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『黄昏流星群』佐々木蔵之介が50歳で挑んだ“運命の恋” 「清く正しく美しくあろうとしている」

2018年10月02日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 10月11日より放送がスタートする木曜劇場『黄昏流星群~人生折り返し、恋をした~』(フジテレビ系)。本作は、人生の折り返し点が近づき、これからの人生を考え始めた大人たちを主人公としたラブストーリーに仕上がっている。弘兼憲史の同名漫画の中の第1集「不惑の星」を原作とし、佐々木蔵之介が初の恋愛ドラマ主演を務める。佐々木の妻を中山美穂、そして偶然の出会いによって主人公が心惹かれる女性を黒木瞳が演じている。


 リアルサウンド映画部では、主人公・瀧沢完治を演じる佐々木蔵之介にインタビュー。妻子を持つ50歳、エリート銀行マンながらいきなりの左遷をきっかけに、妻以外の女性に惹かれていく様子をどう演じたのか。初のラブストーリーを演じた手応えや、同じ50歳として完治に共感する部分について話を聞いた。(編集部)


■「恋多き人たちが集まっているわけではない」


ーーオファーをもらっていかがでしたか?


佐々木蔵之介(以下、佐々木):私の演じる瀧沢完治はエリート銀行マンで、出世のために家庭を顧みず、仕事ばかりやってきたのに、意図せず左遷されてしまいます。 私自身もサラリーマン経験があるし、ちょうど黄昏世代の50歳。今回は、等身大の役ができるな、という思いです。


ーーそんな人が、妻以外の女性に恋心を持ってしまうという。


佐々木:完治は、本当に仕事ばかりやってきた男です。自分の仕事にとってマイナスになるようなことはすべて排除してきたのに、思いがけない理由で左遷になり、さらに運命の女性に出会ってしまう……。奥さんからしたら、なにそれ? という感じかもしれませんが(笑)。みなさん、物語の設定だけ見たら「これなに? ありえない」ってなるかもしれませんが(笑)、登場人物はみんなある意味とても真面目に生きてきた人間で、恋多き人たちが集まっているわけではないという点が、このドラマの面白さだと思います。


ーー佐々木さんは今回が初めてのラブストーリー主演ですね。


佐々木:僕は最初、この話はヒューマンドラマだと思っていたのですが、取材などで「佐々木さん初めてのラブストーリーですね」と言われて、「えっ、そうなの? それはちょっと考えてなかったです」と(笑)。完治はずっと仕事に身を捧げてきたのに左遷されて、その気持ちを癒そうとスイスに行ったら栞さん(黒木瞳)と会ってしまった。そこから、完治はラブストーリーの主人公になってしまったんですね。だから、人はある時偶然ラブストーリーの主人公になる時があるんだな、と。


ーー実際にラブストーリーの主人公になってみていかがですか?


佐々木:ラブストーリーと言われてから、演じ方がわからなくなってしまって(笑)。黒木瞳さんも中山美穂さんも心得ていらっしゃるんですけど、僕だけがわかっていない(笑)。でも、喋っていない時、人の話を聞いたり、台詞がない時が重要だと思いました。たとえば、「あなたを想ってる」という台詞そのものではなく、言う前後の顔とか、ふとした瞬間に何かを想像している表情とか。


ーー黒木瞳さん演じる目黒栞はどんな女性ですか?


佐々木:黒木さん演じる栞は、絶対に自分から押そうとしないんです。完治はその控えめなところに惹かれてしまうのもあります。この人の力になってあげたいという気持ちを抱いているんだと思います。


ーー“50歳の恋愛”というのは、それより下の世代の恋愛とどう違うと思いますか?


佐々木:もちろん一括りには言えませんが、40~50歳で社会的立場や経験もあって、家族も部下もいると、気持ちだけで突っ走ることはしないですよね。いろんなことで、自分の中でストッパーをかけたりしていると思うんです。その中で、主人公たちは恋愛や仕事を通して、「あっ、こんな気持ち忘れた」という経験をしていくんです。でも、その時にストッパーが外れて、一気に流れていくわけでもない。なので、このドラマは、ドロドロには見えないと思いますよ。


■「30歳で東京に来て、50歳でようやくラブストーリーに挑戦できた」


ーーそうなんですね。ドロドロしていないというのは意外です。


佐々木:でしょう? 不倫なのに清潔感がある、というのは違いますが、登場人物がいつも清く正しく美しくあろうとしている。劇中で、「家族を裏切るのはつらいという思いにぴったりとくっついて、あの人を求めてしまう自分がいる」という完治の台詞があるんですが、並行した思いではなく“ぴったり”という言葉がいいなと思いました。真璃子(中山美穂)も完治に対して、「あの人と何かあるでしょ?」とか言わないし、僕も打ち明けません。言ってしまったら破壊されてしまいますから。一方で、完治と栞の関係も行き過ぎることがなく、ある地点を揺れ動いている。恋に没入して不倫をするのではなく、同時に抗ってもいる。相手を裏切って何かをするということは求めてなくて、家族を守りたいし、相手を尊重したい気持ちを持っているんだと思います。


ーー恋愛だけに身も心も捧げることはしないんですね。


佐々木:そうですね。恋愛だけじゃなくて、出向先の会社での問題や家族の問題など複数の問題を抱えながら全10話まで続くので、結構忙しい(笑)。出向先の荻野倉庫では銀行員の時には思いもしなかったような地味で細かな仕事を自ら始めたり、人間関係の大切さに気づいたり。出向をきっかけに、完治は多くのことを取り戻してリスタートしていきます。設定は大胆なのですが、主人公たちの細やかな感情の動きは嘘がなくて、リアリティがあると思います。


ーースイスで完治が栞に「荷物を下ろしに来たんですか?」「働いている間に、いろんなもの背負ってらしたのかなって」と聞かれるシーンが印象的でした。佐々木さんも、完治と同世代ですが、これまでの俳優業で何かを背負ってきたという感覚はありますか?


佐々木:どうでしょう……。自分は今俳優のお仕事をさせていただいていますが、大学も会社勤めも経験したのは、すべて家業を継ぐためだったので。それを家族に諦めてもらって、今この仕事をさせてもらっているので、そのことはいつも心の中にありますね。代わりに後を継いでくれた弟や、自分のこの仕事を認めてくれた家族にはとても感謝しています。


ーー今後、またラブストーリーに出演されることもぜひ期待したいです。


佐々木:僕はラブストーリーという科目を、これまで履修してこなかったので(笑)。50歳になってラブストーリーの主演をさせていただくことって、なかなかないと思うんです。20歳でラブストーリーをやるというのはよくあるキャリアですが、僕は20代は学生で会社員をやっていましたから、20代では無理だったんですよ。30歳で東京に来て、50歳でようやくラブストーリーに挑戦できて。ひょっとしたら、今後ラブストーリーが必修科目になるかもしれない(笑)。それを楽しみにしていますね。「時代劇も社会派ドラマもいいですが今後はラブストーリーをメインにやっていきます!」とか言ってみたいですね(笑)。(取材・文=若田悠希)