マクラーレン・レーシングのCEO、ザック・ブラウンが共同オーナーが務めるユナイテッド・オートスポーツは、2019/2020年のWEC世界耐久選手権に参戦する見通しを示している。
今季のELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズと2018年から2019年にかけて開催されるAsLMSアジアン・ル・マン・シリーズで合計4台のLMP2カー『リジェJS P217・ギブソン』を走らせるユナイテッド・オートスポーツは、2018年1月に行なわれたIMSAウェザーテック・スポーツカー・チャンピオンシップ開幕戦に、F1王者のフェルナンド・アロンソを擁してスポット参戦したことで大きな注目を集めたアメリカンチームだ。
チームを率いるブラウンは、ユナイテッド・オートスポーツがELMSでの今季初優勝を飾ったスパ・フランコルシャンにおいて、「まだ決定には至っていないが、WECでLMP2プログラムを開始することを目標にしている」と記者団に語った。
「我々はELMSというシリーズに心から好感を抱いている。この素晴らしいパドックは恒久的に見られることだろう。一方で私はELMSが世界選手権へステップアップするための場でもあると考えており、実際に踏み出したいと思っているんだ」
■ニッサンDPiでのIMSA参戦という計画は……
そんな野望を抱くチームの共同オーナー兼マネージングディレクターであるリチャード・ディーンは今年8月、リジェのLMP2カーをベースに開発された『ニッサンDPi』を用いてIMSAの最高峰クラスにフル参戦する計画があることを明かしていた。
しかし、ブラウンはこの計画は実行されない可能性が高いという。
「残念ながら(IMSA内で)DPiとLMP2がそれぞれ違う方向に向かうことになるため、アメリカで新しいチームを始動させるよりも(ほぼ同じ体制でスタートできる)WECに向かう可能性のほうが高いだろう」
「なぜなら、それが我々のチームの根底と合致するからだ。ただし、チームがIMSAのやり方に何色を示しているということはまったくなく、シリーズを愛してさえいる。できることなら3つのシリーズに同時に参戦したいくらいだ」
■勝てなければシャーシ変更も辞さない
ユナイテッド・オートスポーツは現在、イギリスにおけるオンローク・オートモーティブ製リジェLMP2、LMP3カーの公式輸入代理店を務めている。
そのことから同チームはリジェユーザーとして各シリーズを戦っているが、ブラウンはライバルに対して著しい性能差が見られた場合には異なるコンストラクターのシャシーを使用することも辞さない構えだ。
現在、フランスのオレカ、リジェ、イタリアのダラーラ、アメリカのライリー/マルチマチックという4つのコンストラクターが製造するLMP2カーは、その競争力の高さからオレカが市場の多くを占めている。これを管理するFIA国際自動車連盟は、2018年シーズン前にオレカ以外の3メーカーに対して“ジョーカー”を与え、性能が横並びになるよう調整を行なった。
ブラウンはこの動きを今後も注視していくとともに、リジェに与えられた追加のパフォーマンスに期待している。
「到底勝てないと思うメーカーとは提携しない。来年のレースに出ようとしているのは勝てると思っているからだ」
「それでも、万が一ライバルと競争できないことが分かれば、その時はシャシーを変更するだろう」