎氏を支える会」によると、藤倉被告は、幸福の科学が2009年に幸福実現党を結成して以来、同団体の取材を行ってきた。2012年には、幸福の科学学園の実態を描いたルポルタージュを『週刊新潮』(2012年11月22日号)に掲載。同団体から名誉毀損として提訴されたが、勝訴している。
2011年には電話で、2015年には文書で教団施設への立入禁止を言い渡されているが、それ以降も、問題なく取材できたことはあったという。
事件の弁護団には、宗教やカルトの問題に取り組んできた紀藤正樹弁護士のほか、「ろくでなし子」の弁護人を務めた山口貴士弁護士が名を連ねる。山口弁護士は、立ち入り禁止の通告や今回の事件について、次のように説明する。
「幸福の科学は、宗教法人であり、税金の減免も受けている。そうした団体が一般公開している施設に特定の個人を入れないと決めたからといって、その決定に効力があるのかどうか議論の余地がある。また今回の裁判では取材の自由が問題となっている。公共性があり、誰もが立ち入りできる場所から、気に入らない記者を締め出すことができるのか」
10月5日に開かれた公判前整理手続きは非公開で行われた。しかし日本国憲法82条2は「政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第3章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は、常にこれを公開しなければならない」と定めている。
「支える会」は、藤倉被告の裁判は「出版に関する犯罪」や「国民の権利が問題となっている事件」に該当すると主張。法律上の根拠がないまま、裁判官の判断で非公開にするのはおかしいとしている。弁護団の紀藤弁護士も「公判前整理手続きが非公開にされたことは、憲法違反になりうる」と話している。
公開されている場所への立ち入りが問題となるのは初めて
これまでもジャーナリストや記者が建造物侵入罪に問われたことはあった。今年4月には朝日新聞浜松支局の支局長が、生徒の親族を装って、専門学校の建物に立ち入り。建造物侵入の罪で罰金10万円の略式命令を受けている。
同じく今年5月、仙台放送のスタッフ3人が、強盗事件の容疑者の住む社員寮に立ち入ったとして、住居侵入容疑で書類送検されている。産経新聞によると、同社はあくまでも「通常の取材の一環」としているという。
このように身分を偽ったり、個人宅に立ち入ったりして罪に問われることはあった。しかし藤倉被告は本名を名乗って取材をしていた上、「初転法輪記念館」は一般公開された施設。紀藤弁護士は「公開されている場所への立ち入りが問題となるのは初めてのこと」と指摘している。