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堂本剛ソロプロジェクト ENDRECHERIから目が離せない 濃密なファンクとパフォーマンスの凄み

2018年09月29日 10:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 最近ENDRECHERIが気になってしょうがない。『SUMMER SONIC 2018』(以下:サマソニ)で観た彼のライブがよかったからだ。濃密なファンクミュージックを浴び続けたあの時間だけで、「もう元を取った」と言っても過言ではないほどに贅沢なライブだった。きっとあの場で衝撃を受けた人は少なくなかったはずだ。


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 演奏はもちろんのこと、彼のあの佇まいも素晴らしかった。色気を醸し出したENDRECHERIは、アイドル“堂本剛”とは全く異なる人物に見えた。特に「Blue Berry」での溜めに溜めたイントロで、ライブ中一度も外さなかったサングラスをちらっと外したあの瞬間は、思わず叫んでしまった。会場はもちろん大歓声だ。それは、決してジャニーズファンだけのものでない。彼のライブを初めて観る人たち、コアな音楽好きも巻き込んで生まれた歓声だ。


 「サングラスを外しただけで?」と思われるかもしれないが、このさりげないパフォーマンスにも、ミュージシャンとしてのパフォーマンスの高さが伺える。これは、うねるようなビートや激しい強弱を繰り返すドラミング、艶かしいギター……その全てが融合した極上のグルーヴの上で、かつ観客の快感がピークに達しそうなタイミングを察知してこそ成立するパフォーマスだからだ。彼のパフォーマーとしてセンスや勘の鋭さは、日本のアーティストのなかでも群を抜いている。筆者は彼のこのパフォーマンス力に脱帽した。


 そんなサマソニでのライブを観てから楽しみにしていた新シングル『one more purple funk… -硬命 katana-』は、ため息を漏らしてしまうほどに魅惑的な作品だった。ジェームス・ブラウンを彷彿とさせるファンキーなギターやカラフルなシンセが絡み合う「funky レジ袋」や「神機械」も素晴らしいのだが、やはり表題曲が圧巻。「one more purple funk… -硬命 katana-」は、エッジの利いたベースと歪んだギターサウンドが特徴的なファンクロックだ。また、歌詞は男女が愛し合う様子を表現した内容となっており、それを歌い上げるENDRECHERIの粘り気ある声が色っぽい。サウンドだけでなく、歌詞や歌声に関してもファンクとして重要であるセクシャルな要素を捉えているのだ。


 同シングルを聴いていると、星野源のアルバム『YELLOW DANCER』を思い出す。この作品は、R&B/ファンクを取り入れたポップスであるのは然ることながら、ブラックミュージックに則った官能要素を文学的に表現したアルバムでもある。そして『YELLOW DANCER』は初週10万枚の大ヒットを記録し、J-POPシーンにブラックミュージックへの入り口を作った。


 一方ENDRECHERIは、ファンクに傾倒した音楽性であるにも関わらず、群を抜いた楽曲センスとパフォーマンスの質の高さで、今やファンク好き問わずに万人を魅了している。さらに、9月29日放送の『SONGS』(NHK総合)にも出演。「ENDRECHERIの追求するファンク」を特集するという。星野源が“入り口”を作ったとするならば、彼はJ-POPシーンにおけるブラックミュージックの拡張を施す存在になるのではないだろか。ENDRECHERIの楽曲が浸透していく様子を見ているとそう思わずにいられない。


 ちなみに『SONGS』では、「one more purple funk… -硬命 katana-」も披露するとのこと。きっと私たちを陶酔させるようなパフォーマンスを見ることができるだろう。同放送をきっかけに、今後彼の音楽性にさらなる注目が集まるのではないだろうか。躍進し続けるENDRECHERIは、誰も無視できない存在になっている。(北村奈都樹)