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「医療のかかり方」会合にデーモン閣下も参戦 厚労省、一時サンドバック状態に

2018年10月05日 17:42  弁護士ドットコム

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「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」(座長:渋谷健司・東大院教授)の初会合が10月5日、東京・霞が関の厚生労働省であった。医師の働き方改革を進めるうえで、患者側の理解も必要と考え設置されたものだ。医療情報をわかりやすく整える必要性が指摘されたほか、構成員のデーモン閣下が報道陣の撮影が制限されたことについて「理由はどこにあるのか」と疑問を呈す場面も。今後、月1回程度の頻度で開催する。


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●救急の問い合わせ、「半数」が急を要さず

この日の会合では、厚労省側から、医療のかかり方に関する現状についてまず報告があった。横浜市救急相談センターへの問い合わせ結果(2016年1月15日から2017年1月14日)を取り上げ、翌日の日中に受診するよう勧めるレベルや経過観察で足りるレベルなどが合わせて約50%に上ったことが紹介された。


さらに病院の待ち時間のデータ(受療行動調査から)では、30分以上の待ち時間となる場合が約50%にのぼることも指摘された。厚労省担当者は「非常に長い待ち時間。適切なかかり方ができれば、状況の改善ができるのではないかと考えている」と述べた。


また、休日夜間に子どもの症状にどう対処すべきか迷った際、小児科医らに電話相談できる「子ども医療電話相談」(短縮番号#8000)の認知度が低いことも課題として挙げられた。


●条例で「安易な夜間休日の受診を控える」

自治体からも報告があった。宮崎県延岡市地域医療対策室の吉田昌史・総括主任は、県北部の医療を支える県立延岡病院で医師が大量離職する危機が2009年にあったことを報告。医師の数が少ないなか、厳しい労働環境が続いたことが要因だったという。


危機感を抱いた延岡市では「延岡市の地域医療を守る条例」を2009年に制定。こうした条例は全国初で、「かかりつけ医をもつ」「安易な夜間及び休日の受診を控える」「医師や看護師等に信頼と感謝の気持ちをもつ」ことなどを市民の責務として明記した。


市民による署名活動も広がり、医師の大量離職は最終的に免れた。結果として、県立延岡病院の時間外患者数はピーク時から半減したという。吉田氏は「減少した数字は現在まで継続している。一定の成果があったと考えている」と話した。


●厚労省、サンドバック状態

自由討議では、厚労省や現状の医療情報の伝え方に対する厳しい指摘が相次いだ。


マギーズ東京共同代表理事の鈴木美穂氏が「省庁は伝えることが苦手でダサい」と口火を切ると、電通でコピーライターなどの経験がある「ツナグ」代表取締役の佐藤尚之氏は「役所のホームページはひどすぎる、大切なことが奥の方にあるし言葉もひどい。文章を書ける人で協力したい人はたくさんいるはずなので、協力を求めたらどうか。今日からでも直したほうがいい」と対応を促した。


厚労省では、この日の初会合が始まったことを写真付きで午後1時過ぎにTwitterでつぶやいていた(https://twitter.com/MHLWitter/status/1048063862291849216 )が、渋谷座長はその内容を見たうえで「これじゃ検討会が何をやってるいるか伝わらない」と指摘。「役所を叩く会議じゃない」とも述べたが、厚労省側にとってはつらい時間帯がしばらく続いた。


さらに、会議は冒頭の構成員紹介までと、終わり間際の根本匠厚労相による挨拶を除いて、報道陣による撮影ができなかった(録音は可能)。行政機関の会合としては必ずしも珍しいことではないが、渋谷座長は「できるだけオープンにしましょう」。デーモン閣下も「やらない理由はどこにあるのか。ネット中継も簡単にできる時代なのに」と語った。


●村木厚子氏「患者側が主体」

構成員には、元厚労事務次官で津田塾大学客員教授の村木厚子氏も選ばれた。村木氏は「医療のかかり方という言葉はあまり使わない言葉。患者側が主体なんだと伝わると、もっとこの問題にインパクトを持たせることができる」。日本医師会常任理事の城守国斗氏は「本当に見てほしい人に見てもらえないという悩みもある。国として医療情報はこれを見ればいい、というものができれば」と語った。


根本厚労相は終わり間際の挨拶で、「受診抑制を目的としているわけではない。あくまでも患者のためを考える。短縮ダイヤル、残念ながらあまり認識されてない。できるだけ柔軟に自由にご議論いただいて、ご提言もたまわりたいと思う」と述べた。


(弁護士ドットコムニュース)