2019年シーズンのMoto2クラスでロマーノ・フェナティの起用を発表していたフォワード・レーシングが、フェナティとの契約をキャンセルすることを発表。また、フェナティは自身のウエブサイトでサンマリノGPでの危険行為に対する謝罪声明を発表している。
フェナティはサンマリノGPの決勝19周目にステファノ・マンジに対して、走行中にフロントブレーキレバーに手を伸ばし、故意にフロントブレーキを作動させ、マンジを危険にさらす行為を働いた。
この結果、マンジは217km/hから121km/hまで急減速、転倒などのアクシデントには至らなかったが、その後、転倒を喫し、リタイアに終わった。
これにより、フェナティにブラックフラッグが振られ失格処分に。レース後、スチューワードパネルはフェナティに対して次戦アラゴンGPと第16戦タイGPの参戦停止のペナルティを課すことを発表した。
フェナティがこのような行為に及んだのは、直前に14コーナーでマンジと接触してコース外に押し出され、その後も4コーナーでマンジにパッシングされたことがきっかけだったという。
「最初に接触があり、僕はコース外に押し出された。その後にもう一度押し出された。当然、正当ではないが、いつも同じライダーたちがじゃまをして、レースを台なしにする」とフェナティは説明。スチュワートパネルは、4コーナーでのマンジのパッシング行為に対してもペナルティを与え、次戦アラゴンGPでの6グリッド降格を言いわたした。
ただ、走行中に他のマシンのブレーキレバーを意図的に作動させるという行為は前代未聞であり、一歩間違えば、大きなアクシデントにつながっていた。
フェナティは2015年のアルゼンチンGPでも似たような問題を起こしている。決勝朝のウォームアップ走行中にニコラス・アジョとトラブルになったフェナティは、アジョに蹴りを入れ、スタート練習のためにマシンを止めたアジョの隣に並ぶと、アジョのマシンのキルスイッチに手を伸ばし、エンジンを止めてしまった。
この行為も非紳士的行為及びアグレッシブな行動と判断され、3ポイントのペナルティポイントが課せられた。このときはペナルティポイントの累積が4ポイントとなり、最後尾グリッドへ降格となった。
そして、2016年の第10戦オーストリアGPの公式予選後、所属していたスカイ・レーシング・チーム・VR46から、チーム内の規律違反を理由に出場停止処分を受け、その後、チームを離脱することになり、後半戦を欠場した。
2017年からマリネッリ・スパイナーズ・チームに所属しMoto3クラスに参戦することになり、2018年は同チームからMoto2クラスにステップアップしていたが、レース後、チームはフェナティの解雇を発表。またしても、シーズン途中で自らの愚行によりシートを失う結果となった。
さらに、2019年シーズンにフェナティが所属予定だったフォワード・レーシングも契約キャンセルを発表。フォワード・レーシングは来季から42年ぶりにMotoGPに復帰するイタリアのバイクメーカー、MVアグスタと組んでMoto2クラスに参戦する。
MVアグスタの最高経営責任者、ジョバンニ・カスティリオーニとフォワード・レーシングのチームオーナー、ジョバンイ・クザリは次のようにコメントしている。
「スポーツを観戦してきた私の人生において、これほどの危険な行為を一度も見たことがありません。このような行為を行うライダーは、当社と当社のブランド価値を代表することができません。このような理由から、彼がチャンピオンシップに復帰するMVアグスタのライダーになることを望みません」とカスティリオーニ。
クザリは「ロマーノ・フェナティとステファノ・マンジとの間で起こった不運なエピソードの後で、2019年シーズンに向けて、フェナティとの協力計画を維持することは不可能です。彼の行動は、フォワード・レーシングとMVアグスタのスポーツ面の価値を両立しません。このような理由から、我々は酷く後悔しますが、彼とのプロジェクトをキャンセルします。我々のスポーツは非常に危険であり、リスクを高める行為は容認できません。我々の将来のライダーがこのような行為をしたことを受け入れるわけにはいきません」
そして、フェナティは9月10日に自身のウエブサイトに、次のような謝罪文を掲載した。
「僕はスポーツ界全体に謝罪する。今朝、頭のなかがクリアになった状態で目が覚め、すべてが悪夢であることを願った。今この瞬間、恥ずかしい行為をしてしまったと考えている。そう思う。スポーツマンシップに反する行為だった。レース終了後、レースディレクションを訪れ、起きたことに対して正当化しようと試みたい」
「挑発に反応すべきではなかった。批判は正しく、僕に対する憎しみを理解する。僕を信じてくれたすべての人たちと僕の行為が原因で傷ついたと感じているすべての人たちに謝罪したい。僕に対する恐ろしいイメージが残ってしまった」
「僕はそのような人物ではない。僕を知る人たちは、そのことを知っている。僕は常に正しいライダーだった。昨年は、ペナルティを受けなかった数少ないひとりだった。誰に対しても危険を及ぼすような行為をしなかった。僕はトラック上で危険なライダーがいることを訴えてきた。不運にも僕は衝動的な性格があるけど、意図的にダメージを与えようとしたことはなかった。危険な行為をしていることを理解させたかった。僕に対する行為をやり返すこともできた」
「自分を正当化するつもりはない。僕の行為は正当化することができないと分かっている。すべての人たちに謝罪したい。これから反省して、自分の考えを明白にする時間を持てるだろう」