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NSX-GTはもう2019年観られない!? GTA坂東代表が改めて説明した国内3メーカーとクラス1の優先関係

2018年09月24日 20:41  AUTOSPORT web

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GTA坂東代表は5日に行われた定例記者会見で、クラス1の規則書とともに将来像を語った
9月16日、スポーツランドSUGOで開催されたスーパーGT第6戦SUGOのGTアソシエイションによる定例記者会見の場で、GTAの坂東正明代表は、GT500クラスとDTMドイツツーリングカー選手権との間で進められているクラス1の進捗について「粛々と進んでいる」と語ったが、今後2~3年の展望について、一部に「“2019年からホンダNSX-GTが出場できない”とする誤解がある」として改めて説明を行った。これまでのクラス1規定のいきさつ、そして今後数年の流れを、改めてまとめてみよう。

 2009年、ツインリンクもてぎでのスーパーGT最終戦にDTMの代表団が訪れ、車両規定統一に向けて動き出したのがこのクラス1規定のそもそもの始まり。関係メーカーへの説明会や、DTMを運営するITR e.VとGTAとのさまざまな交渉を経て、2012年にザ・プリンス・パークタワー東京で行われた記者会見で、車両規則統一化に向けた契約が締結された。

 すでに2012年からDTMでは共通モノコックを中心にさまざまなパーツを共通化した規定を採用し、それまで参戦していたアウディ、メルセデスベンツに加え、この規定に魅力を感じたBMWが参戦。2014年からはGT500でも、エンジンの違いこそあれ同じ規定を使ったマシンが製作され、ニッサンGT-RニスモGT500、レクサスRC F、そしてミッドシップ+ハイブリッドのホンダNSXコンセプト-GTという3車が登場した。

 2017年からは、スーパーGTでは14年規定からの改良が施された17年規定が導入され、ニッサンGT-RニスモGT500、レクサスLC500、ミッドシップのホンダNSX-GTという3車が登場。熱戦が続いている。なお、NSXコンセプト-GT、NSX-GTはモノコック等の共通パーツを使いながら、レイアウトがMRであるため、性能調整を加えられながら戦っている。

 一方DTMでは、2018年から「ファンがより多くのバトルを楽しみ、スリルを味わえるシーズン」とするべく、クラス1を先取りし、フロントフリックのカナードの縮小化、ラテラルダクト部分のパネル/カナードの廃止、リヤフェンダー後端下部のフリックの廃止などが採用された。GT500とは似た印象ながら、空力付加物がシンプルな形状となっている。

■今後2年間、スーパーGTとDTMでは何が走る?
 両シリーズは今後に向けて、6月にはDTMノリスリンク戦の会場でクラス1規定の技術規定について調印。DTMでは2019年から、GT500で使われてきた2リッター直4直噴ターボエンジンを使い、GT500でもモノコック変更となる2020年からクラス1規定が盛り込まれる。

 そんななか、すでに2017年にはドイツと日本でそれぞれ両シリーズの車両がデモランするイベントを開催してきたが、2019年には『ジョイントイベント』と称されるGT500とDTMによるレースを両国で1レースずつ開催したいと両シリーズは調整を進めている。そこで“誤解”が生じたのは、2020年にクラス1規定を盛り込んだ場合、GT500クラスにMRのホンダNSX-GTが出場できないのではないか……というものだ。

 坂東代表は、第3戦鈴鹿の際にこの流れについて説明したが、改めて今後3年の流れをシンプルにまとめると下記のようになる。

・2018年
SGT=17年規定を使用(NSX-GTは性能調整で参加可能)
DTM=18年規定を使用

・2019年
SGT=17年規定を使用(NSX-GTは性能調整で参加可能)
DTM=クラス1規定を使用
ジョイントイベント=SGT、DTM両車を性能調整で実現(NSX-GTは性能調整で参加可能)

・2020年
SGT=クラス1を盛り込んだ20年規定を使用
(NSX-GTは性能調整で参加可能。空力については3車ともSGT規定)
DTM=クラス1規定を使用
ジョイントイベント=NSX-GTについては調整中。DTMはクラス1、SGT車両は空力パーツをクラス1に合わせたものに変更して参加

 今後、2020年にクラス1規定を盛り込んだものがスーパーGTで採用された場合、ホンダが引き続きNSX-GTで参戦するのか、それとも他の2社に合わせて規定どおりのFR車両を開発するのかは、現在のところ不明だ。一部には、ホンダがすでにFRの研究をしているという噂もあるものの、まだ「2020年にはNSX-GTが出られないという話はどこにもない(坂東代表)」という状況だ。

■「3メーカーとGTAがあって初めて日本のモータースポーツを作る」
 坂東代表はこの件について、SUGOでの定例記者会見の場で「2019年のジョイントイベントは、クラス1“プラスアルファ”なので、ここにNSX-GTは参加できる。2020年には、現状『ジョイントイベントはクラス1にしよう』となっていて、調整をしている。まだ調整をしている状態で、GTAとしては、国内のレースを潰してクラス1にはならない。レクサス、ホンダ、ニッサンがあって、GTAがあって初めて日本のモータースポーツを作るということは変わりはない」と強調した。

「最終的にクラス1というものにたどり着けば、それはベスト。ただドイツ、日本とそれぞれが諸事情のなかでやっている以上、まだ相談する要素だったり、推移を見る必要がある。クラス1=スーパーGTになる日に向けてやっていくが、現行のなかでスーパーGT=クラス1にするには、今の3メーカーの状況下、それをうたうのはもう少し時間がかかる」

 坂東代表が強調するのは、現在GT500に参戦する3メーカー、そしてGTAが歩調を取りあってのスーパーGTの繁栄だ。当然ドイツ側にもメルセデスAMGの今季限りの撤退、2メーカーとなった後の今後などさまざまな懸案事項があるが、日独双方の事情を置き去りにしてクラス1を推進することはないという。

「ITR側(ドイツ側)の諸事情もあるし、クラス1だけに突っ走って、両方つぶれても困る状態。我々は我々のモータースポーツ、日本のモータースポーツを確固たる理念をもって作り上げたい。クラス1という目標に向かうのは間違いないが、それぞれの事情にも配慮しなければならない」と坂東代表。

 今後はさらに、共通パーツについての契約をGTA、ITRの双方でさらに合意を進め、ヨーロッパではITRが、アジアにおいてはGTAが知的財産権を半永久的に所有する契約を結ぶことになる。それは今季のDTM最終戦のホッケンハイムか、ITR代表のゲルハルト・ベルガーが来日して、スーパーGT最終戦もてぎで結ばれることになりそうだ。

 クラス1規定は、これまで9年間を費やし交渉が進められ続けているが、「完全に同じものを両シリーズで使い、双方のエントリーを増やす」目的から、「それぞれの地域やシリーズの特性を活かしながらコストダウンを実現し、さらに年に数度両シリーズが交流し、アジアとヨーロッパを代表するシリーズに成長する」というものに変質してきていると感じる。NSX-GTの存在は坂東代表の「3メーカーとGTAがあって初めて日本のモータースポーツを作る」という目標のなか、まだその走りを観ることができそうだ。