FIA-F4選手権の第5大会がスポーツランドSUGOで開催され、他を圧するタイムでWポールポジションを、ポイントリーダーの角田裕毅(HFDP/SRS/コチラレーシング)が獲得。決勝では角田が第10戦を制し今季6勝目を挙げたものの、第9戦は名取鉄平(HFDP/SRS/コチラレーシング)が逆転で2勝目をマークした。
富士スピードウェイでの第4大会では一度も勝てず、失意の中にいた角田だったが、SUGOに舞台が移ると木曜日、金曜日に行われた専有走行では、すべてトップタイムをマークして完全に復調ムード。
専有走行の締めとなる最終セッションでは、チームメイトの名取が続いていた一方で、富士で連勝を飾っていた小高一斗(FTRSスカラシップF4)は、原因不明の不振に悩んでいた。
小高に代わって躍進を遂げていたのが、ルーキーの小倉翔太(DENSOルボーセJSS F4)と川合孝汰(DENSOルボーセF4)のふたり。絶えず上位につけて、最終セッションでは3番手、4番手を記録する。
そういったムードに、土曜日の早朝に行われた予選でも少しの変化はなかった。そればかりか、角田はベストタイム、セカンドベストタイムともにひとり1分24秒を切って、Wポールを獲得する。2戦ともに名取が2番手で、川合が3番手ながら、コンマ5秒近く引き離してもいたから、どれだけ乗れていたか容易に理解してもらえるはずだ。
「昨日の最後は、路面ができ上がるのを待って前半、走らなかったんですが、そうしたら思った以上に温度が上がってしまって。それで差を詰められてしまいましたが、普通に走っていたら、今日と同じぐらいの差をつけられたと思います。前回の富士は悔しかったけど、自分で流れを取り戻すことができました」と角田は力強く語る。
もうひとり注目のドライバー、小倉は第9戦で4番手。しかし、第10戦はひとつポジションを落とし、澤田真治(MediaDo ADVICS影山F110)とグリッドを入れ替えることに。そして、小高は2戦とも6番手からのスタートとなった。
予選の終了から間もなく降り始めた雨は、決勝レース第9戦を前にして、すでにやんではいたものの路面は濡れたまま。気温も低めで無風状態、グリッドに並べられた時には全車ウェットタイヤが装着されていた。
しかし、通常よりスタート進行が長かったことで、予想より路面の乾きが早かったことから、ひとりドライタイヤを装着していたのが、10番グリッドにつけていた佐藤蓮(SRS/コチラレーシング)だった。そして、そのグリッドに澤田の姿はなく、クラッシュを喫したことからピットスタートを強いられていた。
グリッド上位陣はそれぞれスタートを決めて、小高が澤田の抜けた穴を埋める形で、順位を上げた以外の変動はなし。そして、2周目には早くもトップ争いは角田、名取、川合の三つどもえに転じていく。
ただここで少し意外だったのは、角田がふたりを引き離せなかったこと。これは「雨がまた降ると予想し、内圧を高めにしていたため」と角田。それでも、しっかりガードを固めて逆転を許さずにいた、そんな矢先に現れたバックマーカーが、わずか5周目の2コーナーでスピン! とっさの判断でアウト側から回避した角田だったがコースをはみ出し、逆にインから行った角田に前に出られてしまう。
そして、先の内圧調整の失敗からペースの上がらない、角田は6周目のヘアピンで川合の逆転を許し、その間に名取は逃げの構えに入ることになる。その一方で、いよいよドライタイヤを装着していた佐藤のラップタイムが、名取らを上回り始めるように。
■ドライタイヤ履く佐藤が12番手から圧巻の追い抜きでトップチェッカーも無念の結末
いったんは12番手にまで退いていたものの、逆に言えば、そこで踏み留まっていたから、挽回も早い。9周目には小高、小倉を相次いでかわし、10周目には角田をも抜いて3番手に浮上。11周目には川合も、そして12周目に名取からトップを奪い取ると、チェッカーまで実に20秒もの大差をつけた。
しかし、佐藤はレース終盤、イエローフラッグが出されていた区間でバックマーカーをオーバーテイクしたとしてタイム加算ペナルティで首位から陥落。10位フィニッシュに終わった。
佐藤は「タイヤ選択は自分の判断。3周ぐらいで(ドライタイヤの方が)来たのを感じ、狙いどおりになったと思いました、最後の最後まで(苦笑)。残念ですけど、自信になりました」と胸を張って言った。
繰り上がって優勝したは名取で、開幕戦以来の2勝目を挙げ、2位の川合は初優勝を飾った、一昨年の第6戦代替レース以来の表彰台へ。3位の角田に、小倉が続いて自身の最上位を得ることとなった。
「最初、トップに立った時は、前で回っているクルマのイン側に行ったのが良かったですね。角田選手より距離があったので、ちょっとだけ考える余裕があったというか。そのまま逃げたかったんですが、最終コーナーで黄旗が出て、なぜかしょっちゅう現れるバックマーカーをうまく抜けなくて、自分としてはうまく走れなかった。アクセル踏めないから後ろが近づいてきて、最後まで気の抜けないレースでした。ただ、(佐藤に抜かれて)普通に2位だと思っていたので、びっくりしました。今日はとにかく運が良かったです」と名取。
日曜日には秋晴れとなって、決勝レース第10戦はドライコンディションでの戦いとなった。予選はちょうど半ばで赤旗が出て、タイムを出していたことから、再開後に角田は走行せず、タイヤを温存していた効果が、早くも1周目のうちに表れた。スタートを決めて1コーナーで名取以下を従えると、そこから先はコーナーをひとつクリアするたび明らかな差がついて、グランドスタンド前に戻ってきた時には、もう2秒もの差をつけていたからだ。
一方、再び名取と激しいバトルを繰り広げるかと思われた川合だったが、「ある1か所のコーナーだけ違和感があって、自分の走りでアジャストできなかった」ため、徐々に引き離されていって中盤からは単独走行に。
その後方では澤田と小倉、小高による4番手争いが繰り広げられ、特に小高が激しく小倉に迫るも、ルーキーらしからぬ固いガードで逆転を許さず。結局、そのままの順位でフィニッシュとなった。
そして、角田はポール・トゥ・ウィンを達成。これで今季6勝目をマークした。「朝早くからのレースですから、応援してくれた皆さんの目が覚める走りができたかわかりませんが、そのぐらいの走りができたので、本当に良かったです。普通にレースができれば、離せる自信はありました。富士や昨日の分は、しっかり取り返せましたし、次のオートポリスではまた連勝したいので、しっかりと準備をしていきたいと思っています」と角田。
次戦FIA-F4、第11~12戦は10月20~21日、オートポリスで行われる。