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PCやスマホを使わず、高度なVR体験を可能にする一体型ヘッドセット「Oculus Quest」登場 その実力は?

2018年10月07日 07:02  リアルサウンド

リアルサウンド

 VRやARなどの技術革新、それらを体験するデバイスの低価格化によって、リアルとデジタルの境界が滑らかになる未来がいつの間にかすぐそこに来ている。今年5月の「Oculus GO」発売も記憶に新しい中、つい先日Oculusが発表した新型VRヘッドセット「Oculus Quest」は「Rift」「GO」に続く第三のVRヘッドセットだ。GOのような完全なスタンドアロンでありながら、Riftのような体験を実現したこのもう一つのOculusは、今までのデバイスと何が違うのだろうか。


(参考:Oculus Goを凌駕する? 新型VRヘッドセット「Santa Cruz」2019年第1四半期にリリースか


そもそも「Oculus」とは?
 Oculusは2014年にFacebookに買収された、米 OculusVR社によるVRヘッドマウントディスプレイブランドであり、今のVR業界を開拓し牽引し続けている製品だ。これまでにPCに接続して使用し、専用のコントローラーを用いることで深い没入感を味わえるハイエンドモデルとして「Oculus Rift」、完全なスタンドアロン型で気軽にVRコンテンツ楽しめるエントリーモデルとして「Oculus GO」が発売されており、その体験性やコンテンツの質、数は他のVRデバイスより先を行っている。


RiftとGOの良いとこ取り「Oculus Quest」
 今回発表となった「Oculus Quest」は前述の「Rift」と「GO」の良いところをバランスよく取り入れ、発展させたOculusの新しい形。PCやスマホなどの外部機器に頼らず利用できるOculus GOのようなスタンドアロン型でありながらも、専用コントローラを用いたスタイルは「Rift」のようにVR内での「持つ」「掴む」といったより現実に則した手の動きを可能にしている。


 さらに、GOでは前後左右への頭の傾きと回転のみを追跡できる「3dof」(3 degrees of freedom)であったのに対し、「Quest」ではRiftと同じように頭の回転と傾きに加え、前後左右と上下への移動ができる「6dof」を採用。Riftのように自由に動き回ることができる、より高い体験性を味わうことができるようになっている。


 これまでRiftにおいて「6dof」を実現していたのは設置した外部センサーを用いたポジショントラッキング技術によるものだったが、Questは完全なスタンドアロン型。そのため外部センサーなどは用いず、前面についた4つのセンサーにて現実世界の空間をスキャン。「Oculus insight」と名付けられたこのトラッキングシステムによって外部センサーの要らない「6dof」が成立している。Riftからケーブルをなくしたより自由な体験を目標に開発された「Quest」はまさに自由を得たRiftといえる。


価格から見るQuestの強み
 現在の発表によると「Oculus Quest」の価格は399ドル(日本円で約45,000円)とのこと。RIftは現在、約50,000円ほどで購入が可能だが、実用のためにはそれなりのマシンパワーを有したPCが必要となるため、持っていない場合は別途費用が必要となってくる。また同様に競合製品である「HTC Vive」もPCに接続する必要があるため環境構築がマスト。しかも価格も約84,000円とより高額。VRヘッドセットの普及加速に一役買うかと思われたPSVRも約48,000円ほどの値段感ではありながらPS4に接続した利用が前提となるため初期コストが高くついてしまう。


 一方、「Oculus GO」は「3dof」と体験性に制限はあるものの外部装置の要らないスタンドアロンである上、値段も約25,000円とRiftをはじめとする製品の半額以下。しかも購入後に電源を入れればすぐに楽しめる気軽さも大きな魅力。一方、同時期に発売されたスタンドアロン型の製品としてはレノボから発売されている「Mirage Solo」がある。スタンドアロンかつ「6dof」という大きな特徴を備えながら約50,000円という価格で提供されているこの製品だが、6dofの自由度を活かせるコンテンツも少なく、Oculus GOに比べると体験性も芳しくないところが多く全体的に中途半端な印象を残しているのが現状だ。


 上記の通り、代表的なVRデバイスについてざっくりと列挙してみたが「スタンドアロン型」という自由度、「6dof」という体験性、Oculusプラットフォームによる「コンテンツの充実」、そして納得の行く価格感。この全てを兼ね備え、手軽にVRの面白さを享受できるのは今のところ「Oculus Quest」だけと言える。


VRは誰のもの? 仮想現実が当たり前になる日
 PSVRが発売された2017年。すでに売れ行きの好調だったPS4との組み合わせによる加速度的な普及が期待され、「VR元年」とまで言われた年だった。しかし、2018年Oculus GOの発売によりVRがさらに身近に体験できるようになっても、まだまだ一部の人の娯楽的な側面が強いのが現状だ。今回発表された「Oculus Quest」は気軽に「6dof」の体験性を得られる上、十分なコンテンツが揃った今までにないプロダクト。とはいえゲームコンテンツ単体にハードを牽引できるほどの力は、今のところあまりない。


 すでに潤沢なコンテンツを持ちながらも今ひとつだったPSVRの事例を考えてみても、少なくとも日本におけるVR普及の鍵を握るのはゲームではなく、それよりも先日、仮想空間内でのLIVEを大成功させた「輝夜月」をはじめとするVTuberなどのバーチャルコンテンツや、「Cluster」など仮想空間内でのネットワーキングサービスといったところに一つの答えがありそうだ。そんなゲーム以外のコンテンツの拡充にも期待を寄せつつ、2019年春のQuest発売を楽しみに待とう。


(げんきくん)