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乃木坂46、メンバープロデュースで見せた“新たな繋がり” 「ジコチューユニットコーナー」振り返る

2018年09月15日 16:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 乃木坂46が9月1日と2日、宮城・ひとめぼれスタジアムにて『乃木坂46 真夏の全国ツアー2018』を開催。全国6会場11公演、総動員数53万人というグループ過去最大規模で行われたツアーの幕を下ろした。


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 ツアーを通じてのハイライトは様々だが、なかでも人気を博したのが、8月8日発売の最新シングル『ジコチューで行こう!』になぞらえた、「ジコチューユニットコーナー」だ。これは、メンバーがユニット編成やステージ衣装、さらには映像演出などを“ジコチュー”にプロデュースする特別企画。その日限りとなるメンバーの組み合わせや、1期生が2・3期生の楽曲を披露するなど、グループ内のあらゆる垣根を超えたステージは、ファンにとって夢にまで見たものだろう。筆者は仙台2日間の会場にて同コーナーを鑑賞することができた。本稿では、実際に目撃したステージの様子や公演後のメンバーのSNS投稿などから見られた普段とは異なる形でのメンバー同士の“繋がり”を振り返りたい。


 この夏を通じて最も話題となったのが、大阪公演で井上小百合が歌唱した「自分のこと」だろう。「自分のこと」は、2017年末に卒業した中元日芽香のソロナンバーで、これまで一度もライブで披露されずにいた。井上は自身のブログで、同楽曲を選んだ理由ついて「これまで支えてきてくれたスタッフさんやファンの皆さん、そして何よりもメンバーが居てくれたからこそ、今の乃木坂46が在ると思っている」と綴っている(参考:井上小百合 公式ブログ「ヽ(。・ω・。)ちゃばしら」)。卒業したメンバーに対しても、当時と変わらぬ愛情を捧げる彼女の存在もまた、“今の乃木坂46”が成り立つ理由のひとつなのだろう。


 同じく大阪公演では、2期生の鈴木絢音が1期生曲「Against」をプロデュース。「Against」は、今年4月に卒業した生駒里奈が最後のセンターを務めた楽曲で、グループの臨む“変革”を受け止めようと歌っている。また、鈴木は秋田県出身の生駒と同郷で、生駒が卒業した後の最新シングルでは初の選抜入りを果たす。そんな鈴木が、同じ2期生の堀未央奈らを連れて同楽曲を披露した背景には、生駒の意志を“継承”する意図があったのかもしれない。


 また、福岡公演では堀が「ごめんね、スムージー」をプロデュース。同楽曲は、井上と中元、そして2017年末に卒業した伊藤万理華のユニット曲なのだが、今回のステージ衣装は、伊藤が提案したものだということが伊藤のInstagramにて明かされている。グループを巣立った後も、ステージの外からメンバーを支える彼女の姿勢は、先述した井上の「(卒業メンバーがいるからこそ)今の乃木坂46が在る」という言葉をはっきりと象徴づけるものだ。


 そして、グループ外で培ったチームワークを存分に発揮したのが、ミュージカル『美少女戦士セーラームーン』出演メンバーだ。今年6月と9月に上映される同ミュージカルでは、グループから選抜された10名が「Team MOON」と「Team STAR」の2チームに分かれ、ダブルキャストでセーラー戦士を演じている。そんなTeam MOONには、山下美月、伊藤理々杏、高山一実、能條愛未、樋口日奈が、一方のTeam STARには、井上、渡辺みり愛、寺田蘭世、梅澤美波、中田花奈が選出されており、前者は仙台公演で「月の大きさ」、後者は名古屋公演で「あらかじめ語られるロマンス」をプロデュースした。


 空を見上げて“強さ”や“孤独”に思い馳せる「月の大きさ」と、“12星座”が惹きあう様子を、恋愛の出会いと別れに喩えた「あらかじめ語られるロマンス」は、どちらも『セーラームーン』の世界観と遜色ない楽曲だろう。それと同様に、「ジコチューユニットコーナー」は総じて、メンバー各々が決めたステージテーマにふさわしい選曲と演出がなされていた。そんなハイレベルと評せるステージを実現できた背景には、活動7年目を迎えて充実した楽曲ストックやダンス経験、さらにはアドバイスを与え合える良好な関係など、現在の乃木坂46ならではの強みがあるからだと思われる。


 さらに仙台公演では、秋元真夏が「あなたのために弾きたい」でピアノ弾き語りに挑戦。小学生の頃にピアノを習っていたという秋元だが、ステージで自信なさげに鍵盤の位置を探る様子からは、普段とは違った緊張感を受け取った。そんな彼女はライブ前日、不安を募らせたピアノ練習後の楽屋で、好物のスイーツとともに、励ましのメッセージを見つけたという。そんな粋な計らいを準備したのは、メモの最後にも記名があった「齋藤飛鳥」。テレビやライブでは見せない彼女の“ツンデレ”なサプライズに、疲れきった秋元は、さぞ元気付けられたことだろう。「ジコチューユニットコーナー」は彼女にとって、これまでにない“挑戦”となった一方、齋藤との信頼関係を深めるのにも一役買っていたようだ。


 現メンバーの豊かな表現力はもちろん、卒業メンバーへの愛情も存分に感じられた「ジコチューユニットコーナー」。その企画背景には、今年7月の『6th YEAR BIRTHDAY LIVE』を、「シンクロニシティライブ」と銘打ったことがあるのかもしれない。同ライブでは、5年にわたり継続してきた“全楽曲披露”を取りやめ、東京・明治神宮野球場と秩父宮ラグビー場の2会場同時ライブをコンセプトに提示。結果として、これまで年に一度は必ず披露された“レア曲”に出会う機会が損なわれた。そんな楽曲群に対して、同コーナーがスポットを当てる役割を間接的に担っていたのであれば、ファンにとって非常に喜ばしいことだろう。


 そんな「ジコチューユニットコーナー」は、ひとまず今回のツアー限りの企画であることがアナウンスされている。メンバーの様々な表情が見られただけに、とても残念だ。しかし過去には、生駒が自らの卒業ライブでセットリストを考案しており、自身の好きなように楽曲やステージ演出を指定していたのは、今回の企画にも共通している。そう考えれば、同コーナーや卒業公演に限らず、今後もメンバープロデュースのライブを楽しめる機会があるのかもしれない。


 4期生メンバーの加入を控える現在の乃木坂46。さらなる大所帯となるに従い、グループ全体で足並みを揃えるように求められるシーンも増えることだろう。しかし時には、彼女たちの見せる、“ジコチュー”な笑顔にも巡り会いたいものだ。(青木皓太)