2018年09月19日 16:52 弁護士ドットコム
お盆も過ぎ、まもなくお彼岸を迎えようとしています。家族や親戚が集まる機会には、相続について話す方も多いのではないでしょうか。
【関連記事:「パパ活女子」が税務署に徹底的にしぼられる日…「太いパパ」への調査からバレることも】
2015年の税制改正で相続税の課税対象が拡大されて以降、「生前贈与」を活用した相続税対策に関心が集まっています。生前贈与とは亡くなる前に財産を贈与することですが、方法によっては相続税の代わりに「贈与税」が発生します。
贈与税とは、その年の1月1日から12月31日の間で譲り受けた財産の合計が「基礎控除額=110万円」を超えるときに発生する税金です。つまり、1年間で贈与された財産が合計110万円以下であれば贈与税は課されず、この制度を「暦年課税」といいます。
生前贈与は主に2つの方法があります。
1つめは「暦年課税」を利用した方法です。これは、年間110万円までは課税されないという制度を活かし、毎年110万円以下で何年かに渡って贈与をするというもので、将来発生する相続税負担を軽減することができます。また、相続人が限定されないため、だれにでも贈与できるというメリットもあります。ただし相続が始まった時点から、遡って3年以内に相続又は遺贈により財産を取得した者に対して行われた贈与は相続税の課税対象となります。
対して、贈与する金額が大きく、相続人の贈与税納付が難しいと想定される場合、2つめとして「相続時精算課税制度」を利用した方法があります。
「相続時精算課税制度」とは、一定の要件を満たした場合、贈与税が累計2,500万円まで課税されない制度です。しかし、贈与した方が亡くなった際には遺産と合算し、相続税が計算されることになります。つまり実質的には、「相続税の支払い時期はそのままに、相続財産を生前に授与する」制度です。
2015年1月1日に行われた大幅な税制改正では、贈与者(贈与する側)が60歳以上の祖父母にまで適用範囲が拡大し、受贈者(贈与を受ける側)についても、20歳以上の孫が追加されました。これにより、この制度がより利用しやすくなりました。
ただし、この「相続時精算課税制度」を選択すると、その後同じ贈与者からの贈与については同制度が強制適用されるため、「暦年課税」制度は今後選択できないという点がデメリットであるといえます。
また、贈与の合計額が2,500万円を超えた場合には、超過金額に対し20%の贈与税が課せられます。仮に合計4,000万円の贈与を受けたとすると「 (4,000万円 - 2,500万円 = 1,500万円 )× 20% = 300万円」の贈与税が発生します。ただし、相続時にはその分が相続税から控除されます。
「相続時精算課税制度」を利用すると、相続発生時に、贈与された財産と相続財産を合算した金額で相続税を計算しますが、そもそも相続税が発生しない場合もあります。
というのも、相続税には「3,000万円 +(法定相続人の数 × 600万円 )」の基礎控除が設けられているため、相続財産がこの金額以下の場合は相続税を負担する必要がありません。
将来的に相続財産が控除内に収まる方や、相続税の心配が少ない方が年間110万円を超える生前贈与を行いたい場合には、この「相続時精算課税制度」の利用を検討するとよいかもしれません。また、値上がりが予想される財産や賃貸物件などの収益性のある財産を相続時精算課税による贈与により移転することで、将来の相続税の負担を軽減することができる場合があります。
【監修】
古尾谷 裕昭(ふるおや・ひろあき)税理士
東京都下町の浅草出身。会計事務所・コンサル会社を経て2006年に古尾谷会計事務所(後に税理士法人FIS)設立。「親切・丁寧・迅速」をモットーとしてわかりやすい会計サービスを提供するほか、マーケティングや経営全般についてのサポートを行う。その後2012年にベンチャーサポート税理士法人と合併し、その後、相続税業務を専門とするベンチャーサポート相続税理士法人の代表に就任。グループ法人内に税理士・司法書士・行政書士・弁護士・社会保険労務士が全て在籍しており、あらゆる相続に関する疑問や相談に対応をしている。
事務所名 : ベンチャーサポート相続税理士法人
事務所URL: https://support-sozoku.com/
(弁護士ドットコムニュース)