9月22日に水素燃料電池レーシングカーの研究開発をサポートする“ミッションH24”の立ち上げを発表したACOフランス西部自動車クラブは同日、スパ・フランコルシャンで実施した実験開発車両『GreenGT LMPH2G』のデモンストレーションランを収めた動画をYouTubeに公開している。
ELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズ第5戦が行なわれたスパ・フランコルシャンに見慣れない白いプロトタイプカーが現れた。
車両側面にル・マン24時間のロゴマークの先頭に“H”を加えた“H24”のロゴマークを掲げるこのマシンは、2016年に燃料電池車として初めてサルト・サーキットのフルラップをマークして話題を集めた『GreenGT H2』を開発したグリーンGTとACOが共同開発している水素燃料電池レーシングカーの実験車両だ。
22日に初めて行なわれた公開デモランでは、ル・マン24時間のセーフティカードライバーを務める元F1ドライバー、ヤニック・ダルマスがコクピットに乗り込んで全長7キロあまりのスパ・フランコルシャンを数周ラップ。その途中には水素を補給するピットインのデモンストレーションも行なわれている。
水素と酸素を元に電気を作り出し、電気モーターを回して駆動力を得る水素燃料電池車は電気自動車と同様にわずかなモーター音のみで発進すると、コース上でも風切り音とモーター音、ロードノイズだけを残して疾走していく。今回はまだフルスピードを発揮するに至らなかったが、その静けさはコクピットのオンボード映像でも確認が可能だ。
■ヤニック・ダルマス「内燃機関車と燃料電池車ではフィーリングがまったく異なる」
デモラン後、GreenGT LMPH2Gのステアリングを握ったダルマスは「水素を載せて走ることに特に心配はしていなかったよ」とコメント。
「クルマは完全に制御され、多くの安全対策とチェックが行なわれているんだ」
「プロトタイプの特徴のひとつである静けさは、ピットレーンを離れる際に特に顕著に感じたよ。またフィーリングはこれまで乗ってきたクルマと明らかに違っている」
そのテストカーは、まだ開発段階の入口に立っているだけに過ぎないというダルマスは、現時点でのクルマの印象を次のように語った。
「パッケージは全体的に可能性を感じさせるものだった。まだパフォーマンスが引き出されていない、生まれたばかりのマシンだけど、とても高い可能性を秘めていると思う。そんなクルマから排出されるものが、水蒸気だけなんて驚きだよね!」
ACOが水素燃料電池クラス創設を目指す2024年のル・マン24時間では、GreenGT LMPH2Gで培われた技術を組み込んだマシンたちが活躍しているのかもしれない。その歴史の第一歩とも言える今回のデモランは一見の価値ありと言えるだろう。