2018年09月21日 10:22 弁護士ドットコム
世界的に同性婚の法制化が進むの対し、日本ではなかなか議論が進みません。建設的な議論をするにはどうしたら良いのでしょうか。
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東京・渋谷区のトランクホテルで9月13日にあったトークイベント「できる? できない? 同性婚」(主催:「結婚の自由をすべての人に」実行委員会)に出演した首都大学東京の木村草太教授(憲法学)は、「世論調査のやり方が大切です」と提言しました。
「単に『同性婚の賛否』を聞くのは、まるで聞かれた人に、他人の婚姻を否定する権利があるかのように思われるのでやめた方が良いと思います。また、この聞き方では、『差別を理由に反対だ』とか、『気持ち悪いから反対だ』という差別的な意見が『同性婚反対』にカウントされてしまいます」(木村教授)
木村教授は「差別を表明できないように公共の議論を進める」ことが重要だと指摘します。
「『同性婚を認めるとあなたにどんな不利益がありますか?』、『同性婚を認めることで、誰かに危害が生じますか?』、『あるなら、具体的に教えてください』と聞けば、良いのではないでしょうか。
この聞き方だと、差別的な動機での反対は表明しにくくなりますし、聞かれた人が『そういえば、同性婚を認めても、誰も困らないな』と気づきを得ることもできます。
また、本当に、同性婚を認めると、不利益が生じる人がいるというなら、その不利益を解消する手立てを示して理解を求めて行けば良いでしょう」
木村教授は「夫婦別姓も同じですよ。『別姓を認めると、あなたにどんな不利益がありますか』『誰かに危害が生じますか』と聞かなければいけません」とも話しました。
同性カップルは、異性婚のカップルと比べて、相続や税制面などで不利を抱えています。加えて、法的には家族ではないため、病院での面会を断られ、死に目にあえないといった扱いを受ける可能性もあります。
近年、パートナーシップ制度をもうける自治体が増えていますが、カバーできるのは一部だけで、しかも法的拘束力があまりありません。
タレント・エッセイストの小島慶子さんは、「同性カップルを嫌いになる自由はある。でも、自分が嫌いだから相手が法的に不利な立場に置かれてもしょうがない、というのはおかしい」と力を込めます。
「より寛容で、より選択肢を提示できる社会の方が、いろんな生きづらさを抱えている人も、『そこにいていいよ』と言われやすくなる。私が失うものはないけど、利益はある。それに尽きます」
同性愛者だからと言って、全員が同性婚を求めているわけではありません。たとえば、女装パフォーマーのブルボンヌさんも、従来の結婚という価値観にはあまり惹かれないそうです。ですが、「選択肢は多い方が良い」と言います。
「『自分はいらない。だからその法律ができなくても良い』と言っちゃう人が意外に多いのが不思議」
同性婚の法制化に向けては、賛同者を増やしていく必要もあります。ただし、ブルボンヌさんは、理詰めの説得では限界があるとも考えています。
「笑いも織り交ぜながら、分かってくれる人が増えれば…。それぞれのスタイルにあった身を寄せ合う保証が生まれていけばいいと思います」と希望を語りました。
(弁護士ドットコムニュース)