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HKT48 宮脇咲良らIZ*ONE専念は改革の始まり? 田中秀臣が48グループのグローバル化を読む

2018年10月05日 10:42  リアルサウンド

リアルサウンド

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 HKT48の宮脇咲良、矢吹奈子、そしてAKB48の本田仁美の三名がそれぞれのグループでの活動を休止し、二年半、日韓アイドルユニットIZ*ONEに専念することが発表された。


参考:AKB48 横山由依&武藤十夢&向井地美音&田中美久が語る、これからのグループ像「自分たちの世代でもう一度大きな波を起こしたい」


 9月24日に行われた握手会で、宮脇はAKB48のプライドをもって、世界に認められたいと意欲を表明した。オーディション番組『PRODUCE 48』で半年にわたる過酷な試練を勝ち抜いてきた宮脇らしい決意表明といえる。他のふたりもおそらく同じ想いではないだろうか。


 宮脇は今年のAKB48世界選抜総選挙で第3位に輝き、いわば日本のアイドル界全体でもトップスターといえる一人である。同9位にランクインした矢吹もまた次代のエース候補のひとりだ。矢吹はHKT48でも最新曲「早送りカレンダー」にて初センター(田中美久とのWセンター)を務めるなど、宮脇とともにHKT48のけん引役でもある。そして完成品を評価する傾向の強い韓国のファン層をうならせたダンスの切れ味抜群の本田は、国内での評価もこれから急上昇が見込まれる逸材だろう。


 つまりAKB48グループは、自らのグループの現在から未来にかけての至宝を、韓国との合同ユニットの形で世界にむけて送り出すことになった。これは日本のアイドル界にとってとてもスリリングで興味深い挑戦になるだろう。たしかにAKB48グループとしての国内での活躍は長期間にわたって休止してしまう。二年半の期間は、アイドルの世界では遠い銀河の果てに旅することにも似た時間だ。


 おそらく宮脇ら三人が、現在のイメージのままで二年半後戻ってくることはないだろう。いまのファンの人たちにはそれは不安でもあり、また同時にその期間も変わらず応援を続けることで、彼女たちを通して世界のアイドル市場の鼓動をともに共有できる。その意味では、日本のアイドルの特徴といえる、未完成なアイドルがファンと感情を共有しながら成長の物語を織りなす、というビジネスモデルが、グローバルな場面で体験できるかもしれない。つまり彼女たちのファンもまたグローバル化の中で大きく変容するだろう。これは画期的なことになる。


 もちろん不安もあるだろう。特に中心メンバーである宮脇と矢吹が抜けたHKT48には人気の面で不確実性が大きくなる。だが、他のHKT48のメンバーにとっては、このエースふたりの不在はチャンスである。矢吹と共に“なこみく”と称される田中美久や田島芽瑠ら総選挙の上位陣、また個人的に推すが小田彩加にも飛躍の機会になる。もちろん先日の『AKB48グループ第2回ユニットじゃんけん大会~空気を読むな、心を読め!~』で優勝した新星、松田祐実(AKB48の多田京加とのユニットFortune cherryで優勝)にも注目が集まるだろう。HKT48はその誕生からアイドル激戦区といわれる福岡でもまれ、そして日本のアイドルの中心地である東京圏から離れてはいるものの、その知名度と人気はAKB48グループの中でも上位をキープし続けている。アイドルの玄界灘ともいえる荒波でもまれたHKT48にとって、同グループにとっての新しい成長が始まると期待したい。


 もともとその誕生の時からHKT48は国際市場をターゲットにしていた。福岡空港のハブ空港としての位置づけを活用して、韓国、中国など国際的な市場に自らおもむき、または海外からのファンやエンタメ業界からの発注に柔軟に応えることを目的にしていたといわれている。その可能性は残念ながらいまのところ本格的なものになってはいない。


 今回の宮脇、矢吹、そして本田の海外市場への挑戦と飛躍は、AKB48グループの念願だった海外市場への本格的参入の扉をひらく、大きな革新(イノベーション)になることだろう。三人に激励を心から送りたい。(田中秀臣)