今季はBoPに苦しんできた2017年TCRインターナショナル王者、ジャン-カール・ベルネイ 2017年までのTCRインターナショナル・シリーズに代わり、地域選手権の最高峰として年間7戦で争われるTCRヨーロッパ・シリーズ。その第6戦がイタリア・モンツァで開催され、2017年に“最後のインターナショナル・シリーズ王者”に輝いているジャン・カール・ベルネイ(アウディRS3 LMS)が連勝を飾り、最終戦を前にランキング2位に浮上。連続タイトル獲得に向け猛チャージをみせた。
今季はWTCC世界ツーリングカー選手権の流れを汲むWTCR世界ツーリングカー・カップにも参戦し、TCRの2大トップカテゴリーに同時参戦しているベルネイは、両シリーズに名門チームWRT、アウディスポーツ・レパード・ルクオイルからエントリー。しかし、ここまでのアウディはBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)の調整に苦しみ、成績を残せない苦しい戦いが続いていた。
9月22~23日に開催されたモンツァ戦では、前戦オランダ・アッセンで実施された全車対象のブースト圧調整の結果がふたたび議論の的になるかと思われたが、週末はトラブルなく進行。ストレートでの最高速が勝負の鍵を握る世界屈指の高速サーキットで、ベルネイのアウディRS3 LMSがポールポジションを獲得した。
アッセンではライバル勢のペナルティにより実質ポールを得ながら、レースでは悔しい2位に終わっていたこともあり、ポールシッターのベルネイは必勝を期してレース1スタートに臨んだ。
しかしその気負いが現れたか、1コーナーシケインまでに後続の選手権ライバル、ミゲル・アズコナ(セアト・クプラTCR)、KCMGの実力派アッティラ・タッシ(FK8ホンダ・シビック・タイプR)らにパスされたベルネイは3番手までドロップ。
多くのマシンがファーストシケインをカットする大混乱となるなか、ベルネイはまだレースが落ち着かないオープニングラップのうちにタッシを捉えて2番手を取り戻す。このベルネイの動きに乗じて、タッシのチームメイトであるTCRドイツ3連覇のジョシュ・ファイルズ(FK8ホンダ・シビック・タイプR)も続き、アウディのスリップを狙ってくる。
すると、先頭集団にいたアッセンの勝者ダニエル・ナジー(ヒュンダイi30 N TCR)がサスペンショントラブルによりレズモでコースオフ。続けざまに最終パラボリカでは後半戦からシリーズに参加したベンジャミン・レセンス(FK8ホンダ・シビック・タイプR)がマシントラブルからクラッシュを喫し、レース開始早々にセーフティカー(SC)が導入されることとなった。
4周目のリスタートに集中していた2番手ベルネイは、隊列のなかで首位アズコナのクプラTCRにピタリと照準を合わせると、ホームストレートの加速でスリップストリームを活かしてシケインでクリーンにパッシング。アッセンのリベンジと言わんばかりに首位浮上に成功する。
その後方では、選手権リーダーのドゥサン・ボルコビッチ(ヒュンダイi30 N TCR)がタッシを抜いて5番手へ。しかし後続のフォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCRやスバルWRX STI TCRらの接触が引き金となり、再度のSCランとなってしまう。
再開後も首位の座をキープしたベルネイは、その後もアウディのトップスピードを生かして逃げを打つ展開となり、後続のバトルを尻目に盤石の今季2勝目をマーク。アズコナ、ファイルズが表彰台に続き、レース前の時点で選手権首位だったボルコビッチは5位に終わり、アズコナが再度のポイントリーダーに浮上。ベルネイは34ポイント差のランク3位でレース2を迎えることとなった。
日曜正午過ぎにスタートした高速モンツァ戦の第2ヒートは、予選トップ10リバースポールからスタートのフランシスコ・アブレウ(プジョー308 TCR)が首位をキープするも、後続はふたたびシケインで大混乱に。
初代TCRインターナショナル王者のステファノ・コミニ(FK8ホンダ・シビック・タイプR)らはシケインをカットした際にマシンにダメージを負いリタイアに追い込まれるなか、10番手グリッドから発進したベルネイがオープニングラップで5番手へとジャンプアップ。
2周目の1コーナーでは前を行くボルコビッチが、ポジションをキープしようと縁石をまたぎ彼のヒュンダイは大きくバウンド。この動きで後続のマキシム・ポティ(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)やシビックのレセンスらがコース外へ追いやられる事態となり、ベルネイは悠々2番手にまでポジションを回復してくる。
続く3周目に首位のプジョー308を視界にとらえたアウディRS3 LMSは、そのまま最高速を武器にオーバーテイクを決め、11周を走破して前日に続くトップチェッカー。見事に連勝を決め今季3勝目を飾り、首位アズコナに19ポイント差とするランキング2位へと浮上した。
「もちろん、選手権のギャップを縮めたいと思っていたし、僕らは最大限の仕事をしてポールポジションとふたつの勝利を手に入れ55ポイントを稼いだ。チームは最高の仕事をしたと思う」と、最終戦バルセロナを前にタイトルへのチャンスを引き寄せたベルネイ。
「我々はベストを尽くすつもりだけど、WTCRの公式テストでスペインに行った時には、僕らのアウディに競争力はなかった。もちろん、その後はマシンに数多くのセットアップ変更を施してきたし、タイヤへの理解も大きく進んだ」
「それでも、バルセロナはクプラのテストコースであり(ランク首位を行く)アズコナのホームでもある。難しいイベントになるだろうけど、最善を尽くすつもりだよ」
ベルネイに続きレース2で表彰台を獲得したKCMGの2台、2位ファイルズと3位タッシはそれぞれランキング6位、4位に浮上。一方、1コーナーシケインで縁石をジャンプし、自らもリタイアに追い込まれていたタイトルコンテンダーのボルコビッチは、このドライビングが悪質な行為とみなされモンツァのリザルトから除外に。レース1の10ポイントも剥奪となり、ランキング3位に後退している。
いよいよ決着となる旧TCR系シリーズ最高峰は、10月20~21日にスペイン・バルセロナで最終戦を迎える。