2018年09月21日 11:22 弁護士ドットコム
国内外からの観光客を増やそうと各自治体が知恵を絞る中、観光関連に充てる財源を増やすため、「宿泊税」を創設したり、税額を増やしたりする自治体が目立っている。
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宿泊税は、地方自治体がそれぞれの自治体の魅力づけやプロモーションなどを目的として独自に設定する地方税で、法定外目的税に分類される。
各地の動向について、報道や自治体の発表資料をもとに紹介したい。
大阪府は、宿泊税の課税対象を拡大する見通しだ。
大阪府では、旅行者の受け入れ環境の整備や国内外へのプロモーションの推進などを目的として、2017年1月から府内のホテルを利用する宿泊客に対し、「宿泊料金1万円以上~1万5000円未満ならば100円、1万5000円以上~2万円未満ならば200円、2万円以上ならば300円」の宿泊税を課している。ところが、見込んでいた税収入の約7割しか得ることができなかったという(朝日新聞デジタル8月28日)。
税収不足に陥った原因は、外国人観光客の増加とともに府内の宿泊施設も増加し、宿泊単価が下がったためだ(ホテルや旅館の平均宿泊単価は約7200円)。
大阪府は宿泊税を「宿泊料金が7000円~1万5000円未満ならば100円、1万5000円以上~2万円未満ならば200円、2万円以上ならば300円」に変更した。
東京都は2002年10月に宿泊税をいち早く導入。都内のホテルまたは旅館を利用する宿泊客に対し、「宿泊料金が1泊1万円以上~1万5000円未満ならば100円、1万5000円以上ならば200円」の宿泊税を課している。
税収は20~25億円程度あるといい、東京都では「観光の振興を図る施策に要する費用」として、観光案内所の運営や電光看板の設置などに使っているという。
京都市は、2018年10月から宿泊税を導入する予定だ。市内の宿泊施設の利用者1人1泊につき「宿泊料金が2万円未満ならば200円、2万円以上5万円未満ならば500円、5万円以上ならば1000円」の宿泊税を課す。ただし、学校行事に参加する学生やその引率者は課税が免除される。宿泊料金に下限はなく、民泊なども課税対象になる。
金沢市は2019年4月から宿泊税を導入する。1人1泊につき、「宿泊料金が2万円未満ならば200円、2万円以上ならば500円」を課税し、京都市同様、民泊も宿泊税の課税対象となる。課税対象には修学旅行も含むため、支援策が検討されているという(日本経済新聞9月20日)。
北海道は、無条件に課税する制度と1万円以上の宿泊に課税する制度を検討している。前者は「1万円未満は100円、3万円以上で500円」などの案があり、見込み税収は推定41億1000万円だ。一方、後者は「1万5000円未満が100円、2万円以上で300円」などの案があるものの、税収は推定10億円にとどまるという。
沖縄県ではリーマンショックや消費税増税に伴い、宿泊税の導入が延期されてきた。しかし、国内外の観光客が増加し、観光インフラの整備が急がれることから、2021年度の新税導入を想定し、調整を進めているという。
宿泊税を導入する動きは広がりを見せているが、注意すべきポイントもある。
まずは二重課税の問題だ。既に都道府県内の市町村が宿泊税を導入した後に都道府県全体に宿泊税を導入すると、特定の市町村が二重課税の状態に陥ってしまう。
例えば、福岡県も宿泊税導入に前向きだったが、県内の宿泊施設の大半が集中する福岡市の市議会が、宿泊税を県内全体で使われることを懸念し、先に宿泊税の導入案を提出して可決されたため、両自治体の調整が必要な状況になっている。
産経新聞(9月18日)によると、福岡県と福岡市の対立が激化しており、ギクシャクした関係になってしまっているという。
また、観光への影響も軽視できない。既に観光地としてのブランドイメージが確立している自治体であれば、宿泊税に伴う観光客の減少を危惧する必要は少ないかもしれない。しかし、そうではない自治体は、観光客が減少するリスクを含めよく検討する必要があるだろう。
(弁護士ドットコムニュース)