今週末、タイのチャン・インターナショナル・サーキットでMotoGP第15戦タイGPが開催される。
タイで世界グランプリが開催されるのは初。タイが加わったことにより、シーズン終盤のフライアウェイラウンドは4戦となった。タイの後は1週おいて、日本GPが開催され、オーストラリア、マレーシアの3連戦が続く。
舞台となるチャン・インターナショナル・サーキットは、タイの首都バンコクの北東約400kmに位置するブリーラム県にある。チャン・インターナショナル・サーキットは2014年にオープンした新コースで、チャンはタイのビールブランドの名称で、ネイミングライツによるもの。
2015年よりスーパーバイク世界選手権(SBK)の開催コースとなっているが、MotoGPシリーズは今年が初開催。ただし、MotoGPクラスだけは今年の2月にオフィシャルテストが実施されている。
コースは近年、数多くのグランプリコース設計を手掛けているヘルマン・ティルケ氏のデザインで全長4.554km、右コーナー5、左コーナー7のレイアウトを持つ。コース前半はホームストレートから1コーナーを経て、ロングストレートへと続き、ヘアピンの3コーナーで折り返してストレートを経て、その後、コース中盤はコーナーが続くテクニカルなレイアウトとなっている。最終コーナーは曲がり込んだコーナーのため、コースオフや接触等のアクシデントが起こりやすいポイント。
熱帯性気候のタイは気温、湿度共に高く、この時期は降水確率も高いため、ライダーにとっては厳しいコンディションとなることが予想される。
MotoGPクラスでは前戦アラゴンGPで今シーズン6勝目を記録したマルク・マルケス(ホンダがランキングトップをキープ。ランキング2位のアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ)とのポイント差を72ポイントに広げた。
2月に行われたチャン・インターナショナル・サーキットでのオフィシャルテストをマルケスは、初日3番手、2日目トップ、3日目4番手、2日目に記録した1分29秒969で総合3番手で終えた。テスト終了後、マルケスは「ハードブレーキング、そして加速していくポイントが何カ所かあって、タイヤのマネージメントがとても重要なコースになりそうだ。最終日は20ラップのロングランを行うなど、多くのデータを収集できた」と語っている。オフィシャルテストではホンダ勢が3日間を通じて上位につけており、テストの結果を見る限り、ホンダにアドバンテージのあるコースなのかもしれない。
ドヴィツィオーゾはアラゴンGPでは2位に終わったものの、サマーブレイク以降、2勝、全戦で表彰台に立つなど、マルケスと互角の勝負を繰り広げてきた。オフィシャルテストでは1分30秒192がベストで総合7番手だったが、マシンのセットアップも煮詰まって来ており、タイでも上位争いに加わって来るだろう。
バレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)はランキング3位をキープしているが、トップのマルケスから87ポイント差、ドヴィツィオーゾから15ポイント差とチャンピオン争いは厳しい状況となった。サマーブレイク以後は表彰台争いにも加わることができず、マシンの問題はいまだに抱えている。オフィシャルテストでも1分30秒511がベストで総合12番手に止まった。
ランキング4位のホルヘ・ロレンソ(ドゥカティ)はサンマリノGP、アラゴンGPと転倒リタイアに終わり、ロッシとのポイント差は29ポイントに拡大した。さらにアラゴンでは転倒で右足を強打し負傷した。その影響が今レースにどう影響するか。ロレンソはオフィシャルテストの時点では、2017年型と2018年型のマシンの両方を試すなど、1分30秒729で総合16番手と苦戦。しかし、現在ではマシンもまとまっており、体調に問題なければ、トップ争いに加わってくるだろう。
マーベリック・ビニャーレス(ヤマハ)はロレンソの2戦連続ノーポイントもあり、同ポイントのランキング5位に並んだ。ビニャーレスはオフィシャルテストでは、1分30秒274で総合8番手で終えているが、ロッシと同様、マシンの問題を抱えており、それをうまく解決できるかどうかにかかっている。
ビニャーレスと11ポイント差のランキング6位にカル・クラッチロー(ホンダ)が続き、インディペンデントチーム勢ではトップとなる。ただし、ダニロ・ペトルッチ(ドゥカティ)もクラッチローと同ポイントのランキング7位につけており、ペトルッチと7ポイント差のランキング8位にヨハン・ザルコ(ヤマハ)が続いており、インディペンデントチーム勢のトップ争いは接戦だ。オフィシャルテストはクラッチローが1分30秒064で総合4番手、ペトルッチが1分30秒367で総合9番手、ザルコが1分29秒867で総合2番手で終えている。
前戦アラゴンGPで今シーズン3回目の表彰台となる3位入賞を果たしたアンドレア・イアンノーネ(スズキ)はザルコと4ポイント差のランキング9位。アラゴンGPを4位で終えたアレックス・リンス(スズキ)はイアンノーネと16ポイント差のランキング10位と、シーズン終盤に向けて調子を上げてきた。オフィシャルテストでは、リンスが1分30秒178で5番手、イアンノーネは1分30秒718で15番手だった。
ランキングでは11位に止まっているが、チャンオフィシャルテストでトップタイムを記録したのがダニ・ペドロサ(ホンダ)。ペドロサは初日5番手、2日目2番手、3日目にトップタイムを記録、1分29秒781で総合トップでテストを終えている。今シーズン、ここまでのベストリザルトが5位のペドロサにとって今レースは表彰台獲得のチャンスと言えるだろう。
そして、中上貴晶(ホンダ)はランキング20位。オーストリアGP以降、中止となったイギリスGPを除いて3戦連続でポイントを獲得している。オフィシャルテストでは、最終日に1分30秒456を記録し8番手につけ、3日間総合でも10番手で終えている。MotoGPベストリザルト更新をめざし、日本GPに向けてもいい流れをつかみたいところ。