P&Gが就活をテーマにした広告キャンペーンを展開し、ネット上で話題になっている。就活生や企業を対象に実施した「1000人の就職活動のホンネ」調査から生まれたもので、「♯就活をもっと自由に」がキーワードだ。
広告は「パンテーン」のもので、一見すれば「自由な髪型で内定式に出席したら、内定取り消しになりますか?」というコピーに、髪をひっつめたリクルートスーツ姿と思わしき女性の後ろ姿に見える。
しかし、近づいて見ると同社実施の就活生実態調査から得た「就活生の生の声」で作られたモザイクアートとなっており、
「もともと地毛が茶色いのだが、就活では茶髪は不利と言われて黒染めした」
「就活生は前髪を伸ばす風潮があり、私自身は短いままにしていたら、面接官に『あなたは短い』のねと嫌味のように言われた」
「なぜ個性のないポニーテールにしなければいけなかったのか、それが不快だった」
などのコメントで埋め尽くされている。
「日本の就活って狂気の沙汰」「全社の人事部の皆様に見てもらいたい」
特に「黒髪」「ひっつめ髪」「額を出す」に関するというワードが多く、「本意ではないがダサく真面目そうな女子就活生になっていた」という声が多い。
中には「顔が大きいのがコンプレックス(略)見られていると思うと自信が持てなくて面接の態度にも影響した」という声もあがっている。それでも「変だと思うが、目立つぐらいなら従う」と我慢していた人が少なくなかった。
広告は渋谷駅、東京メトロ線内などの駅構内のほか、9月26日付の日経新聞などに掲出されている。ツイッターでは、「全員リクルートスーツにひっつめ髪の日本の就活ってはっきり言って狂気の沙汰 これはナイス広告」「全社の人事部の皆様に見てもらいたい」など称賛の声が寄せられた。
このキャンペーンのスタート経緯について、同社広報担当者は「就職活動の時に、ひっつめ髪で画一的な髪型や、茶髪をわざわざ黒髪に染めてから就活を開始するという声がきっかけでした」と話す。
「就活という、人生で一番大事な勝負のタイミングで自分自身に自信を持って輝けていない人もいるのでは?と男女1000人に調査すると、81%が『企業にあわせて自分を偽ったことがある』ということがわかりました」
「就活生の声に耳を向け伝えていくことで、自信を持って活躍できる後押しができたら」
広告では「嫌だけどあえて黒髪・スーツ」という声が多く掲載されている。しかし、前述の調査によると企業の71%が「就活生が服装や髪型で個性を出し、自社の面接を受けることは賛成」と回答している。
「弊社も『選考時の服装・髪型は自由』と告知していますし、髪型が採用に影響を与えることはありません。自由な格好で来る人もいれば、黒髪・スーツの人もいます。しかし就活生の間で『マイナス評価を受けるのでは』と心配する人も少なくないのでしょう」
就活生と企業で認識に違いがあるようだが、背景には就活生側に「こうあるべき」という固定観念が根強く残っていることがあると指摘する。思っていることを互いに知ることで、双方がありのままの個性を評価できるようになれば、としている。
また日本の就活は男女ともにまだまだ画一的な服装や髪型、マナーで個性を表現しにくく、「改善してきているとはいえ、無意識のうちに『女性はこうあるべき』という固定観念にとらわれている傾向はまだまだあります」とした上で、
「パンテーンのフィロソフィーは『美しい髪によって、一歩前に踏み出す勇気をサポートする』。就活生の生の声に耳を向け、伝えていくことでより多くの人が今より自由にありのままの姿で自信を持って活躍することを後押しできたらと考えています」
とコメントした。