日産自動車とKONDO RACINGは10月1日、東京都中央区銀座のNISSAN CROSSINGで、2019年にニュルブルクリンク24時間レースと、スーパーGT GT300クラスに参戦すると表明した。チームを率いる近藤真彦監督は、2019年のニュルで「速くて強く、カッコいいニュルブルクリンクでの戦いをしていきたい」と意気込みを語っている。
現在はスーパーGT GT500クラス、スーパーフォーミュラで戦っているKONDO RACINGは、2000年がチーム創設。そこから18年を経て、新たなグローバルチャレンジをスタートさせることになった。かつて、2002年から04年にかけて童夢S101を走らせル・マン24時間にも挑戦したが、「その頃からニュルの話が聞こえてきていた」と近藤監督は語る。
「話を聞くうちに、GT3にはピッタリのコースだと思いました。でも、とにかく日本車が行くたびにドイツメーカーに倒されていく。絶対にドイツ車に負けないように、日本代表のつもりで戦いに行きたいと思っています」と近藤監督は意気込んだ。
「2000年にチームを作って、こうして20年近く経ってニッサン/ニスモとともに海外のレースに出られるようになるとは思いませんでした。このチャンスを逃したくないと思います」
近藤監督はこの挑戦に向け、ニッサン/ニスモに協力をあおいだが、ニスモの片桐隆夫社長は「近藤監督から『ニュルブルクリンク24時間に出場したい』という相談を受けましたが、当初は『大変だから止めておいた方がいいですよ』と答えました」と否定的だったという。
片桐社長の意見は至極もっともで、ニュルブルクリンクは車体に及ぼす負担がとにかく大きい。自動車メーカーが参戦するのもこの理由からだが、チームとして参戦する場合は、金銭的な負担がそのままチームに跳ね返る。
しかし片桐社長は「絶対にやるんだという決意、そして日本を代表するKONDO RACING、日本のディーラーの精鋭メカニック、そして私たちのGT-Rとともに出場したいという思いに感動しました」とニスモとしても協力を決意。全面的にサポートすることになったのだという。
■日産自動車 星野専務からも熱いエール
この思いに共感したのはニッサンも同様。日産自動車の星野朝子専務執行役員は、全国のニスモパフォーマンスセンターのテカニカルスタッフがメカニックとして参戦することが、「さらなる現場の士気向上、クルマに関わる若者の人財育成、さらには日本市場活性化に繋がる」と支援を決意した。
星野専務は家族から「ポルシェをスカイラインが抜いた話」をよく聞かされてきたという。これは1964年日本グランプリでのポルシェ904とプリンス・スカイラインGTの対決を差すが、近藤監督はその逸話に応え「このGT-Rでポルシェを抜いてきます」と2018年ウイナーのポルシェに対し、力強く宣言。星野専務も「優勝してください」と期待を述べている。
ちなみに、星野専務は9月13日に日産自動車のブランドアンバサダーに就任した、プロテニスプレイヤーの大坂なおみ選手に「分かりました。GT-Rさし上げましょう!」と語った人物。この日、発表会に向かうまでに近藤監督とはエレベーターの中で「ニュルブルクリンクで優勝したら、あなたにもGT-Rあげるわ(笑)」という会話があったとか。「片桐社長とも相談しておきます」とのことで、優勝したら近藤監督にはGT-Rニスモがプレゼントされるのかも……!?
サーキットでお馴染みのピエール北川アナウンサーの司会のもと、こんな和やかな会話も展開されたこの日の発表会だが、「ディーラーメカニックがクルマの楽しさ、操ることの素晴らしさ、人生を挑戦することの楽しさをお客様に伝えられるような人になってもらえれば。日産自動車大学校の生徒たち、販売店のメカニックたち、ニッサン/ニスモ、みんなでこのKONDO RACINGの新しいふたつの挑戦を応援していきたいと思います」と星野専務は語る。
そして近藤監督は「ここまで来るのに時間はかかりましたが、1年前から構想は練っていました」とこの日の発表にこぎつけた思いと、ニュルへの戦いに向けて宣言した。
「GT-Rは何よりも速くないといけないし、強くないといけない。そしてそのGT-Rをお預かりするわけですから、それに加えてカッコよくないといけないと思います。速くて強く、カッコいいニュルブルクリンクでの戦いをしていきたいと思っています」
その特殊性から、ニュルブルクリンクにおけるドイツメーカーの壁は厚い。近藤監督が語るように速く、強く、カッコいいGT-Rがその勇姿を披露することができるのか。2019年のニュルブルクリンク24時間まで、万全の準備が進められていくはずだ。