ポートランドで見事な戦略で勝利を収めたレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの佐藤琢磨だったが、その後はそのままカリフォルニアに残り、ソノマで一日テストを行っていた。タイム的には見るものがなかったが、マシンセッティングの方向性は確認できたという。
しかもソノマでのインディカー開催は今季限りとなり、来季はラグナセカでの開催が決まっている。過去にソノマでは表彰台もないだけに、良い形で今年の最終戦を終えたいところだ。
金曜日にプラクティスが始まると、琢磨の順位は午前14番手、午後13番手止まり。だが「レッドタイヤでのマシンのフィーリングは改善しないといけないですが、ブラックタイヤではタイムも出ますし、いいフィーリングになってきました」
その言葉通りに土曜日午前のプラクティスでは8番手まで浮上し、トップとの差は縮まっている。
午後の予選に向けて期待も高まるが、グループ2でQ1に臨んだ琢磨は、タイムも良くQ1を4番手で通過した。しかし、Q2になるとレッドタイヤで失速し、Q2は12番手に止まった。
「レッドに変えたら、全然グリップしなかった」と琢磨。
ポートランドでは予選20番手からの追い上げて優勝した直後だけに、決して期待を失ったわけではないが、琢磨は「ソノマでは3回ストップか、4回ストップなのですが、タイヤのデグラデーションを考えると、4回にした方が早いくらい。だからいろいろな作戦が考えられましたけど、3回のピットストップにしてもフューエルウインドウを広く取れるので、レース状況を見ながら早めにピットインしようと思ってました」
ソノマのコースの性格上、ポートランドのような作戦は取れないが、タイトル争いが熾烈なこともあり、レースが大きく動くことも考えられた。12番手から好スタートを決めた琢磨は、アレクサンダー・ロッシのトラブルなどを避けポジションをうまく上げた。昨年のここでロッシが琢磨にした冷たい仕打ちが思い浮かぶ。
スタート直後のポジション取りがうまくいった結果、琢磨は10番手となった。またもやペンスキーのシモン・パジェノーとのバトルとなったが、彼をうまく攻略して9番手に。そして目の前のセバスチャン・ブルデーとルーキー、パトリシオ・オワードも12周目にはうまく料理して7番手まで浮上した。
「朝のウォームアップがないので、予選から決勝に向けてのマシン変更を確認出来なかったんですけど、スタートの後はいい手応えでした。12周を過ぎてくらいからリヤタイヤがちょっとムズムズしてきたかなと感じたので、早めにピットに入ることにしたら、グラハム(レイホール)と同じタイミングでしたね」
ピットに入りレッドからブラックタイヤに替えてピットアウト。グラハムの直後で追い上げを開始しようとしていた矢先だった。
琢磨のマシン後部からモウモウと白煙が上がりペースダウン。マシンをピットロードに向けた。琢磨はピットボックスでマシンを止め、ゆっくりとマシンを降りた。琢磨の2018年のレース、ソノマ最後のレースが、ここで終わった。
「マシンのフィーリングは良かったですね。前のパジェノーもかわせて、今日は5~6番手までは上がれるだろうと思っていました。いきなりマシンにトラブルが出てしまったので、どうすることもできませんでした」と表情も曇る。
「今年はチームも移籍していろいろ期待もしていたシーズンですが、なかなかうまくいかないことも多くて、デトロイトくらいからようやく結果に繋がってきました。アイオワでは表彰台にも上がれたし、シーズン終盤になっちゃったけどポートランドでは勝てたので、また4年ぶりの優勝とか言われるのも、避けられました(笑)」
「そして、今日来年度もレイホールに残るという発表をすることができました。シーズン中に翌年の発表したことはなかったので、もっとも早い発表だと思いますが、来季このチームで戦っていきます」
「もうインディで150レース以上も戦ってきましたけど、来年も今年以上のリザルトを目指して頑張るつもりです。今年一年、朝早くから夜遅くまで、日本から応援して下さったみなさんありがとうございました。またシーズンオフになったら日本に帰りますし、様々なイベントでお会いできるかと思います」
来季の体制も決まり、2019年にすでに琢磨は動き始めた。もし本当にフェルナンド・アロンソのシリーズ参戦が実現するならば、日本のファンにとって、またインディカーシリーズが一層興味深いものになるだろう。