2018年09月18日 10:32 弁護士ドットコム
都会で園庭のない保育園が増え、公園の「争奪戦」が起きている。多くの園が午前中に外遊びの時間があるため、小さな公園に複数の園から子どもが集まり、のびのびと自由に遊ばせることができないというのだ。
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区内の8割が住宅街だという東京都目黒区も、この都会ならではの問題に頭を悩ませている。
そこで同区は今年11月から、園庭のない保育園に通う子どもたちを広い公園に連れて行く、幼児専用(3歳児以上)のバス1台を試験的に運行する。行政側が用意したバスを複数の保育園で共有して使う取り組みは全国でも初めてだという。
さらに、クラウドファンディング型のふるさと納税でも寄付を受け付け、さらなるバスの増台を目指している。同区の担当者は「地域で子どもを育てることに協力しようという機運が高まって欲しい」と事業への賛同を呼びかけている。
目黒区の私立認可保育園35園中、8割にあたる28園に園庭がない。子どもたちが遊ぶ園庭(屋外遊技場)の設置は、児童福祉施設最低基準で義務付けられているが、日常的に使用できる距離にある近くの公園などを代わりとすれば、園庭がなくてもよいとされている。
今年4月時点で330人の待機児童を抱える同区では、認可保育所の新設が相次いでいる。しかし、同区は地価が高いだけでなく、住宅街が多く広々とした土地もない。昔からある公立の保育園はともかく、私立だと園庭まで用意するのはなかなか難しいというのが実情のようだ。
2017年4月に新設された私立認可保育園の「中目黒ちとせ保育園」も、目黒区総合庁舎の駐車場の一角にある。幹線道路に面した3階建の園内には、水遊びできるほどのスペースしかなく、子どもたちはすぐ近くにある公園を使用して遊んでいる。
「毎年、新設園が増える中で、安全に走りまわることの出来る公園の数も少ない」「近隣公園のみでは遊びも限られてしまったり、他園とのバッティングもある」。バス導入に際して区が認可保育園と3歳児以上の園児を受け入れる認証保育施設計43園にアンケートを行ったところ、各園からは苦労の声が集まった。
加えて子育て支援部の吉田武広課長は「目黒区は区の周辺部に大きな公園があるんです」と同区ならではの事情を打ち明ける。
都立駒沢オリンピック公園や都立林試の森公園など、大きな公園は他の区との境目にしかない。子どもたちの足で向かうと、園によっては公園まで30~45分かかってしまう。とても日常的に歩いて連れて行ける距離ではない。
新たに公園を作るのも難しい中、既存の公園をどう活用できるかーー。そこで区が考え付いたのが、バスによる送り迎えというわけだ。園独自でバスを運行する区内のビル型保育園にヒントを得た。子どもたちは10分程度で移動し、広い公園でのびのびと遊ぶことができる。
前述のアンケートでは43園中約6割に当たる26園がバスの活用を希望しており、「とてもありがたい」と期待する声も集まっているという。
バスは「広い遊び場(広場)」と「バス」を組み合わせ、「ヒーローバス」と名付けた。運転士を含む大人4人、保育園児18人が乗車できるワンボックスカー。1台運行するのに、年間約1千万円がかかる見込みだ。
クラウドファンディング型のふるさと納税は、単なる寄付金ではなく、自治体が立ち上げたプロジェクトに対して、賛同する人の寄付を受け付けるもの。「ヒーローバス」運行プロジェクトの目標金額は、今年度末までに1千万円。返礼品はないが、9月18日現在で約130万円が集まっている。
吉田課長は「都会ならではの悩みかもしれませんが、このふるさと納税が子育てをしている方に勇気がわくような形になればといいなと思っています」と思いを語った。
(弁護士ドットコムニュース)