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Hump Backがチャットモンチーから受け取った“青春”のバトン 万感の思いで迎えた東京公演

2018年09月15日 12:12  リアルサウンド

リアルサウンド

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 この夏、Hump Backを初めて観た。7月22日、アスティとくしまにて開催されたチャットモンチー主催『チャットモンチーの徳島こなそんそんフェス2018~みな、おいでなしてよ!~』。2日目のトップバッター、与えられた25分に全身全霊を込める。チャットモンチーのカバー「湯気」からスタートしたライブは、バンドの内包する熱さとチャットモンチーへのリスペクトが伝わってくるパフォーマンス。トリを飾るチャットモンチーのライブで、美咲(Dr)が「恋の煙」「湯気」をバンドメンバーの一人として叩いていたのも感慨深い光景だった。


参考:チャットモンチーにとって“完結”は不可避だったーー兵庫慎司が観た武道館ラストワンマン


 しかし、最も心を揺さぶったのは、チャットモンチーのコピーバンドから始まったHump Backにとって、チャットモンチーは夢と青春の全てだったこと、そしてこれからはHump Backが誰かの青春になるという林萌々子(Vo/G)の涙ながらの宣誓。同じ青春を過ごしてきたであろう会場のファンの心をガッチリと掴み、「星丘公園」ではまるでホームグラウンドで行うライブのような盛り上がりを見せていた。


 徳島の照りつける暑さよりも、ひりひりとした青春の感傷に胸を焦がしたそのライブからおよそ1カ月。夏の終わりの8月31日に、TSUTAYA O-EASTで再びHump Backを観た。6月に発売したシングル『拝啓、少年よ』のリリースツアーで、3人のホームである大阪ファイナルを目前に控えたツアー集大成となる東京公演だ。チケットはソールドアウト、満員の場内からはHump Backへの溢れる期待が伝わってきた。そんな前のめりの空気に相反して、ゆらっとステージに姿を見せた3人は、自分たちのペースで演奏をスタートさせる。幕を切ったのは「ゆれる」、次に「月まで」と、マニュアルのギアを1速から2速、3速と変えていくように、ファンとライブハウスで過ごす時間をじっくりと楽しんでいる印象だ。


 O-EASTの公演を観て、Hump Backのイメージに重ねたのは“夢”“青春”といった、ファーストインプレッションから一貫している言葉だった。熱量の中にノスタルジーを感じさせるバンドサウンド。その真ん中にあるのは、林の真っ直ぐなボーカルと彼女が綴る歌詞の一つひとつだ。その橋渡しとして、林はファンを奮い立たせるMCを挟む。「自分がかっこいいと思ったことをやった方がいい。わたしらはこの場所にロックバンドをやりに来ました」「自分さえ信じられなくなったら、ロックバンドを信じてくれ」。モードをトップギアに入れたバンドは、ツアーのタイトル曲でもある「拝啓、少年よ」へ。Hump Backの信念に共感したのか、オーディエンスも一人ひとりが信じたスタイルで音に乗る。ライブチューン「短編小説」では、林が「流行りだけじゃ終わらない」「うちらは青春になりたい」と曲の間奏に叫ぶ。


 ここでフラッシュバックしたのが、『こなそんフェス』での林の言葉だった。これはバンドマンに限らずだが、愛、自由、希望、夢……を歌うアーティストは、多くの場合ファンにとっての憧れの先導者にある。決して芯のブレることないHump Backのポリシーは、今、多くのファンを惹きつけている。ライブ終盤、「星丘公園」「夢の途中」で、フロアで歌うファンの姿を見て、“誰かの青春”として、Hump Backはあり続けているのだと、夏の1カ月を経て深く実感させられた。


 林は、部屋で鳴らしていた音楽が、こうして多くのファンに届いていることの喜びに触れ、「まだまだ夢がある」「終わりは始まり」と日本武道館、東京ドームの会場名を冗談交じりに話した。一番の夢は「好きな音楽を好きなようにずっと、ずっと出来るだけ長くこの3人でやっていく」ということ。たくさんの青春を連れて、かぎりない夢の続きをいつまでも見せて欲しいと、願わずにはいられなかった。(渡辺彰浩)