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樹木希林さん死去に黒木華、松岡茉優らが追悼コメント 是枝裕和監督「神々しくさえありました」

2018年09月19日 12:22  リアルサウンド

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 数々の映画やドラマなどで人間味あふれる役を演じてきた女優・樹木希林さんが、9月15日に亡くなった。75歳だった。2005年に乳がんの手術を受け、2013年の日本アカデミー賞最優秀主演女優賞のスピーチでは全身がんであることを公表していたが、今年のカンヌ国際映画祭で最高賞であるパルドールを受賞した『万引き家族』での演技も記憶に新しく、10月13日公開の映画『日日是好日』にも出演するなど精力的に活動し続けていた。


 参考:『万引き家族』は、なぜカンヌ最高賞を受賞したのか? 誇り高い“内部告発”を見逃してはならない


 『日日是好日』の大森立嗣監督は、「撮影しながら希林さんのことが大好きになっていきました。大事なことをひょうひょうと語る姿が目に浮かびます。出会えたことは僕の財産です」と追悼の意を示した。同作で、樹木さん演じる茶道教室の先生に教わる生徒という役で樹木さんと初共演した黒木華は「希林さんとお仕事をご一緒できたことはとても光栄でしたし、かけがえのない時間でした。もっと、もっと、お話ししたかったです」とコメントし、同じく共演者である多部未華子も「寒い撮影の中、樹木さんの控室にお邪魔して、2人で膝掛けを分け合いながらお話ししたこと、忘れません」と撮影の思い出を振り返った。


 『万引き家族』『海よりもまだ深く』『歩いても、歩いても』『海街diary』と、多くの作品で樹木さんを起用してきた是枝裕和監督は、今年3月にがんが骨に転移していることを知らされていたという。「ご一緒した映画祭や公開初日の舞台あいさつでは、ご自身の中に残ったエネルギーと冷静に向き合い、コントロールされながら、それでも役者の仕事を全うされようとしているその姿勢に頭が下がりました。身体が弱ってからもどこかその、初めての体験を面白がっているようなところがあり、凄みと軽やかさの同居した姿は、神々しくさえありました。最期の瞬間まで、本当に見事な、いかにも希林さんらしい人生の締めくくり方をされたと思います」と樹木さんへの敬意を自身の述べた。


 また、『万引き家族』で樹木さんの孫役を演じた松岡茉優は「樹木さんが教えてくれたこと、残してくれたものを最大限に生かしたい。同じ時代に生まれたことを、大きな意味で捉えていきたいです。暖かくて風通しがよくて、過ごしやすいところでお休みになられていますように。大好きです」と追悼し、『海よりもまだ深く』『歩いても、歩いても』で二度、樹木さんと親子役を演じた阿部寛は「本当に逝ってしまうとは思ってもいませんでした。まだまだあの毒舌で元気な姿を皆さんに見せてくれると思ってた・・・。二度の親子を演じさせていただいたことは、僕の一生の宝です」と無念をにじませた。


 樹木さんが主演を務め、初めてカンヌ国際映画祭に参加した映画『あん』の河瀬直美監督は、「樹木希林さんは、監督の伝えたいことを瞬時に理解し、具現化できる真の俳優でした。最後まで女優を演じ続ける姿勢。その潔さと儚さを、今、かみしめています」とコメントし、「今年に入って希林さんの事を想う時間が増えて、何度か電話をして直接お話をしました。具合が良くないことがニュースで知らされても、どこまでも元気で毒舌で、変わらない希林さんがそこにいました。希林さんはそうして私たちの前から弱ってゆく自分の肉体を想像できなくさせ、いつまでもあの元気な笑顔のままで私たちの中に永遠を創り上げたかったのだと、悟りました。あなたは、最期まで女優でした」と樹木さんを回想した。


 樹木さんは、18歳の時に文学座付属演劇研究所に入り、「悠木千帆」の名義で女優活動をスタート。1964年のテレビドラマ『七人の孫』(TBS系)のレギュラー出演において一躍人気を獲得した。文学座を退団した後も『時間ですよ』『寺内貫太郎一家』『ムー』『ムー一族』(全てTBS系)といったコメディドラマで存在感を発揮し、お茶の間にもその名前は浸透した。


 1977年に番組のオークションコーナーで、自身の名義であった「悠木千帆」をオークションにかけ、自らを「樹木希林」と改名後も女優として活躍。また、『ムー』『ムー一族』で共演した郷ひろみとのデュエットで、「林檎殺人事件」といったヒット曲も出した。


 近年では、映画を中心に活動し、『東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~』『わが母の記』で、主人公の母親役として日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。『歩いても 歩いても』『悪人』では日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞するなど、演技派女優としての地位を確固たるものとした。また、『あん』や『万引き家族』では、カンヌ国際映画祭に参加するなど海外でも出演作品は評価された。数多くの作品で名演を残してきた女優の不在を惜しまずにはいられない。 (リアルサウンド編集部)