F1の開発はとどまるところをしらず、毎グランプリ、新しいパーツが導入されている。F1iのテクニカルエキスパート、ニコラス・カーペンティアーズがF1第14戦イタリアGPの週末に見つけた注目アイテムを紹介、分析する。
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■各チームで特色がある『モンツァ仕様』のリヤウイング
イタリアGPでは『モンツァ仕様』と呼ばれる、極端に空気抵抗を少なくしたリヤウイングが投入される。長いストレートで、できるだけタイムロスを防ぐためである。写真のようにブダペストのウィングと比べればかなり傾斜しているので、違いは一目瞭然である。
その結果、ウイングプレートの上方と下方の速度差は小さくなり、ダウンフォースも減少する。さらに左右の翼端板脇の圧力差も小さくなる結果、そこに生じる空気の渦(ボーテックス)も、小さくなる。そのため渦を打ち消すための翼端板の切れ込みも、数が減るか、レッドブルのようにまったくなくなっている。(白色矢印参照)
『モンツァ仕様』は、3つのグループに分類されるようだ。平坦がひとつ目はメインプレートが特徴的なグループで、フェラーリ、フォース・インディア、レッドブル、マクラーレン、ザウバー、そしてトロロッソが採用している。
■トロロッソ・ホンダ、モンツァ仕様のリヤウイングは『繊細な凹み』
第1グループに属するトロロッソには、他にはない特徴がある。アッパープレートが前後により長いため、DRSが駆動してプレートが開いた際に邪魔をしないよう、DRS駆動部の下側をえぐる処理を施されていた。(青矢印)
モンツァ仕様:第2グループ、メインプレートの湾曲
第2グループは、メインプレートの湾曲をモンツァ仕様でも保持しているメルセデス、ルノー、ウイリアムズである。ただし湾曲具合は、通常仕様よりずっと控えめだ。
■空力パッケージで我が道を行くハース
フェラーリからパワーユニット以外にも、様々な技術協力を受けているハース。しかし空力パッケージだけは、我が道を行っている。特にリヤウイングのデザインは、特別である。
モンツァ仕様のアッパープレート上部は、2カ所を凹ませる独特の形状(青矢印)。ブダペストやスパ仕様と比べると、翼端板の切れ込み数も少なくなっている。
ちなみにモンツァ仕様はその名前通り、全21戦中イタリアGPでのみ使用される。なのでコストパフォーマンスは、決して良くない。ウイング形状だけでなく、DRS駆動部を作り直し、全体の空力バランスを考えてフロントウイングも設計し直す必要があるからだ。
それでも各チームは初日フリー走行に複数バージョンを持ち込み、比較テストを行う。一番重視するのは、空力効率とタイヤへの負荷の兼ね合いである。