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佐野勇斗×清水尋也『3D彼女 リアルガール』対談 『ちはやふる -結び-』から意識していた互いの存在

2018年09月14日 12:22  リアルサウンド

リアルサウンド

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 那波マオの同名コミックを実写映画化した『3D彼女 リアルガール』が9月14日に公開された。『ヒロイン失格』『あさひなぐ』の英勉監督がメガホンを取った本作は、学校一の美少女・五十嵐色葉と、2次元を愛する超絶オタク・つっつんこと筒井光、“美女とオタク”のありえない恋の行方を描いた純愛コメディだ。


参考:『ちはやふる -結び-』ヒットの理由ーーキャストや監督らの絶妙なバランスが“奇跡”生む


 今回リアルサウンド映画部では、コミュ障で恋愛経験ゼロの非リア充男子・つっつんこと筒井光を演じた佐野勇斗と、色葉に想いを寄せ、つっつんを敵対視する俺様系イケメン・高梨ミツヤを演じた清水尋也にインタビュー。『ちはやふる -結び-』で初対面したお互いの印象や、アドリブだらけだったという本作の撮影秘話などについて話を聞いた。


ーー2人とも『ちはやふる -結び-』に出演していましたが、本格的な共演は本作が初めてになるんですよね。


清水尋也(以下、清水):『ちはやふる -結び-』では同じシーンがなかったんですけど、この作品で共演することは知っていたので、「次一緒だよね?」みたいな感じで。それをふまえてお芝居を見ていたので、そのときから予習は始まってたかな?(笑)。


佐野勇斗(以下、佐野):なんか怖いわ(笑)。僕も予習じゃないですけど、「半端ねえやつだな」「めっちゃ面白いな」と思っていました。演技がぶっ飛んでるなと思って。


ーー『ちはやふる -結び-』の撮影時から既に意識し合っていたんですね。今回の『3D彼女 リアルガール』は『ちはやふる』とはまたガラッと変わった雰囲気の作品ですね。


佐野:僕自身、恋愛系の少女漫画は正直あまり読んでこなかったんですけど、今回は事前に原作を読んだんです。それで、純粋にめっちゃ面白いなと。オタクと美女が付き合うという設定もいいなと思いました。


清水:僕も原作を読んだんですけど、普通の少女漫画じゃなく、純粋に楽しみました。僕自身、このお仕事をやる上で人と同じことをしても面白くないなと思っているんですけど、この作品も、「他の作品と同じことをしても面白くないでしょ!」という原作者の方の意図が若干見えたような気がしたので、このスタンスがいいなと思いましたね。


ーー2人が演じたつっつんとミツヤは、どちらもこれまでのイメージを塗り変えるような斬新なキャラクターでしたね。


佐野:そうですね。他の作品とかだと「これは難しいな、どうやってやろうかな」と思うんですけど、今回はそういうのがなくて、最初からすごく楽しみでした。自分に似ている部分も多かったので、もう自由にやってやろうと。演じるというよりは、素の僕とオタクの要素を組み合わせて、本当に自由にやらせてもらいました。


清水:僕が演じたミツヤは、原作がめっちゃイケメンなんですよ。


佐野:スーパーイケメン。


清水:本当に。だからプレッシャーがありました。


佐野:ずっと言ってたね(笑)。


清水:最初からずっと、本当にごめんなさい、みたいな。最初はそこだけでしたね(笑)。役柄に関しては、みんなと一緒に作っていこうと思っていたので不安はありませんでした。特にミツヤは、最初は我が強いですが、みんなから影響を受けて変わっていくので、みんなの芝居がどう飛んでくるかによって、僕の受け方も変わってくると思ったので、そこはあえて作らずに受け身な状態で現場に行ってました。作り込むというよりは、みんなと一緒にやってみて、そのときに感じたことを尊重しようと。


ーー原作のイメージをあまり意識することはなかったと。


清水:そうですね。ただ、“実写化”であることは間違いないので、そこだけは意識しつつ。でも、2次元から3次元に昇華するにあたって、やっぱり同じじゃつまらないし、映画にするならプラスアルファの面白い要素を作らないといけないと思ったので、あまり気にしないでやりました。僕は最初の時点で原作のミツヤに対する顔面の引け目があったので、一気にオリジナルに振り切ってやろうと。原作のミツヤは二枚目メインでちょっと三枚目みたいな感じなんですけど、今回は三枚目メインでちょっと二枚目に変えてみたので、原作よりもコメディ感が強くなっています。なので、結構オリジナル感は強いと思います。


佐野:僕も原作はあまり意識しませんでした。変に寄せようとし過ぎてもあまりよくないなと思ったのと、監督から「“映画”としての『3D彼女』と考えてもらえればいい」と言ってもらったので、自分なりのつっつんを作ろうとしました。僕自身もつっつんのように、ひとつのことに熱中して追いかけてしまうオタクな面もあるので。変な動きは『トイ・ストーリー』のウッディの動きを取り入れているんです。


清水:参考にしてるって言ってたね。


ーー映画からは皆さんの楽しそうな雰囲気も伝わってきました。


佐野:ずっとワイワイしていました。撮影期間はそんなに長くはなかったんですけど、キャストはみんなすごく仲が良かったです。


清水:男3、女3で、人数のバランスもよかったよね。年齢が近いのもあったし。


佐野:あとみんなのキャラ的にもちょうどよかった。ツッコむ人がいて、ボケる人がいて、フワフワしてる人がいて。


清水:本当に奇跡的なぐらい噛み合ってたと思います。


ーー撮影で一番印象に残っていることは?


佐野:尋也のアドリブです。毎回毎回「次は何してくんのかなー」と楽しみでした。特に、ミツヤがトマトを心配するシーン。あのシーンは全部アドリブなんです。


清水:まさか使われているとは思わなかった(笑)。


佐野:結構使われてたよね(笑)。


清水:でもアドリブを考える時間は楽しかったです。僕と勇斗はアドリブが多かったんですよ。朝の撮影で勇斗が先にアドリブをやっていて、周りの人から「勇斗がこんなアドリブやってたよ」と聞いて、「うわ~それやったのか~。俺もすごいのやらないと」みたいな(笑)。


ーー他の現場と比べてアドリブは多かったんですか?


清水:8割アドリブくらい(笑)。


佐野:本当ね(笑)。ほぼアドリブでした。僕たちは結構はちゃめちゃにやってましたね。監督も「ここ、なんか足そうぜ」と一緒に考えてくれるんですよ。そのラフなスタンスがすごくよかったのかなと思います。


ーー色葉役の中条あやみさんとの共演はいかがでしたか?


佐野:一番年上なんだけど、年上感を出さないというか。一緒にふざけてくれたり場を和ませてくれたりしました。いい意味で座長としてみんなを引っ張ってくれました。


清水:だからみんな一緒に楽しくできた。年上だからってちゃんとされると、こっちも引いちゃうので(笑)。あと、本当にかわいいので、彼女がいれば現場は全てもうオッケー!みたいな。


佐野:本当にそういうところあるよね。


ーー今回の作品を通して、役者として新たに学んだことや得たものは?


佐野:やっぱりアドリブですかね。こんなにアドリブをやった作品は初めてだったので。『ちはやふる -結び-』では、矢本(悠馬)さんがめちゃくちゃアドリブをやっていて、それを見て「あ、こんなにやっていいんだ」と学んで、次の作品でやってみようと思っていたんです。そうしたらまた尋也と一緒になって、尋也もすぐアドリブをするから、負けてられないなと思って。


清水:確かにね。僕は“THE ラブコメディ”みたいな映画が初めてで、こういう役柄をこれまで演じたことがなかったので、それ自体が新しい経験でした。これまで血だらけの作品にしか出てこなかったので(笑)。そこに引け目はなかったし、プレッシャーもなかったんですけど、これを完璧にやれば、「こいつ、こういうこともできるんだ」という強みになるなと思ったので、そこはチャレンジでしたし、初めてだったから楽しかったです。


ーーお互いの印象は今回の作品を通して変わりましたか?


佐野:そう言われてみれば、尋也の印象は最初から変わらないかもしれないです。


清水:僕も変わらないですかね。勇斗の方が年上なんですけど、最初に『ちはやふる -結び-』の本読みで会ったときから、「こいつ本当に器用だな」と心の中で思っていました(笑)。


佐野:(笑)。


清水:本読みでそう思ったんですけど、現場では会っていないから実際は分からなくて。で、完成した作品を観たときに、芝居が変わっていたんですよ。共演者から受けた影響を、自分の力として器用に変えていける能力、適応していける能力があるんだなと思って。だから今回も、うまくお互い新しいものを取り入れながら、化学反応を起こしていきたいなと思っていました。結果的に、今回また勇斗の器用さを確信したし、何をしても、すごい角度をつけても、ちゃんと返してくれたので、すごく助かりましたし、ありがたかったです。


佐野:しっかりしている尋也にそう言ってもらえると嬉しいですね。役者としてもめっちゃ尊敬しているんですよ。


清水:ありがとうございます。恐縮です、先輩(笑)。


佐野:あんまり言いたくないんですけど(笑)、考えてることが深くて面白くて、本当にすごいなと。だから今回お芝居をしていて、一番安心感がありました。また違う作品で共演したいなとすごく思いました。


清水:でも真面目過ぎる作品とかだったら笑っちゃいそう(笑)。


佐野:本当そうだよね(笑)。


清水:前あんなだったのに今こんな芝居してる俺たち、面白くね? みたいな(笑)。


佐野:そうそうそう、逆にね(笑)。


(取材・文・写真=宮川翔)