TCR規定導入2年目のシーズンを迎えているSTCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権に参戦するPWRレーシングは、第4戦カールスクーガでの車両規定違反における失格裁定に対し異議申し立てを続けており、今回TCRテクニカル・ワーキング・グループによる協議の結果、同週末すべてのリザルトが復活することとなった。
PWRレーシング・セアト・ディーラーチームとしてエントリーし、クプラ・レーシングのバックアップを受けて4台のセアト・クプラTCRを投入するPWRは、第4戦の週末で連勝を記録。
予選からトップ3を占めると、レース1ではダニエル・ハグロフ、フィリップ・モーリンがワン・ツー・フィニッシュを決め、王者ロバート・ダールグレンが5位に。
続くリバースグリッドのレース2では、ミカエラ-アーリン・コチュリンスキーが参戦2年目でシリーズ初優勝を飾り、STCCの歴史上初の女性ドライバーによる勝利を記録していた。
しかし両レースともにライバル陣営から異議の声が上がり、レース1はフォルクスワーゲン・ディーラーチーム・バウハウスとして参戦するクリストファーソン・モータースポーツ(KMS)から。レース2は大ベテランのマティアス・アンダーソン擁するホンダ・レーシング・スウェーデン(MA:GP)からの指摘で、排気管形状がホモロゲーションシート記載のものと一致しないとの理由でリザルト除外の裁定が下っていた。
この問題に関して第5戦を経て会合を開いたTCRテクニカル・ワーキング・グループのステートメントによれば、改めて精査を行った上で今季クプラとアウディのマシンが装着していたエキゾースト部品は、すべてのバリエーションに関してホモロゲーション認定を受けたものであり、クプラ・レーシングがPWRの主張を補強する声明を出していた内容をすべて認める形となった。
「2018年9月12日に開かれたTCRテクニカル・ワーキング・グループの会合に出席したTCRマニュファクチャラー各社は、問題となったバリエーション部品が“低ノイズサイレンサー”として認証された部品であることを全会一致で確認した」
「TCRシリーズの最大許容音レベルは各選手権で異なっており、各マニュファクチャラーは最小限の部品構成でその対応バリエーションを提供している。今回の部品は95dBの最大音量に対応するオプションとして承認されている」
このTCRからのステートメントを受け、PWRレーシングは改めて今週末の最終戦マントープパークに先立ち、スウェーデンのモータースポーツ連盟であるSBF(スウェディッシュ・モータースポーツ・フェデレーション)が開催する控訴審に持ち込んだ。
週が明けてSBFから発表された声明により、PWRは改めてカールスクーガのリザルトを回復することが決定した。
「SBF懲戒委員会では、ホモロゲーションに従った排気管の組み合わせに関して誤りは認められず、技術規定の書式35条、6.6項に対して使用部品の齟齬を認められなかった」
「スウェーデンで使用される最大音量95dBの規制に対し、対象部品は低ノイズサイレンサーとして認証された供給パーツであり、サーキットで使用可能な音量規制を満たしている」
「従って、競技結果に対するいかなる発言やタイムペナルティの加算も適切ではなく、これらの理由によりTCRの決定は同意され、ドライバーはレース終了時の結果に復帰しなければならない」
この結果、PWRはレース1でのハグロフの勝利と、レース2でのコチュリンスキーによるSTCCとTCRシリーズ初の快挙がともに認められることとなり、シリーズ争いでも現王者のダールグレンが167ポイントでランキング首位に復帰。7ポイント差の2位、ヨハン・クリストファーソンとの最終戦決着に臨む状況となった。
カールスクーガではレース2終了の2時間後に天国から地獄を経験した25歳のコチュリンスキーも「私は、私自身の勝利をひとときも疑ったことはなかった」と、喜びの言葉を口にした。
「私と、私たちのチームにとって、ドライビングとマシン双方のパフォーマンスこそがこのリザルトをもたらしたのだと理解していたし、それはとても明白なことだった」と、ランキング9位で最終戦に挑むことになったコチュリンスキー。
「このメッセージを受け取ったことは本当にうれしくて、我々を疑った人は、私とチーム全体がカールスクーガの双方のレースで勝利を挙げた正当な勝者であることを知るようになる。今はマントープパークでの最終戦が楽しみで仕方ないわね」