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BABYMETAL、相次ぐ海外バンドとの共演 メタル界の“閉塞感”を打ち破る特異性を解説

2018年10月01日 13:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 3人組のメタルダンスユニット・BABYMETAL。日本から離れて、世界各国の行く先々で現地の人びとに熱狂を生み出す彼女たちの活躍は、メディアなどを通して国内でも広く知れ渡っているところである。


 2014年3月の日本武道館公演を境にして、彼女たちは世界へと羽ばたいた。同年7月にイギリスで行われた『Sonisphere Festival UK』など世界規模のロックフェスに相次いで出演を決め、例年、欧州やアメリカで単独ツアーも開催。さらに軌跡をたどると、その道中では海外の様々な大物バンドからも支持を獲得している。


 直近では、今年10月に日本で行われる単独の『BABYMETAL WORLD TOUR 2018 in JAPAN』にスター・ウォーズをオマージュしたメタルコアバンドのGALACTIC EMPIREや、スウェーデン出身のパワーメタルバンド・SABATONを招聘。また、12月にはヘヴィメタル界の重鎮であるJudas Priestのシンガポール公演にスペシャルゲストとして参加を決め、2016年に行われた『AP Music Awards』以来となる同バンドのボーカリスト、ロブ・ハルフォードとの約2年ぶりの競演にも熱い期待が注がれている。


 一体なぜ、彼女たちは海外バンドに愛されるのだろうか。過去の軌跡をたどりながら、その背景に迫っていきたい。


■BABYMETALと海外バンドの繋がりをたどる


 BABYMETALと海外バンドの共演。その来歴をたどると、一つの節目となったのは2ndアルバム『METAL RESISTANCE』に収録された楽曲「Road of Resistance」まで遡る。


 彼女たちの活動の軸にある“メタルレジスタンス”というキーワードを冠した、いわば“アンセム”とも呼べるこの曲では、パワーメタルバンド・DragonForceのギタリストであるサム・トットマンとハーマン・リがレコーディングに参加。2015年6月にはイギリスで行われたメタルフェス『Download Festival UK』での同バンドとの共演も果たし、ステージ上で代表曲の一つ「ギミチョコ!!」を披露した。


 翌2016年4月には、イギリスのウェンブリー・アリーナで日本人初の単独公演を開催。9月には自身最大規模となる東京ドームでの2日間にわたる公演を成功に収めた彼女たちは、12月にアメリカ出身のロックバンド、Red Hot Chili PeppersのUKツアーに帯同。また、同月18日に行われたロンドン・O2アリーナでの単独公演では、ドラマーのチャド・スミスが彼女たちをサポートする“神バンド”と同じく、コープスペイントに白装束という姿でステージへ登場し観客を大いに湧かせた。


 年が明けた2017年1月には、11日に開催されたヘヴィメタル界の重鎮・METALLICAの韓国公演へ参加し、29日にはさいたまスーパーアリーナで行われたGuns N’ Rosesの日本公演にサポートアクトとして出演。さらに、4月には再び、前述のRed Hot Chili PeppersのUSツアーでのコラボレーションを果たした。


■異質なパフォーマンスが海外バンドの心を惹き付けた


 じつは、先述の共演歴はごく一部である。海外バンドのインスタグラムなどを見ると、フェスで共演した際に舞台裏で撮影した彼女たちとの写真も多く見受けられる。一体なぜ、彼女たちはこれほどまでに愛されるのか。その背景を探るにあたり、ハードロック/ヘヴィメタルを取り扱う音楽専門誌『BURRN!』(2018年3月号)に掲載された、ロブ・ハルフォードのコメントを取り上げてみたい。


 ロブは同誌で、2016年の『AP Music Awards』での共演を振り返りながら「彼らは革命的なバンドだと本当に思うし、彼らが次に何をやるのか、早く知りたくてうずうずしている」と証言。さらに、その存在について「今では誰もが、ロック・ミュージックに夢中になっている全員が、日本出身のBABYMETALを知ってるよ!」と称賛していた。


 彼女たちのパフォーマンスは、ヘヴィメタル界に流れていたある種の“閉塞感”を打ち破ったと評価される機会も少なくない。諸説あるが、1960年代にイギリスで発祥したとされるヘヴィメタルはかつて、攻撃性のある歌詞に重厚なサウンド、ハイトーンなボーカルを取り入れたジャンルの一つであると捉える向きが強かった。


 しかし、BABYMETALが分水嶺となりえたのは、パフォーマンス自体がある種“異質”だったことにほかならないのではないか。日本語のままで歌詞を口ずさみ、ヘヴィメタルならではの重厚な音圧に耐えられるSU-METALの歌唱力と、グループの両翼として位置するYUIMETALやMOAMETALと共に織り成すダンス。また、一部からは「バンドなのに曲を弾いていない」という批判もみられたが、実力ある神バンドのパフォーマンスを重なり合わせることで、音楽性という面でも盤石の体制を築いた。


 こうした実績を地道に積み重ねてきた彼女たちの活躍が、海外バンドの支持を獲得してきた背景にある。さらに、先述の「革命的なバンド」と評価したロブの声や、2017年に行われた『SUMMER SONIC 2017』で対面したFoo Fightersのデイヴ・グロールがテレビ番組で「あんなバンドは世界中どこを探しても他にいない」と言及したことなどをみると、彼女たちへ対する期待も大きい。


 時折、日本では“Kawaii”の代表格としても取り上げられるBABYMETAL。しかし、目を奪われがちなビジュアルだけではなく、真髄にあるのは、日本語の通じない場所で海外バンドや観衆を惹きつけてきたパフォーマンスそのものである。だからこそ、この先も言語や国境を超えた活躍を続けていって欲しい。(カネコシュウヘイ)