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「男性DV被害者も声を大にして助けを求めるべき」交際相手に息子を殺害された家族が切なる訴え(英)

2018年09月26日 15:22  Techinsight Japan

Techinsight Japan

交際相手の女によるDVの末に死亡した男性(画像は『Mirror 2018年9月23日付「My son was killed by his girlfriend - men must tell of domestic abuse too」(Image: Liverpool Echo)』のスクリーンショット)
DV(家庭内暴力)の被害者は女性だけとは限らないものだが、男性被害者の場合は事を公にすることを躊躇する人も少なくないと言われている。昨年5月、交際相手の女から1年にわたりDV被害を受けていたとされる男性が殺害された。交際相手の暴力について全く聞かされていなかった男性の遺族は、このほど「男性DV被害者も、1人で悩まずに誰かに打ち明けてほしい」と訴えた。『Mirror』などが伝えている。

英北西部マージーサイド州バーケンヘッドに住むポール・ラベルさん(50歳)は2017年5月27日、当時の交際相手サラ・ルイス(46歳)に割れた皿で顔を刺され、出血多量で死亡した。

ポールさんは、イギリスで人気のカップル・マッチングサイト『Plenty Of Fish(プレンティ・オブ・フィッシュ)』を通してサラに出会ったが、交際していた1年間は穏やかな関係を築いていたとは言い難かった。後にリバプール刑事法院で行われた裁判では、数回にわたり警察が通報を受けていたことが明らかになっている。しかしポールさんは、サラから受けていた度重なるDV被害の詳細を周りの誰にも打ち明けてはいなかったようだ。

事件が起こった日も、2人はポールさんのアパートで酒に酔って口論となった。サラは割れた皿の破片でポールさんの顔を刺し、出血したポールさんの手当てをすることもなくそのままアパートを去った。鼻孔を切られたポールさんは出血しながらも緊急通報をせず、なぜか顧客に「病院に行かなきゃならない」「血だらけになっている」と救いを求める電話をしたが、顧客が応答しなかったため留守番電話にメッセージを入れた。更にサラにも数回電話をしたが繋がらず、メッセージを残している。

翌日、姉の家からポールさんのアパートへ戻ったサラは、浴槽に倒れこむようにして息絶えているポールさんを発見した。ポールさんは出血多量が原因で死に至ったとされている。逮捕されたサラは、警察が自分の電話を調べる前にポールさんからの着信を削除していたことが明らかになった。裁判では判事が「計画的ではないが、故意に被害者を傷つける気持ちがあった」として過失致死罪を認めたサラに、7年半の実刑判決を下した。

ポールさんは3人の子を持つ父親でもあったが、息子ジェイクさん(20歳)は「父を失った悲しみは言葉にならない。どんなに父を必要としても、もう二度と会うことも声を聞くことも触れることも叶わないことが、どれだけ辛いことか。私にとっては父というだけでなく、友人であり良き人生の手本とすべき人物だった。そんな父を永久に失ってしまった。これからもこの悲しみが癒えることはない」と悲痛な心境を吐露した。

ポールさんの母バーバラさん(74歳)も「二度と取り戻せない大切なものを奪われた気持ちです」と、大切な息子をDVの果てに失った悲しみを露わにした。しかし悲劇から1年ほど後に、バーバラさんは前向きに生きていくためにもポールさんの弟アンドリューさんやスティーヴさん、友人らと一緒に「Paul Lavelle Faundation」というキャンペーンを立ち上げた。

「このキャンペーンでは、DV被害に遭っている男性が誰にも打ち明けずにひとりで苦しんでいる状況を少しでも減らすための注意喚起を促しています。息子は、私たち家族にはDV被害を受けていることなど一切話していませんでした。でも、もし打ち明けてくれていたら息子を救うことができたかもしれない。DVは男女両方が被害者に成り得るのです。男性にとって、声を大にして被害を訴えることは困難であるかもしれません。どこに助けを求めたらいいのかわからないこともあるでしょう。でも、誰でもいいのです。誰かに相談することが男性も大切なのですから。息子は、自分が女性に虐待されていることを認めたくなかったのではないかと私たち家族は思っています。女に虐待されているなんて恥ずべきことだと。でも、男らしくなきゃと思う必要などないのです。被害者男性は、沈黙の中でひとりで苦しまないでほしい。女性からの虐待を受けて被害に遭っている男性は一人だけではありません。このキャンペーンを行っていくうえで、もし1人でも男性DV被害者が被害を公にすることで命が救われるなら、価値があると思っています。」

またアンドリューさんは、生前の兄に会った日のことを回顧し、改めてキャンペーンの大切さを訴えている。

「亡くなる前、兄にジムで会ったんです。兄は私に相談するチャンスがあったのにそれをしませんでした。兄の脚には刺し傷があり、痣ができていました。仕事中にドライバーで傷つけてしまったんだと兄は言っていましたが、あの女が刺した傷だったことが後でわかりました。男性DV被害者の中には、やはり女性から暴行を受けていることを恥ずかしいと思っている人が大勢います。でもこのキャンペーンを始めて多くの人が連絡をくれました。私たちは一緒に解決して乗り越えていかなければなりません。」

男女関わらずDV被害者は、周りに相談したくてもできない辛さを抱えていることが多い。しかしバーバラさん家族のように身内の死という悲劇を乗り越えて、これ以上DVの犠牲者を出さないために懸命に活動している人も存在する。

このニュースを知った人からは「やっぱり男性も声を大にして被害を訴えることがどれだけ大切かというのを知ったよ。勇気がいることだけれど、永遠に苦しまなければならないような被害者が存在していいはずはないんだ」「男は表に出さないだけで、女からのDVを受けているって人は意外に多いと思う」「結果的に人の命を奪っておいて懲役がたった7年半というのは短すぎる」「被害者の男性も遺族も、本当にお気の毒。こういう事件があると死刑制度があればいいのにと思ってしまう」といった声があがっている。

画像は『Mirror 2018年9月23日付「My son was killed by his girlfriend - men must tell of domestic abuse too」(Image: Liverpool Echo)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)