2018年09月27日 17:22 弁護士ドットコム
会社というと「株式会社」をイメージする人が多いでしょう。しかし、その頭文字から「GAFA」と呼ばれるGoogleやApple、Facebook、Amazonのような外資系有名企業の日本法人は「合同会社」であることは、あまり知られていないかもしれません。
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実は、2017年に新設された法人の約20%は合同会社となっており、最近ではDMM.comが株式会社から合同会社に変更したことでも注目されています。
合同会社とは、2006年の会社法の改正により「有限会社」に代わって設立できるようになった企業形態です。アメリカのLLC(Limited Liability Company)をモデルとして導入され、比較的新しい形態にも関わらずその数は急速に増加しており、2017年には約55,000社にのぼりました。
株式会社とのいちばん大きな違いはやはり、「株式」という概念がない点です。合同会社は外部に株主を持たず、出資者=経営者となり、出資者自らが業務執行します。
さらに、合同会社では出資額に関係なく、会社の規定に従って利益の配当を自由に決めることができます。そのため、能力を持った人や会社に貢献した人に対し多くの利益を配当することも可能です。
ただし、合同会社のままでは上場できないため、多額の資金調達を狙う場合などには株式会社に形態を変える必要があります。
外資系企業の日本法人に合同会社が多い理由のひとつとして、コストを抑えられるというメリットがあります。
たとえば設立の際に、株式会社であれば設立費用として20万円以上要するのに対し、合同会社は最低6万円程度で設立可能です。
また、株式会社は毎年「官報」という国の機関紙に決算書を公表しなくてはならず、その掲載費が年6万円必要です。役員の任期も株式会社では2年と決められているため、その都度1万円(資本金の額によっては3万円)の登録免許税を納めることになっています。
しかし合同会社はそのような義務がないため、ランニングコストも抑えられるのです。
さらに、外資系企業の合同会社は「監査」が不要です。
監査とは、簡単にいうと、決算書の内容について会計士に意見をもらい財務諸表の信頼性を保証してもらうことです。日本の会社法では原則、大会社(資本金が5億円以上または負債が200億円以上の株式会社)の場合は監査役を置かなければなりません。しかし、大手外資系企業の日本法人を合同会社で設立した場合、本国の審査のみで終了とすることが可能です。これにより、監査にかかる時間やコストも大幅に削減できます。
合同会社は近年増加しているものの、まだまだ株式会社に比べ信頼性が劣るというデメリットがあります。しかし、経営の自由度や低コストで設立・運営が可能という魅力があります。
そこで、合同会社に向いているのは、アップルや西友などのような一般消費者を対象としたビジネスを行う業種です。このような業種は商品やサービスを売りにしているため、消費者にとって企業形態はさほど重要ではありません。また、経営の自由度が高いことからデザイナーやプログラマーといった個人の能力が重視される事業、不動産やFXのような投資事業で起業にも向いています。
一方で、BtoBビジネスや高い信用が求められる業種では株式会社を選択した方が無難かもしれません。
合同会社の件数を都道府県別でみると、東京都が最多の9,522社で全体の3割を占めており、新設数も年々急激に増加しています。安価で簡単に設立できるなどのメリットを活かして、合同会社はさらに増えていくでしょう。
【監修】
山本邦人(やまもと・くにと)税理士
監査法人にて経営改善支援業務に従事した後、2005年に独立。中小企業の財務顧問として業務を行う。税金面だけではなく、事業の継続的な発展という全体最適の観点からアドバイスを行う。
事務所名:山本公認会計士・税理士事務所
事務所URL:http://accg.jp
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