2018年09月20日 10:02 弁護士ドットコム
結婚したばかりの夫が、ご祝儀や妻の貯蓄など約100万円を「勝手にデリヘル(デリバリーヘルス)に使い込んでいました」という相談が、新妻から弁護士ドットコムに寄せられました。
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入籍から3カ月、結婚式を挙げてから1カ月も経たないそうです。ところがこの間に相手は「ご祝儀を30万、新婚旅行代40万以上、私の貯金25万」をデリヘルにつぎ込んでいました。夫に問いただすと「使いたいから使った」と反省の色はありません。
そこで、女性は「法的処置を検討中」だといいます。離婚も視野に入れていますが、離婚の際に夫から使い込んだお金は返してもらうことはできるのでしょうか。
それとも、ご祝儀などは婚姻中に協力して得た「共有財産」とみなされ、返してもらえないのでしょうか。男女問題に詳しい長瀬佑志弁護士に聞きました。
もし離婚する場合には、夫婦の財産はどう分けるのでしょうか。
「夫婦の財産は、共有財産と特有財産に分類され(民法762条)、離婚する際には、夫婦の共有財産は財産分与手続により精算することになります(民法768条)」
今回夫が使い込んだご祝儀、2人で貯めた新婚旅行代はどちらに該当するのでしょうか。
「ご祝儀は、結婚する夫婦へ送られるものです。夫婦の生活にあてられるものといえることから、共有財産に該当することになるでしょう。新婚旅行代は、ご夫婦で貯蓄したものであれば、夫婦の共有財産に該当すると評価できます」
女性が独身時代に貯めた貯金については、どうでしょうか。
「女性の貯金は、特有財産に該当します。特有財産は共有財産とは違って、財産分与の対象とはなりません」
今回、夫は共有財産であるはずのご祝儀と新婚旅行代をデリヘルに使っています。本来は共有財産であるものを勝手に使われてしまった場合には、返金を諦めるしかないのでしょうか。
「夫が散財したご祝儀、新婚旅行代分については、共有財産に持ち戻した上で、離婚時の財産分与を請求することが考えられます(東京高判平成7年4月27日参照)。
また、夫が散財したお金の内、特有財産に該当する女性の貯金分については、不当利得として返金するよう請求することが考えられますが(東京地判平成21年11月9日参照)、実際には財産分与の手続で一緒に判断されることが多い傾向にあります」
慰謝料としてもらうことは可能でしょうか。
「はい。夫の散財に対し、いわゆる『慰謝料的財産分与』として主張することや、離婚の原因が夫の散財にあるとして、離婚に伴う慰謝料を主張することも考えられます(東京地判平成16年2月20日参照)」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
長瀬 佑志(ながせ・ゆうし)弁護士
弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。多数の企業の顧問に就任し、会社法関係、法人設立、労働問題、債権回収等、企業法務案件を担当するほか、交通事故、離婚問題等の個人法務を扱っている。
著書「若手弁護士のための初動対応の実務」(単著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践している ビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)、『弁護士経営ノート 法律事務所のための報酬獲得力の強化書』(共著)ほか
事務所名:弁護士法人長瀬総合法律事務所水戸支所
事務所URL:https://nagasesogo.com