F1第17戦日本GP、ブレンドン・ハートレーが6番手、ピエール・ガスリーが7番手という、トロロッソ・ホンダとして2018年シーズン最高の結果を出した予選が終了してから4時間40分後、ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターが、2015年にF1に復帰後、ホンダとして鈴鹿での最高の予選結果を出した喜びと、それに至るまでの苦労を語ってくれた。
というのも、フリー走行3回目ではハートレーが13番手でつけていたものの、ガスリーは最下位に終っていたからだ。
「フリー走行3回目でガスリーのパワーユニットの挙動に若干、最適でなかった部分があったために、セッション中にデータの変更を行いました。変更したデータでのPUの挙動を確認してもらおうとセッションの最後にコースインしてもらったんですが、他車(ヒュルケンベルグ)のクラッシュによって赤旗が出て、その確認がきちんとできないまま予選を迎えることになりました」
ここでホンダは現場だけでなく、栃木にある本田技術研究所のHRD SakuraとイギリスのHRD MKのエンジニアたちが連絡を取り合い、ガスリーのパワーユニットに何か起きていたのかを分析するとともに、予選に向けてどうすれば、挙動が最適になるかのミーティングを行い、「予選までにはなんとか収束させることができました」という。
ほかのグランプリでは通常、行わない作業を田辺TDは珍しく「金曜日だけでなく、今日も予選前にちょっとドタバタした場面もありました」と表現した。
日本GP前、フランツ・トストはチームのメンバーに「絶対に2台そろってQ3へ進出しよう」と目標を掲げていたという。その中で開始された予選は、Q1でマーカス・エリクソン(ザウバー)がクラッシュして赤旗が出される波乱の中でスタートしたが、トロロッソ・ホンダのふたりはガスリーが10番手、ハートレーも14番手でQ2へ進出。順調に予選を開始させていた。
「ハートレーについては昨日から調子が良く、ガスリーのPUのデータも、フリー走行3回目までに比べてかなり改善され、満足のいくレベルになっていました」(田辺TD)
■霧雨が舞い始めるなか的確な判断を下したトロロッソ・ホンダのストラテジスト
Q2で早めに2回目のアタックを開始したトロロッソ・ホンダの2台。ガスリーが9番手、ハートレーが10番手に入ったものの、まだ2回目のタイムアタックが残っていたドライバーが数人いた。
ところが、ここでサーキットに霧雨が舞い始める。そのため、最後にタイムアタックを行ったドライバーたちは、トロロッソ・ホンダの2台を上回ることができずに、ガスリーとハートレーが2台そろってQ3に進出した。
「今回の予選は雨に助けられた部分もありますが、チームのストラテジスト(戦略家)が的確な判断を行って、正しいタイミングで2台をコースインさせていたことも事実です」(田辺TD)
Q3でもトロロッソのストラテジストは的確な判断を下した。早めにドライタイヤでアタックを行ってハートレーが6番手、ガスリーが7番手のタイムをマーク。後半になって雨が降り出したため、この順位のままで予選が終了した。
予選6番手と7番手はトロロッソ・ホンダとして2018年シーズン最高の予選結果となっただけでなく、15年にF1に復帰したホンダにとっても、鈴鹿で最高の予選結果となった。
「いろんな状況が絡み合った結果ですが、結果は結果です。ここでこの結果を出せたということは、われわれの実力が確実に進歩していることを証明しできました」
予選でシーズンベストを達成したトロロッソ・ホンダ。日曜日のベストはバーレーンGPでのガスリーの4位。簡単ではないが、田辺TDが言うように「悔いのないレース」ができれば、目指せないポジションではない。