2018年09月15日 10:42 弁護士ドットコム
2度の離婚を経験し、現在の妻とは3度目の結婚だという恋多き50代の男性が「妻と別れて、今付き合っている女性と結婚したい」と悩んでいる。
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男性は10年前に現在の妻(当時30代・OL)と結婚した。妻との間に子どもはいない。男性は「妻は毎日缶ビールを12本飲み、家事もしませんでした。まるでおっさんと同居しているようで嫌になり、セックスレスになりました」と説明する。
結婚から3年後、趣味を通じて知り合った8歳年下のリョウコさんと2年間交際。リョウコさんの妊娠を機に妻に離婚を迫った。しかし、妻の同意は得られず、リョウコさんは堕胎し、別れることになってしまった。
「毎日虚しさを感じていた」という男性は、リョウコさんと別れた2年後、飲み屋で出会った15歳年下のミナミさんと交際をはじめた。ミナミさんを連れて妻に離婚を迫ったが、妻は「離婚はしない」と拒否。これに腹を立てた男性は、妻を家から追い出したという。
それから半年後、妻が離婚調停を申し立てた。「やっと離婚できると思いましたが、妻は『2度の不貞でうつ病になった』、『子どもを望めない年齢になった』などと主張し、300万円の慰謝料を請求してきました。自分はなにも悪くないので、支払いたくありません」と男性は納得できないようだ。
男性は慰謝料の支払いを免れることはできるのか。もし慰謝料を支払うことになった場合、300万円は妥当な金額といえるのか。離婚問題に詳しい寺林智栄弁護士にきいた。
ーー男性は「自分はなにも悪くない」と考えている。妻が缶ビールを12本飲むことや家事をしないことなどを理由に、慰謝料を免れることはできるのだろうか。
「この男性は、婚姻破たんの原因が妻にあると言いたいのだと考えられますが、現在の日本の法律や離婚の実務からみて、そのように主張することはできません。残念ながら、男性が慰謝料の支払いを免れることはできないでしょう。
確かに、妻が缶ビールを毎日12本飲む点については、やや病的なものが感じられますが、それで何か実質的な不利益が生じたわけではなく、単に男性が『おっさんと暮らしているみたいだ』と主観的に思ったにすぎません。
また、家事を妻がしないと主張していますが、家事を妻がしなければならないというルールはそもそもありません。このような考え方は、男女平等という現代の法理念に反するものでもあり、離婚理由として認められるものでは到底ありません」
ーー男性は「妻と一緒にいたくない」と思いながら毎日を過ごしてきた。このような事情は考慮されないのだろうか。
「そもそも夫婦には相互に貞操義務があり、それに反する行動を2度も行ったのはこの男性のほうです。『妻と一緒にいたくない』と『他の女性と結婚したい』はイコールではありません。『妻と一緒にいたくない』からといって、離婚前に他の女性と性交渉に及ぶことは、法的に認められないのです。
この夫婦については、男性の方が離婚原因を作った『有責配偶者』に該当すると言わざるを得ません。ですので、慰謝料の支払いを免れることはできません」
ーー妻が請求してきた慰謝料の金額は300万円だ。男性は高額な請求に驚いているが、この金額は妥当なのだろうか。
「不貞が2度あり、かつ2度とも妻に離婚を迫ることまでしていますので、300万円という金額は妥当ではないかと考えます。
ただし、この点については、弁護士によって見解が分かれるかもしれません」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
寺林 智栄(てらばやし・ともえ)弁護士
2007年弁護士登録。東京弁護士会所属。法テラス愛知法律事務所、法テラス東京法律事務所、琥珀法律事務所(東京都渋谷区恵比寿)を経て、2014年10月開業。刑事事件、離婚事件、不当請求事件などを得意としています。
事務所名:ともえ法律事務所
事務所URL:http://www.tomoelaw323.com/