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【津川哲夫の私的F1メカ】クラッシュの被害を最小限に留め、ハロとともにコクピットを守る日本製の最新ロープ

2018年10月03日 18:11  AUTOSPORT web

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レッドブルF1のフロントサスペンションの先端に設置されているザイール・ロープ。クラッシュ時のホイール離脱を防ぐ
今シーズンのF1で導入されたコクピット保護デバイス『ハロ』システムは、クラッシュしたマシンやトラブルで飛散したパーツから、ドライバーの頭を護るコクピットを覆うデバイスだ。すでに今シーズン二度に渡り、激しいクラッシュからドライバーを救っており、その安全性の高さが実証されているわけだが、F1マシンには他にも被害を最小限に留める工夫を凝らしたデバイスが施されている。

 このハロの設計段階で実際に想定されたのは、クラッシュ時に飛び散るアップライトが着いたままのホイールとタイヤがぶつかることだ。時速300キロオーバーでサスペンションが壊れ、ときにはサスペンションアームが着いたまま車体から千切れて飛び散るような、最悪のシチュエーションへの対策が施されている。

 写真はレッドブルRB14のフロントサスペンションアーム部。このコーナー(アップライト、ホイール、タイヤ、アーム類を含んだサスペンション・アッシーをまとめた呼び名)は相当の重さになる。クラッシュした際、車速を超えるようなスピードで飛ぶ質量の大きいコーナーパーツは、とんでもないエネルギーを持った飛散物になるのだ。

 実際、オープンホイールのレースではクラッシュや接触時には、ホイールが後方のドライバーの頭を襲い、頭部を直撃し命を落とした例も多い。その被害を少しでも軽減させるために、ハロはそういった最悪の状況での救世主としての役割を担っている。

 そして、F1はかなり以前から、この飛散ホイール問題への対処が続けられている。それが写真のコーナーがモノコックから離れないように、長年サスペンションアームの内部に身を潜めて、必死にコーナーとモノコックを繋いでいるホイール・ティーザースだ。

 サスペンションアームの先端に見える細いロープ。これは日本製の難熱性・高強度をもつ繊維で、ケブラーよりも強く、防弾チョッキ等に使われる『ザイロン™(東洋紡の商標登録)』繊維を使ったロープだ。

 このロープは合計110平方ミリを3本に分けることが義務づけられ、アップライトとモノコック側でそれぞれ独立したブラケットにボルトオンされる。ザイロンロープは弾丸を通さないほど引張強度があり、千切れず、ナイフやハサミで切るのも難しい、最強のロープだ。

 クラッシュ時にサスペンションアームのすべてが千切れ飛んでも、ホイールその物がアップライトから離れない限り、このザイロンロープがコクピットに引き摺り止めてくれる。また、フロントホイールが千切れ飛んでもドライバーの頭には届かない長さで結ばれていて、さらにハロで護られるのだから、近代F1は極めて安全な対策が施されていると言える。