WEC世界耐久選手権/ル・マン24時間を運営するACOフランス西部自動車クラブは9月22日、ベルギーのスパ・フランコルシャンにおいて“ミッションH24”と呼ばれる燃料電池カテゴリー創設に向けた開発支援プログラムの立ち上げを発表した。
既存の化石燃料に代わり水素を燃料とする“燃料電池車の研究開発のスピードアップ”を目的とするこのプログラムは、2016年に水素燃料パワートレインを用いた車両で、初めてサルト・サーキットのフルラップを成し遂げたGreenGT社とパートナーシップを結んで行なわれるもの。
ACOは2024年に計画しているル・マンでの燃料電池車クラス創設に向けて、この分野の研究を推進。トラックを走るレーシングカーからロードカーに技術をフィードバックさせ、二酸化炭素を排出しないゼロ・エミッション・モビリティの実現を目指すという。
発表の場でACOのピエール・フィヨン会長は「ゼロ・エミッションのモビリティ社会を目指している我々にとって、水素は“未来”だ」とコメント。
「高性能で環境にやさしい技術を開発することが私たちの役割である」と語った。
■水素燃料電池プロトタイプ『GreenGT LMPH2G』がデモ走行実施
発表が行われたスパ・フランコルシャンでは同日、水素燃料電池車の実験車両が公開され、ヤニック・ダルマスによるデモ走行も行なわれた。
このプロトタイプマシンは、アデスのLMP3シャシー『アデス03 LMP3』をモディファイしたもの。外観も大きく変貌を遂げている車両内部には後輪を駆動させる4基の電気モーターをはじめ、クラッチレスの1速ギアボックス、燃料電池車の心臓部となるフューエルセル、700バールに圧縮された水素を貯め込む燃料タンクといったパワートレインがリヤミッドに搭載されている。
デモランではル・マン24時間のセーフティカードライバーを務めるダルマスが、全長7.004kmのスパ・フランコルシャンを数周に渡ってラップしたほか、燃料補給のデモンストレーションも行なわれた。
この際、水素の安全性をアピールするため、補給員が耐火スーツやヘルメット、ゴーグルといった安全装備を身に着けていなかったのは、火を用いない燃料電池車の特徴のひとつと言えるだろう。
ACOは今後、定期的に“ミッションH24”の進捗を公聴会などを通じて発進するといい、10月5日にはパリ・モーターショーで『GreenGT LMPH2G』を公開する予定だ。