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欅坂46 平手友梨奈、“女優”としての変化と成長 個人PVから感じる唯一無二の魅力

2018年09月13日 08:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 欅坂46 平手友梨奈が初出演で初主演となる映画『響 -HIBIKI-』が、いよいよ9月14日に公開される。デビュー作にも関わらず、公開前から主演女優がこれだけ注目されるのは、ここ数年の日本映画界の中でも珍しく、女優・平手友梨奈への期待は実に大きい。テレビドラマやCMなど、平手の演技が見られる作品はいくつかあるが、今回注目したいのは歴代シングルに特典映像として収録されている平手の“個人PV”だ。


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 先輩グループである乃木坂46が始めた個人PVは、各メンバーの知名度アップのために一人ひとり制作される、ある意味見本市的なもの。欅坂は、現段階では2016年のデビューシングル『サイレントマジョリティー』から2017年の4thシングル『不協和音』まで、メンバーの個性に合わせた短編作品が作られている。これは、デビューから必死に坂道を駆け上がり、独自のアイドルグループとして軌道に乗るまでの草創期と言える時代。平手もまた、まだ何色にも染まっていない初々しい14歳の中学生から、今のあまり笑顔を見せないクールなイメージへと変化していく過度期だ。


 その中で注目したいのが、2ndシングル『世界には愛しかない』に収録された“0614YH2016”。写真家の立木義浩がフォトイメージを担当し、ジョージ・ガーシュウィン「ラプソディ・イン・ブルー」やラフマニノフの旋律にのせて、平手の写真や、バレエを踊ったり、水族館などで今の思いを語ったりする平手の姿が収録されている。まさに最高に美しいアート作品のようなPVだ。


 篠山紀信や荒木経惟といった写真界の大御所が“山口百恵の再来”と、よく平手を絶賛していたが、このPVを見るとよくわかる。当時中学生とは思えない、眩しいほどの輝きと目力、そして表現力に惹き込まれざるを得ない。壁からひょっこり顔を出して「歌が好きだけど、歌がうまいわけじゃないから、自信はないです」とあどけない可愛さも見せてくるのだから、少女と大人、可愛いとかっこいいが混在した、平手の魅力すべてが詰まっている。そして最後に「もう一人の自分へ。今の自分が選ばなかった道を、選んでほしい。そしていつかまた会って話がしたい。楽しい人生を送ってね。バイバイもう一人の私。私はこの道を進み続けるから」と、芸能界に身を捧げるような決意表明が語られているところに、平手の儚さとスケールの大きさを感じた。


 欅坂の個人PVの中で最高傑作にあげる人が少なくないのが、3rdシングル『二人セゾン』に収録されている『てち浪漫』。欅坂が初主演を務めたドラマ『徳山大五郎を誰が殺したか?』(テレビ東京系)の豊島圭介監督が手がけた。和風旅館のような部屋で、真っ赤なワンピースに真っ赤なピンヒールを履いた平手が「あなたのそのかかとに踏まれたい」という手紙を投げ捨て、カメラ目線で「どうしてそんなことばかり言うのですか? 頭おかしいんじゃないですか?」と呆れた表情で言う破壊力。また「できればもう一度だけ逢ってもらうことはできないだろうか」という手紙には、「ずっと待っててそこで。行くかも知れないし、行かないかも知れない。バイバイ」と答え、大人を弄ぶような何とも言えない笑顔で手を振る。江戸川乱歩や夢野久作の世界に出てくるような少女のエロチシズムを意識した作品であるが、この現代において、当時15歳だった平手が、少女にしか出せない儚い色気を見事に表現した。


 平手の一つひとつの意味深な表情や仕草は、本当に世の中を軽蔑しているのでは? と思わせるほど実にリアル。ドラマで気心の知れた豊島監督が、言葉にするには難しい平手の魅力を、見事に具現化した作品だと言える。「あなたは私の形のことしか言わない、本当に見えているんですか、私のこと」と問う平手は、単純に美少女と言うより、禁断の色気という言葉が頭に浮かぶ。平手の繊細な演技が見られ、個人的には『響 -HIBIKI-』に匹敵するインパクトある作品だと思う。


 数々の監督によって演出されてきた個人PVは、テレビドラマではできない実験的なものも少なくなかったため、役者としての様々な可能性を広げてきた。改めて見ると、歌のパフォーマンスの成長とはまた違った、女優・平手友梨奈のモラトリアム期が味わえる原点として、実に興味深い。(文=本 手)