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夫婦別姓訴訟、大事な名前を変えたくないと事実婚「わがままと言われ理不尽な思い」

2018年10月01日 16:52  弁護士ドットコム

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夫婦別姓の婚姻届が受理されず、法律婚ができないのは違憲だとして、全国3カ所で提訴、国を相手に損害賠償を求めている第二次夫婦別姓訴訟。その一つで、東京地裁で行われている裁判(吉村真幸裁判長)の第2回口頭弁論が10月1日、開かれた。


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この訴訟は、2015年に最高裁まで争った選択的夫婦別姓訴訟の判決を受け、今年5月に新たな争点で提訴されたもの。夫婦同姓を義務付けた民法750条は、同姓を希望する者と別姓を希望する者を差別し、結婚の可否を生じさせていると主張、「信条」による差別を禁止している憲法14条1項に違反するなどと訴えている。国は争う姿勢を見せている。


この日は新たに今年7月、原告グループに加わった、事実婚歴15年という白石昌美さんが意見陳述を行った。


●「あなたが名前を変えたくないのと同じで私も名前を変えたくない」

「小学生の頃、結婚すると女性は氏を変えることが多いことを知りました。私は、なぜ女性だけが氏を変える必要があるのだろう、氏を変えるくらいなら結婚しなくてもいいと思ったことを覚えています」と白石さん。白石さんにとって名前は、「祖父母が氏名全体の画数を考えて、名付けてくれた。大好きな祖父母からの贈り物」だった。


白石さんは、現在のパートナーと交際するうちに、具体的に結婚話となったが、氏を変えたくないという希望を持っていた。しかし、パートナーも氏を変えたくないといい、結局、白石さんは母親に強く説得され、自身の氏を変える形で2002年に法律婚をした。


ところが、「婚姻届を出したその日から、私は1日も早くペーパー離婚をして『白石昌美』に戻りたいと考え始めました」という。「新婚旅行先でも、自分の名前を失った苦しみや悲しみを感じて、泣いてしまうこともありました」


白石さんとパートナーはその後、3カ月にわたって話し合った。「あなたが名前を変えたくないのと同じで私も名前を変えたくない」という白石さんの訴えをパートナーは理解し、2人は翌年、ペーパー離婚をして事実婚を選んだ。


その後、15年にわたり、法律婚と変わりない家庭生活を送ってきたが、一方で白石さんは法律婚との違いも感じるという。例えば、法律婚であれば単純に祝福してもらえたかもしれないが、事実婚はすぐに周囲の理解が得られず、精神的な葛藤を余儀なくされた。


「周囲からは『わがまま』と言われ理不尽な思いもしました」と白石さんは語った。「私が我慢してパートナーの氏を名乗るというような不平等な関係は私の望む夫婦関係ではありませんでした」


最後に白井さんは、「もし選択的夫婦別姓が実現すれば、パートナーと法的にも婚姻関係を結びたいと思っています。この訴訟を通じて、氏を変えずに法律婚ができるようになることを心から希望します」と訴えた。


次回の口頭弁論は12月5日に開かれる。この訴訟とは別に、選択的夫婦別姓を求めて、ソフトウェア企業「サイボウズ」の社長、青野慶久氏らが国を相手取り訴えている裁判の口頭弁論も同日、同じく東京地裁で開かれる予定だ。


(弁護士ドットコムニュース)