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【詳報】インディカー最終戦:ハンター-レイが最終戦を制す。ホンダ同士の王者争いはディクソンに軍配

2018年09月17日 17:11  AUTOSPORT web

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家族と一緒にチャンピオントロフィーを掲げるスコット・ディクソン
ソノマ・レースウェイで開催された2081年のインディカー・シリーズ最終戦。16日に行われた決勝レース、ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)がポール・トゥ・ウインで制した。注目のチャンピオン争いは、ランキングトップのスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)が2位でフィニッシュし、5度目のタイトルを獲得した。

 チャンピオンの可能性を持って最終戦ソノマに臨んだのは、スコット・ディクソン、アレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)、ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)、ジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)の4人。しかし、パワーとニューガーデンは87ポイント差とほとんど可能性が無いというのが実情。ディクソン対ロッシ、新旧のホンダドライバーによるタイトル争いとなっていた。

 予選でポールポジションを獲得したのは、ロッシの先輩チームメイトでソノマ優勝に情熱をたぎらせているライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)だった。

 予選2番手はポイントリーダーで5度目のタイトルを狙うディクソン。これに対してランキング2位のロッシは、予選ファイナルにキッチリ進んだものの、その中では最下位の6番手となった。


 今回が初レースのルーキー、パトリシオ・オワード(ハーディング・レーシング)にさえ先行されたのは、ロッシがファイナルステージでブラックタイヤでの連続アタックに活路を見出そうとし、それが失敗したからだった。

 レースでレッドタイヤをフル活用するために、ユーズドレッドのラップ数もできる限り少なくしておきたいという作戦かとも見えたが、それは深読みで、ブラックでポールを獲るというミラクルが彼らの狙いだったようだ。

「今週の僕らはどうやってもライアンにはかなわないから……」というのが奇策に打って出た理由だったようで、チームメイトでも別スポンサーで走るアメリカン・レーシングならではの、チームメイトのタイトル獲得をみんなが全面サポートと……いうわけにはいかない事情がそこには絡んでいた。

 作戦は失敗。しかし、6番手からの優勝は十分に可能。上位グリッドのほぼ全員がスタートタイヤにユーズドレッドを選択する中、ロッシは新品レッドを選んだ。スタート直後に一気にポジションアップをしたいとの意図は明らかだった。

 予選での失敗で、ロッシはすでにチャンピオン争いで完全なる後手に回った。スタート用に新品レッド選択は“入れ込み過ぎ”。平静を装ってはいたが、初タイトル獲得に並々ならぬ意欲を持っており、それが正しい判断の邪魔をしてしまったようだ。


 そしてレースがスタート。ハンター-レイはトップを守り、ディクソンも2番手をキープ。その後方でロッシはチームメイトのマルコ・アンドレッティのリヤにヒットし、フロントウイングと右フロントタイヤを破損。ピットに戻ってそれらを交換し、順位は最後尾に落ちた。

 ロッシ陣営はここから燃費作戦をトライ。その後にスピード勝負に転換し、大幅ポジションアップに成功し、グレハム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)のストップによるフルコースコーションを味方につけて5番手まで順位を上げた。

 しかし、最終スティントに向けたロッシのピットタイミングは早過ぎ、終盤戦の彼の燃費はかなり厳しかった。その上、彼の期待したもう1回のフルコースコーションはとうとう出されず。最終スティント序盤のハードプッシュで燃料を多く消費し、タイヤも大幅に摩耗させてしまったことから、ゴールが近づいてからはペースダウン。最終ラップにセバスチャン・ブルデー(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・ヴァッサー・サリヴァン)にも抜かれて7位フィニッシュとなった。


 トップでチェッカーを受けたのはポールスタートのハンター-レイ。「追い求めていたソノマ優勝を達成できて最高の気分だ」とコメントする。このコースでのレースは今年限りで終わり、来年からの最終戦は同じサンフランシスコ・エリアのラグナセカレースウェイで開催される。最後のレースでハンター-レイは見事な勝利を飾った。

“勝利よりチャンピオンシップ”というディクソンが2番手を走り続けたことから、ハンター-レイは悠々と優勝まで走り切った。しかし、彼が楽勝を記録できたわけではない。スピードがあったのは確かで、第3スティントでディクソンがレッド、ハンター-レイがブラックという状況で受けた攻撃もしっかりと退けた。

 一度アタックしたが、それを封じ込められるとディクソンは2番手をキープ、タイトル重視に完全シフト。ロッシが大逆転を狙って早めのピットストップに入ると、次のラップにピットに向かい、ロッシの前にピットアウト。終盤戦でもう一度イエローが発生した際に形勢大逆転がなされないよう備えた。


「素晴らしい人材に恵まれたチームあっての勝利」とディクソンは謙遜。5度目のタイトル獲得となった。

 対するロッシは、「ランキング2位は悔しいが、いいシーズンだった。来シーズンにむけて大きな土台を作れたと感じている」は語った。


 佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は予選12番手で、レースではスタート直後の混乱をくぐり抜けて9番手まで浮上。さらにコース上でのパスを実現し、1回目のピットストップを終えたところで7番手にまで上がっていた。

 しかし、ピットアウトしたその周にマシントラブル発生。白煙を上げながらピットに戻り、マシンを降りた。

「レース用に変えたセッティングは良かったようで、ユーズドレッドでの序盤の戦いでポジションアップを果たせました。スタートで三つ順位を上げ、その後にはコース上のバトルで1台をパスできました」

「そしてピットストップ。あと少しでグラハムの前に出られるというくらいクルーが素晴らしいピット作業をしてくました。グラハムにピットアウトを譲りましたが、7番手に浮上。更に上へ……という時にトラブルが発生しました。それでも、来年に向けて、勢いを保てれるレースができたと思います」と琢磨は語った。

 レース前には2019年もレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングからインディカーに参戦することを発表した佐藤琢磨。2018年のシリーズランキングは12位で終えた。