2019年以降のABBフォーミュラE選手権とDTMドイツ・ツーリングカー選手権への正式コミットメントを表明したアウディは、2018年シーズン末をもってWorldRX世界ラリークロス選手権でのワークスプログラムを終了し、将来的に導入予定の電動ラリークロス選手権“E-WolrdRX”へも参戦しないようだ。
アウディは2018年、フォーミュラEとDTM、WorldRXの3カテゴリーでワークス活動を展開。WorldRXについてはマティアス・エクストローム率いるEKSとタッグを組み、EKSアウディスポーツとして参戦している。
そんなアウディは8月末に2018/19年のフォーミュラEと2019年のDTMでの活動継続を正式表明したが、このアナウンスのなかでWorldRXでの活動については触れられていなかった。
英国のモータースポーツサイト『AUTOSPORT.com』によれば、フォーミュラEとDTMでの活動継続に関する決断を下すなかで、EKSへのワークスサポートを2018年シーズン限りで終了し、シリーズから撤退する決定に至ったという。
2017年限りでDTM現役生活を終えたエクストロームは2014年からWorldRXに参戦。当初はアウディから技術支援を受ける形でアウディS1ベースのラリークロス用マシンを開発し、2016年にはシリーズチャンピオンにも輝いている。
このWorldRXにはフォルクスワーゲンやプジョーなどがワークス体制で参戦を開始しており、アウディもカテゴリーの発展と将来性を見込む形で、この2018年からチームEKSをワークス待遇に昇格させ、改めてシリーズでの戦いに注力する決断を示していた。
加えて、シリーズは将来的にフルEVによるシリーズ運営を計画しており、アウディはこの電動化を取り巻くテクニカルワーキンググループの議論にも積極的に関与してきた。
AUTOSPORT.comに対し、アウディスポーツの代表を務めるディーター・ガスは「基本的に、我々としては今後のラリークロスに向けファクトリープログラムで関与することはないだろう」と明言した。
「我々がフォーミュラEとDTMのプログラムを継続すると決めたことで、アウディスポーツとしてはワークスプログラムで活動可能なキャパシティをフルに使い切る状況になっているんだ」と説明するガス。
また、アウディの上級役員レベルでDTMへの活動継続を決めたことが、WorldRX撤退の主な要因にもなった、とも付け加えた。
「我々がE-WorldRXに大いなる関心があったとしても、すでにフォーミュラEへの本格的なコミットメントを通じて、エレクトリック・モータースポーツの分野で得られる巨大なリソースとプログラムを有している。このプロジェクトに加えて、DTMかE-WorldRXかの選択を迫られた際に、その答えは明白だった」
「我々にとって技術的な投資とそのフィードバックの観点からも、伝統的な内燃機関の可能性を追求するDTMと、フォーミュラEでの電動モータースポーツの広域的な取り組みというバランスから、これが最善の妥協点だったと考えている」
「つまり(WorldRX撤退という)この決定は、E-WorldRXに対するネガティブな発想から下されたわけではなく、あくまでDTMで最新の4気筒直噴ターボの技術開発を行う、という前向きな決断の影響によるものなんだ」
WorldRXで2018年シーズンの戦いを続けているEKSのアウディS1 EKS RXクワトロに関しては、残る4戦に向け「引き続き、アウディスポーツとして全力でマシン開発に取り組む」とも明言。
さらに、DTM活動継続の際に“付帯条件”としていた2020年以降に向けても、仮に3メーカーのDTM参戦が具現化しなかった場合なども考慮し、引き続きWorldRXの再評価を続けていく、とも語っている。
「もちろんラリークロスは興味深いコンセプトであり続けている。我々としても引き続き状況に注意を払い、推移を見守っていく」
これにより、EKSの2019年シーズンからの活動については不透明な状況となったが、長年アウディの顔としてDTM、そしてラリークロスでの活躍を演じてきたマティアス・エクストロームに加え、2017年末のフォード撤退の余波で今季からアウディスポーツの一員となった26歳のアンドレアス・バッケルドに対しても「そのパフォーマンスと才能には非常に感銘を受けた」とし、将来の協力について前向きに話し合いを続け「できることがあり条件が整うなら、引き続き彼とも仕事を続けていきたい」としている。