サマーブレイクが開け、2018年シーズン後半戦を迎えたETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップは、チェコ共和国のアウトドローモ・モストで第5戦が開催され、地元出身の現王者アダム・ラッコがドライブするフレートライナーが、土曜2ヒートで連勝を飾り、母国のファンを沸かせる活躍を演じた。
週末4ヒートが開催されるFIAカップ格式のETRCは、そのレース1に向けた予選スーパーポール・セッションでアントニオ・アルバセテ(トラックスポーツ・ルッツ・ベルナウ/MAN)が最速タイムを記録するも、黄旗掲示でのタイムとなり3グリッドダウンのペナルティ処分に。
これでポールはサッシャ・レンツ(SLトラックスポーツ/MAN)となり、フロントロウ2番手にシリーズ唯一の女性ドライバーであるシュティフィ・ハルム(チーム・シュワーベントラック/IVECO)、そしてディフェンディングチャンピオンとして凱旋なったラッコがセカンドロウ3番手につける結果となった。
あいにくの雨が落ち始めウエット・コンディションと化したなか、混乱なくスムーズにスタートしたトレーラーヘッドの隊列は、ようやく5周目に動きをみせる。
2番手ハルムの背後からスリップを活用し、教科書のお手本のようなオーバーテイクを見せた王者ラッコが、続けて首位快走のレンツも仕留めてトップへと浮上。スタンドを埋めた地元ファンが沸きかえるパフォーマンスを披露する。
その後、11周のチェッカーに向けリードを拡大したラッコが週末最初の勝利を獲得。2位にはラッコのスリップから脱落したものの、ポジションを守ったレンツが1.8秒差で入り、最後の3位表彰台にはライバル勢をまとめて仕留める猛チャージを見せた、現ポイントリーダーのヨッヘン・ハーン(ヨッヘン・ハーン・レーシング/IVECO)が入り、シリーズ5度制覇の帝王は選手権争いでのダメージを最小限に留める好走となった。
続く土曜午後のレース2は前戦トップ8のリバースグリッドとなり、今季から戦列復帰のレネ・ラインアート(ラインアート・レーシング/MAN)がポールからのスタートに。
引き続きウエットのトラックで首位を守るラインアートの背後では、ハルムのIVECOをかわしたノルベルト・キス(チーム・タンクプール24/メルセデス・ベンツ・トラックス)が2番手に浮上。続くラップでは、上位をうかがっていたアルバセテとハーンがバトルから接触し、帝王ハーンがグラベルに飛び出すアクシデントが発生する。
なんとかコース上に留まったアルバセテも、その周の後半セクターでマシンバランスが悪化した影響かシケインで止まりきれずポジションを失うと、サスペンション破損のためピットでレースを終えることに。
そんななか、ここでも怒涛の追い上げを見せたのは、8番グリッドからの戦いとなっていた地元のラッコ。ライバル勢の自滅にも助けられ2番手キスの背後に迫ると、最終ラップを目前にしてメルセデス・ベンツ・トラックスとサイド・バイ・サイドの状態で、首位ラインアートに挑む体制を整える。
鈴なりの観客で沸きかえるグランドスタンド前を首位追走の状態で通過したラッコは、キスとともにそのままファイナルラップを3台パックの状態で周回すると、最終右コーナーでアウトから並びかけ、ホームストレートに"パワースライド"状態で立ち上がりラインアートの前へ。
キャブオーバー型のトレーラーヘッドが大勢を占めるなか、ボンネットキャブ型のフレートライナーが“鼻差”でフィニッシュラインを通過し、0.168秒差で勝利をもぎ取り劇的な連勝をマーク。母国のファンからスタンディングオベーションで迎えられる、最高のレースを披露して見せた。
明けた快晴の日曜は、レース3に向け再びラッコがポールポジションを獲得するも、王者フレートライナーの勢いはここまで。スタートで主導権を握った帝王ハーンが今季7勝目を挙げ、週末最終のレース4では、前日惜しくも勝利を逃したラインアートが雪辱の今季2勝目を飾っている。
続くETRC第6戦は中一週間という短いスパンでの開催となり、9月15~16日の週末にベルギーの名トラック、ゾルダー・サーキットでの開催が予定されている。