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のん、『ミライさん』で華麗なる復活! アイデア詰まった“LINE NEWSのドラマ”から目が離せない

2018年09月22日 11:22  リアルサウンド

リアルサウンド

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 現在日本で月間7600万人以上が利用しているコミュニケーションアプリ「LINE」内にある「LINE NEWS」で、9月8日から配信が開始されたLINE NEWS初の連続ドラマ『ミライさん』は、これまでドラマというメディアが確立してきたあらゆるスタイルのメリットをすべて汲み取った、現状における“完全体”と言い切ってもいいかもしれない。


参考:思わず笑みがこぼれるのんの表情【写真】


 改めてここ数年のドラマを取り巻く環境の変化について説明するまでもないが、プライムタイムや深夜帯など毎週決まった時間に放送される連続ドラマはParaviなどでいわゆる「見逃し配信」を行うことで、融通性を確保し現代人の生活に即した変化を遂げた。そして近年急増している定額動画配信サービスのオリジナル作品などと競合しながらも、その“リアルタイム性”が持ちうるメリットを最大限に活かしてきている。


 そんな中でこの『ミライさん』は配信ドラマでありながらも「LINE NEWS」というメディアが持つ特性を活かし、あえて毎週土曜日の20時から配信されるという“リアルタイム性”に回帰。それと同時に、配信時間帯に見逃したとしても、番組のLINE公式アカウントや公式YouTubeから、他のエピソードも含めて一気に視聴することができる融通性も備え、テレビドラマと配信ドラマのハイブリッドを実現させたといえよう。


 さらにそれだけには留まらず、普段日常的に使っている「LINE」の画面から簡単にアクセスして視聴できるという手軽さであったり、移動中やちょっとした時間に観ることができる1話10分程度の短く、シンプルな1話完結のストーリーも強みのひとつであろう。そして何より、電車や屋外などの騒音が気になる場所でも作品の世界を楽しむことができるようにと、すべてのセリフに字幕が付けられているというのも、実にありがたいアイデアだ。


 もちろんのこと、わずか10分ほどのストーリーであってもドラマに必要なストーリーとしてのおもしろさは失っていない。今よりも少しだけ先の未来を舞台に、のん演じる主人公ミライは、人間が働かなくてもいい未来を実現するためにと断固として働くのを拒み、毎日家でゲームをしているだけのニートだ。そんな彼女と家族のユニークなやりとりが、最先端のテクノロジーを駆使したアイテムとともに紡がれていくのだ。


 第1話では人間と同じように感情を持ったロボット、第2話ではどんなデザインにも変化することができる電子ペーパー。そして9月22日に配信される第3話では、脳で考えることを相手の言語に合わせて翻訳する翻訳機が登場。そういった近い未来に確実に我々の生活の中に取り入れられていくであろうテクノロジーの在り方や正しい使われ方について、決して難しい話にすることなく、より身近な題材を軸にして扱っていくSF性も充分に備えている。


 SF要素とコミカルさのバランスもさることながら、それらを強烈なインパクトで束ねあげるのは、やはり主人公ミライを演じるのんの演技。ジャージ姿の彼女は、表情の豊かさや語気の変化などとにかく自由にスマートフォンの画面の中で羽ばたいてくれる。天才的な演技力を持つと言われ続けてきた彼女の華麗なる復活に、思わず笑みがこぼれてしまうことは間違いない。


 これだけしっかりとした方向性を持つドラマに仕上がっている『ミライさん』が、全5話で終わってしまうというのは少々もったいないところではある。本作のシーズン2を期待するのはもちろんのこと、この新たな「LINE NEWSのドラマ」というメディアが今後どのような進化を見せてくれるのか目が離せなくなりそうだ。(久保田和馬)