F1レースディレクターのチャーリー・ホワイティングは、シンガポールGP決勝終了後、優勝したルイス・ハミルトンに謝らなければいけないと考えていた。レース終盤にかけて周回遅れドライバーのひとりが取ったお粗末な動きに、ハミルトンが影響を受けてしまったためだ。
ハミルトンは土曜日の予選で見せた素晴らしいパフォーマンスをレースでも継続し、圧倒的な勝利につなげた。しかしその決勝では、勝利が危うくなりかけた瞬間があった。
ハミルトンはレッドブルのマックス・フェルスタッペンに対し、5秒以上の差をつけて走行していた。しかし彼らトップ集団が周回遅れとなっていたセルゲイ・シロトキンとロマン・グロージャンに追いついたとき、この差は突如として、ほぼゼロとなってしまったのだ。
ホワイティングの不興を買ったのはグロージャンの走りだ。複数のコーナーで提示されていたブルーフラッグを無視し続けるという尋常ではない行動をとったことにより、スチュワードから5秒のペナルティを科されている。
グロージャンについてホワイティングが問題視したのは、ブルーフラッグにすぐに従おうとしなかった点だ。
「もし別の誰かと競り合っていても、自分が追い付かれたときには一旦忘れて後続車に道を譲らなければいけない。このブルーフラッグの行動規範を、ロマンは忘れてしまったようだ」と、ホワイティングはレース後の記者会見で語っている。
「このことはドライバーたちに繰り返し教え込んできたつもりなのだが、ロマンは完全に忘れていたようだ。電光板は彼のカーナンバーとともに点滅していたうえに、ルイスの方が圧倒的に速かった」
「ブルーフラッグ無視のケースとしては、これまで目にしたこともないような最悪の部類だ」
グロージャンに対しては5秒のペナルティの他、自身のスーパーライセンスに2点のペナルティポイントが加えられた。これで過去12カ月間での累計ペナルティポイントは9となり、出走停止となる累計12ポイントにかなり近づいてしまったことになる。
優勝したハミルトンは、一連の流れはぞっとする時間だったとしつつ、ブルーフラッグを認識することの難しさについても以下のように語った。
「レース終盤にかけてはバックマーカーの影響もあり、間違いなく面白い展開になっていた。5、6秒ほどの距離があっても、すでに前方からの気流を感じるようになり、マシンは少しずつ横滑りを始める」とハミルトン。
「そういうときのブルーフラッグは見づらい。濃い青色だし、(フェンスに)設けられた穴はすごく小さくて、かなり近づかないと見えにくい。出ていたとしても、多くのドライバーが反応しなかったりもする」
「あのときマックスにはチャンスがあった。僕は必死で自分のポジションを守りながらバックマーカーたちと競っていたんた。僕がすぐ近くにいても、彼らはアクセルを緩めなかったよ」
「あのときは一瞬ぞっとした。でもそれからまた、自分のやるべきことに集中したんだ」