トップへ

己龍、BugLug、RoyzらV系シーン担うバンドが集結 レーベル合同ツアー『シバきあい!!』の意義

2018年09月18日 14:02  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

 2018年8月26日、Zepp Tokyoにて『シバきあい!!』ツアーファイナル公演が開催された。


 『シバきあい!!』は、己龍、Royz、コドモドラゴンが所属する<B.P.RECORDS>(以下BPR)、DOG inTheパラレルワールドオーケストラ、BugLug、Blu-BiLLioNが所属する<Resistar Records>(以下RR)、2つのレーベルが合同で行った全国ツアーだ。若手ヴィジュアル系の中でも人気のバンドが揃っている公演とあって、会場には多くのファンが集まった。


(関連:『シバきあい!!』ライブ写真


 トップバッターとして登場したのは<BPR>所属の若手バンド・コドモドラゴン。暗転と共に沸き上がったファンの強い声援を受け、メンバーが登場。「RIGHT EVIL」から始まり、ヘヴィで毒の効いた最新シングル曲「棘」を含め、勢いのあるステージを展開した。ハヤト(Vo)はオーディエンスに対し、「もう二度と会えなくてもいい! 今日会えたから!」と放ちつつも、ラストの「HEMLOCK」に入る際「ヴィジュアル系はこんなもんじゃねぇー!」と、シーンへの愛を叫んだ。


 2番手は<RR>所属の中での若手にあたるBlu-BiLLioN。「S.O.S.」「Miss Mermaid」といったダンサブルな楽曲を中心に会場を盛り上げた。中盤のMCではミケ(Vo)が「Blu-BiLLioNの物販で青いペンライトを買ったのに、ペンライトを使う曲をライブでやってくれなかった」というクレームを受けた話を披露。それを受け、このあとペンライトをつけっぱなしにしていていいということ、また、Blu-BiLLioNのグッズに限らず、己龍のグッズである扇子や、RoyzのグッズであるRoyzスティック(=ペンライト)など、持っているものはなんでも使ってほしいと告げ、フロアを華やかに演出した。


 このまま交互に各レーベルからバンドが登場するかと思いきや、3番手は<RR>所属のBugLugが登場。これまで地方公演も含め、出演順はレーベル交互であっただけあって、この変化は不思議に思ったが、のちにその理由が明かされることとなる。


 転換中にLUNA SEAの「ROSIER」を演奏したBugLugは、「Ms.アリゲイター」「SHISHIMAI」など、バラエティに富んだ楽曲をたて続けに披露した。そして終盤、一聖(Vo)は「みんな、好きなバンドを追いかけて。そしたら見えるものが、あると思うから」と優しくオーディエンスに声をかけ、ラストの曲「JUGEMU」へとつなげた。


 4番手は<BPR>所属のRoyz。ミステリアスで妖艶な雰囲気漂う最新曲「DOLL」で幕を開けたステージは、続く「JOKER」でさらなる盛り上がりをみせた。MCでは昴(Vo)が、Blu-BiLLioN・ミケのペンライトについてのMCに対し「あれは俺が地方公演で言ってきたことだ! 今日はBlu-BiLLioNが先に出たから、先に言われた!」と冗談交じりに暴露。2人の仲がこのツアーで深まったことが垣間見える瞬間であった。Blu-BiLLioNに同じく、持っているものはなんでも使っていいとアナウンスがされ、ライトや扇子がフロアに再び溢れると、ラストの「ANTITHESIS」まで駆け抜けるステージとなった。


 その後、この日出演した<RR>所属の中で最もバンド歴の長いDOG inTheパラレルワールドオーケストラのステージが始まるかと思いきや、幕があがると大勢の人影が。なんと各バンドから選抜されたメンバーと共に登場したのだ。レーベルを超えて信頼関係が築けた証といえよう。希望に満ちた「JOY TO THE WORLD」から狂気的な「DOUBLE SUICIDE」まで幅広い楽曲を披露するなか、MCでは春(Vo)が「今日、どういう順番だか分かる?」と問いかける場面があった。「結成して、活動してきた順だよ」と種明かしされ、このイベントがお互いのバンドをリスペクトし合って成り立っていることが実感できる瞬間となった。ステージは最新曲「バイバイ。」で締めくくられた。


 大トリを務めたのは<BPR>所属の己龍。武道館ワンマンライブを2度も成し遂げた、若手ヴィジュアル系バンドの中の代表格といえる存在だ。登場を待ちわびたオーディエンスの声はこの日一番の轟きをみせた。ライブ定番曲である「天照」や最新曲「無垢」など、オーディエンスを休ませない激しいセットリストでライブを展開。ラストには出演者全員がステージ上に現れ、己龍の「心中歌」を演奏した。バンドやレーベル関係なく、ステージには笑い合う者、からかい合う者、その様子を眺める者、それぞれがその場を楽しむ自由な空間に。最後にはオーディエンスをバックに記念写真が撮影され、和やかなムードでイベントは幕を閉じた。全体として、どのバンドもワンマンを終えたかのような清々しさでステージを後にしたのが印象的なイベントであった。


 このツアーは先にも述べたように、若手ヴィジュアル系バンドの中でも人気のあるバンド揃いだ。会場となったZepp Tokyoでも、それぞれのバンドがワンマン公演を行うことは無理な話ではない。では、なぜこのような合同ツアーが行われたのか。


 その理由の一つとして、まずZepp規模の会場でのライブ経験を積むためと考えられる。Zepp規模のワンマン公演が可能なバンドの集まりとはいえ、そのようなワンマンはツアーファイナルなど、年に1度あるかないか、という頻度なのが現状だ。特に地方ではキャパ300~500人ほどのライブハウスでワンマンが行われることが多いため、どうしても大きめの会場でのライブ経験値が溜まりにくい。そのような状況を打破するために、地方も含め1000人規模の会場でのツアーを敢行したのではないだろうか。


 もうひとつ考えられる理由として、新たなファンの獲得が考えられる。この目的自体は他のイベントと大差ないが、同ツアーの特徴としてあげられるのは「あくまで目当てのバンドのファンのまま、その他のバンドも好きになってもらう」というスタンスであったことだ。


 Blu-BiLLioNやRoyzは、オーディエンスが持つ扇子やライトを自分達のバンドのグッズではないにも関わらずライブ中に使うことを推奨した。BugLugの一聖はMCで「自分の好きなバンドを追いかけろ」と明言した。DOG inTheパラレルワールドオーケストラでは、各バンドから応援メンバーが幕開けに花を添えた。彼らにとって、ファンは“奪い合う”ものではないのだ。


 ヴィジュアル系バンドは、試行錯誤しながらシーンを盛り上げようと日々切磋琢磨している。今後もこのような公演が行なわれる限り、その未来はきっと明るいはずだ。(白乃神奈)