パルクフェルメに、ライダーはファンの花道を通って向かう ポルトガルのアウトードロモ・インテルナシオナル・ド・アルガルヴェで9月14~16日にかけて行われた、スーパーバイク世界選手権(SBK)第10戦ポルトガルの様子を、現地の写真とともに紹介しよう。SBKは世界選手権ながらMotoGPとは違い、ライダーとファンの距離を近くに感じられるレースだった。
SBK第10戦が開催されるアウトードロモ・インテルナシオナル・ド・アルガルヴェは、ポルトガル南部に位置するサーキット。丘陵に囲まれた土地のなかに存在し、サーキットのレイアウト自体も元々の地形を生かしたのか、高低差が非常に大きなものになっている。攻略が難しいと評するライダーも多い、一筋縄ではいかないサーキットだ。
SBKポルトガルが行われていた間、アウトードロモ・インテルナシオナル・ド・アルガルヴェ周辺の気候は終始晴れ。湿度は少なく、気温もだいたい30度前後で、日本でいえば初夏のような陽気が続いた。日差しは強いが湿度がさほどないため、暑さは感じるものの不快度は高くはない。
アウトードロモ・インテルナシオナル・ド・アルガルヴェのパドック内でまず目を引くのは、各チームのトレーラー。SBKから、併催のスーパースポーツ世界選手権(WSS)、スーパースポーツ世界選手権300、スーパーストック1000などのチームのトレーラーがずらりと並ぶ様は、まさに壮観。
このトレーラーの前に、各チームのホスピタリティが並んでいる。こちらも豪華絢爛。ライダーやスタッフ、ゲストたちはこのホスピタリティで食事をとったり、休憩したりする。ゲストと見られる人々が、昼間からアルコールを楽しむ姿もあった。
セッションが始まる前日の木曜日には、トップライダーたちも当たり前のようにパドック内を歩いている。セッションがない日とあって、ライダーたちもリラックスモード。
ライダーやスタッフのパドック内の移動に使われるバイクには、電動バイクが多く見られた。
パドック側はメインスタンド側よりもイベントやブースが充実しており、ファンの多くがパドックでのコンテンツを楽しんでいた。メインステージでは大型画面を見ながらライブでのセッション実況中継や、ライダートークショーが行われる。
ライダートークショーが終わると、トップライダーも当たり前のようにバイクや自転車でファンの間をすり抜けて自分のピットに戻っていく。途中、ライダーたちがファンにサインや写真撮影をねだられるシーンもあったが、自然なことのように気さくに応じていた。SBKは「世界を走るライダーに気軽に会える」のが魅力のひとつになっているようだった。
SBKポルトガルではパルクフェルメがパドック内に設置されている。レース後にはトップ3に入ったライダーはファンの間をぬってパルクフェルメに向かい、大勢のファンに迎えられながらパルクフェルメでのインタビューを受け、表彰台に上がる。サーキットが一体となり、最高に盛り上がる瞬間だ。レース後のライダーをファンが迎え、ライダーとともに高揚感を感じることができる。
SBKポルトガルでは、土曜日と日曜日にそれぞれピットウォークが行われた。ここでもライダーたちはとてもフレンドリーにサインや写真撮影に応じていた。
今回のSBKを盛り上げた要因のひとつが、Moto2クラス参戦中であり、2019年からMotoGPクラスへの昇格が決まっているポルトガル人ライダー、ミゲール・オリベイラの来場。オリベイラは後進の育成を目的に、自身でレースチームMiguel Oliveira Racing Teamを立ち上げ、今大会ではWSS 300にチームをエントリーさせていた。
オリベイラはインタビューからステージでのトークショー、さらにSBKの決勝レース前にはデモランを行うなど、大忙し。デモランでアウトードロモ・インテルナシオナル・ド・アルガルヴェを走行するオリベイラにファンは大いに盛り上がり、ポルトガルでのオリベイラの人気の高さを感じさせた。
今大会では元ロードレース世界選手権ライダー、ノビーこと上田昇氏も自身のチームであるH43 Team NOBBY DENSONをWSSにスポット参戦させていた。
こちらはワイルドカードとしてWSSに参戦した日本人ライダー、2017年ピレリカップ600チャレンジシリーズチャンピオンである長尾健吾と、今季イタリアラウンド限りでWSSから引退したケナン・ソフォーグル。長尾は今回、ソフォーグルが所属していたカワサキ・プセッティ・レーシングから参戦した。
カワサキ・プセッティ・レーシングからWSSにフル参戦中の日本人ライダー、大久保光。WSS参戦3年目の大久保はパドックで顔も広く、随所で様々なチームスタッフたちとも雑談を交わしていた。
ちなみに、ポルトガルで有名な料理はカタプラーナ。トマトソースにエビやカニなどの魚介がたっぷり入りダシが染みていて、絶品だ。ポルトガル料理は日本人でも違和感なく食べることができると感じたので、ぜひ機会があれば試してみてほしい。
市販車をベースにしたロードレースとして最高峰のSBKは、MotoGPとはまた違った楽しみ方ができるレースだった。レースはもちろん、イベントやライダーとの交流を気軽に堪能できる世界選手権と言えそうだ。