2018年F1第16戦ロシアGP決勝は、メルセデスのルイス・ハミルトンがチームオーダー発令でバルテリ・ボッタスをかわし3連勝を達成。チャンピオンシップでフェラーリのセバスチャン・ベッテルに対しさらに優位に立った。F1ジャーナリストの今宮純氏がロシアGPを振り返りと、次戦日本GP鈴鹿の見どころを解説する。
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F1第16戦ロシアGPはメルセデスが下したチームオーダーによってハミルトンが勝ち、ベッテルを50点(2勝分)リード。計算上はあと5戦、3位をキープしていちど2位になればベッテルが全勝しても五冠達成となる。
第14戦イタリアGP~第15戦シンガポールGP~ロシアGPと3連勝、直近6戦で5勝を上げた。2017年も後半戦に突入してから第12戦ベルギーGP~第13戦イタリアGP~第14戦シンガポールGPと3連勝、“固め勝ち”の進撃をつづけていった。一方のベッテルは後半戦に1勝したのみで追撃できずに引きはなされた。こうしてみると2018年シーズンも1年前と似た展開になりつつある。
一つ違いがあるのは、ここでメルセデス陣営が初めてチームオーダーをボッタスに発令したことだ。第11戦ドイツGPで彼らは2位ボッタスに「順位はそのまま」と指示、これは1-2フィニッシュを確実にするためのものだった。今回のソチで指示した25周目の件は、先行するボッタスに「順位を譲れ」という強制的な意味である。
チームプレイヤーとしてそれを実行したボッタスは感情を露わにせず、ゴール後も懸命に何かに耐えているようだった。マクロな視点で言うなら、メルセデスとしてはこの日のレースのためにやったことだが、今後これからに“しこり”を残すことになるかもしれない。
過去には2002年第6戦オーストリアGPでフェラーリはチームオーダーを指示、ルーベンス・バリチェロを下げミハエル・シューマッハーを上げた。2010年第11戦ドイツGPではフェリペ・マッサとフェルナンド・アロンソにもチームオーダーを下している。
これまでメルセデス首脳陣はこうしたチームオーダーを否定する態度でいた。それだけに、過去フェラーリがとった采配とは意味合いが違う(のではないか)。
ニコ・ロズベルグ在籍時代にハミルトンとの鬩ぎあいが過熱した際、ニキ・ラウダが揺れるチーム内で行動力を示してきた。もし彼がいままでのように帯同していたなら、この日スタート前にあらゆるシナリオをアドバイスしたかもしれない。またレース後に“しこり”をほぐすような役割も務めたのではないか。
最近では珍しく初日のフェラーリはバランスがまとまらずにいた。土曜には改善してきたものの、セクター3に連なる直角ターンのボトム・スピードがもうひとつ。3位グリッドのベッテルはスタートに賭けたが、メルセデス勢ががっちり“縦フォーメーション”を組み、スリップストリームには入れず。切り崩せなかった。
■日本GP鈴鹿、トロロッソ・ホンダは新パワーユニットのスペック3でどこまでいけるか
ピットストップ後、ハミルトンの前に出ても抑えきるスピードに欠け、結局3位で従う展開を強いられた。フロント周辺のエアロ・アップデートを投入した効果を十分に引き出せなかったのだろう。鈴鹿はシルバーストーン、スパに近いエアロ・パッケージになってくる。最後の反撃へ、その“最適化”にかかっている。
2018年さらに全開率が高まる鈴鹿だけに、レッドブルはルノーPU(パワーユニット/エンジン)のパワーハンデがつらいところ。タイヤにやさしくレースペースでは遜色ないだけに望むのは小雨の予選か。2年連続2位マックス・フェルスタッペン、昨年3位にくいさがったダニエル・リカルドである。
慌ただしい鈴鹿デビュー戦となるトロロッソ・ホンダ、金曜がとても重要だ。
ソチのトラブル対策はもちろん、パワーユニットのスペック3のチューニングを進めるためにも着実に周回数を重ねること。ブレンドン・ハートレーはまずコース慣熟を優先、ピエール・ガスリーがセットアップ方向性を定める役割分担で土曜に備えていきたい。
ますます激化しているBリーグではフォース・インディア、ハース、ザウバーが直近ライバル。ルノー、マクラーレンをしのげるか、“パワーユニット対決”でもある。
昨年Q1ではBリーグのトップ7位から8台が1秒以内だった。トロロッソ・ホンダの現実目標としてベルギーGPと同じ予選11位、12位を“控えめ?”に挙げたい。スタートタイヤ選択、ピット戦略の幅も広がる。そしてなにより『HONDAスピリット』をレースで――。