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子どもを狙った性犯罪、当事者の歪んだ認知「これは性教育」「自分が教えてあげる」

2018年09月17日 10:02  弁護士ドットコム

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幼い子どもたちに対する性暴力事件が後を絶たない。中には、保育士や教師など子どもたちと接する大人が加害者のケースもあり、「一体なぜ、子どもを狙うのか」と疑問が尽きない。


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国際的な診断ガイドラインである「DSM-5」では、通常13歳未満の子どもに対して性的に興奮したり行動を起こしたりする精神障害を「小児性愛障害」と呼ぶ。


9月13日に開かれたシンポジウム「性犯罪をなくすための対話」で、加害者臨床に携わる精神保健福祉士の斉藤章佳氏は、約100人ほどの臨床例から見えてきた小児性犯罪者の特徴を話した。


●小児性暴力を「純愛」と認識

「好みの子どもを見ると、吸い込まれるように近づいてしまう」。これは、斉藤氏が小児性犯罪の当事者から聞いた言葉だ。「この言葉を忘れたことはない。ゾッとしたというのが正直な感想」と話す。


彼らは小児性暴力を「純愛」と認識しているという。「性教育なのだ。優しく教えるのだから犯罪ではない」「この子もいずれセックスを経験する時が来る。その前に僕が教えてあげる」。子どもが好きという気持ちの延長線にある、不可解で強力な認知の歪み。斉藤氏は「純愛と思っている人の認識を正すことは難しい」と治療の難しさを語る。



●子どもに対しての幻想的な愛情

小児性犯罪者の共通した特徴として、成人のパートナーと交際したいという願望はあっても、いじめにあうなどして挫折。「同世代の女性とは付き合う資格がない」と考え、その代わりとして子どもに向かう人が多いという。


恋愛に限らず、同世代とのコミュニケーションに挫折した体験がきっかけで発症する人が多く、「遺伝的や先天的な要因はなく、学習された行動だと思う」と指摘する。


また、過去に家族などから虐待された経験から、慢性的に自己肯定感が低く「子どもなら無条件に受け入れてくれるはず」と幻想を抱いている人が多いのも特徴だという。


斉藤氏が所属する大森榎本クリニック(東京都大田区)では今年の6月、小児性犯罪者を対象にした治療プログラムを始めた。治療では、歪んだ認知を修正し、女性蔑視など根幹の価値観にまでアプローチする。薬物治療も必須だというが、大事なポイントは「孤立化を防ぐこと」だという。


「孤立化は再犯への引き金となる。暇な時間があると公園など子どもが行きそうな場所に行ってしまう。居場所と思える場所を作ることが大事」と話した。


●GPSの議論を

また、被害者支援に携わる上谷さくら弁護士は、外国のGPSなど「位置情報確認制度」を使った再犯防止の取り組みを紹介した。



「実効性がどうかという問題はあるが、自分では止められないから何かして欲しいという加害者もいるし、被害者も心理的に安心感を与える面もある」と指摘し、「日本では加害者の人権の観点から、議論すること自体がタブーとされている。守るべきは誰の人権なのか」と訴えた。


また、強制わいせつ罪(刑法第176条)の法定刑が、被害者が13歳未満であっても「6月以上10年以下」と成人と同じであることについて、「性犯罪自体悪質だが、子どもを狙った犯罪は、より悪質だ。その子は人生のほとんどを被害経験を抱えて生きねばならず、結果が重大」としてより罰則を重くするべきだと話した。


(弁護士ドットコムニュース)